相続登記にかかる費用は?司法書士に依頼した場合の費用相場も

相続手続き

更新日 2024.10.02

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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相続という人生の節目において、避けて通れないのが不動産の相続登記です。この手続きを行うことで、故人が残した不動産が正式に相続人の名義に移ります。しかし、多くの人が相続登記手続きの費用について不明瞭さを感じています。実際に、相続登記を進めるには、登録免許税や証明書の発行手数料、さらには司法書士への報酬など、様々なコストが発生します。

それぞれの費用がどのように構成されるのか、また、司法書士に依頼した場合の費用相場はどの程度なのか。この記事では、これらの疑問に対して、専門的な見解を交えつつ、具体的な数字とともに詳しく解説していきます。

目次

相続登記にかかる費用とは

そもそも相続登記とは?不動産の名義変更手続きは2024年4月から義務化

相続登記とは、故人が所有していた不動産(土地や建物など)を相続人に名義変更するための公的な手続きです。この手続きは正式に「相続による所有権登記」と称されており、相続人の所有権を法的に確定させることで、第三者に対してその権利関係を明確に示す役割を果たします。これにより、不動産の売却や抵当権の設定など、さまざまな法律行為が可能となります。

相続登記を行わない場合、不動産の正式な所有者が不明確となり、将来的に売却や資産の管理を行う上で大きな障害となり得ます。これを防ぐため、相続人は不動産を相続したことを知った日から、適切な手続きを取ることが求められます。

2024年4月1日からは、相続登記の義務化が施行されます。新しい法律により、不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を完了させなければならなくなります。これを怠ると、10万円以下の過料が課される可能性があります。この義務化は、不動産の所有権関係をより透明にし、法的トラブルの予防を図ることを目的としています。相続が発生した場合には、速やかに司法書士などの専門家に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。

相続登記の義務化については下記記事を参照してください

相続登記の手続きにかかる費用は3つ

相続登記を行う際には、以下の主な費用が必要となります。

  1. 必要書類の取得費用:相続登記を進めるためには、戸籍謄本や不動産登記簿謄本などの公的な証明書が必要です。これらの書類を各公的機関から取得する際には、手数料が発生します。
  2. 登録免許税:相続による不動産の名義変更を登記する際には、登録免許税という税金が課されます。この税額は不動産の種類や価値によって異なります。
  3. 司法書士報酬:多くの場合、相続登記の手続きは複雑であるため、専門的な知識を持つ司法書士に依頼することが一般的です。司法書士にはその手続きの代行として報酬を支払う必要があります。

それぞれについて詳しく解説していきます。

①相続登記の必要書類の取得費用│相場は数千円~2万円

相続不動産の調査のための書類取得費用

相続登記を行うにあたり、不動産の正確な情報を得るために必要な主な書類とその取得費用について解説します。

以下は、相続登記に必要な主要な書類とその取得費用に関する情報を表にまとめたものです。各書類が何のために必要であるか、そしてそれを取得する際の費用について具体的に記述しています。

必要書類

説明

取得場所

費用 

登記事項証明書

不動産の登記情報(所有者名、土地の面積など)が記載された文書。申請書に記載する情報の確認に利用。

法務局

1通につき600円

固定資産税評価証明書

不動産の評価額が記載されており、登録免許税の計算に使用。

不動産所在地の市区町村役場

1通につき200円~400円

名寄帳

特定の地域内で被相続人が所有していた不動産一覧が記載されている。相続登記を行う不動産を明確にするために使用。

市区町村役場

200円~300円(無料の場合もあり)

これらの書類を適切に取得することは、相続登記を正確に行うために不可欠です。特に不動産が複数ある場合や、登記内容が複雑な場合には、これらの書類が全ての不動産の状態を把握し、遺漏なく手続きを進めるのに重要な役割を果たします。相続登記の際はこれらの書類の取得から始めることが一般的であり、手続きの初歩的なステップとなります。

被相続人や相続人に関する書類│法務局に提出する登記申請の必要書類

相続登記の手続きには、被相続人および相続人に関連する様々な書類が必要です。これらの書類は、法務局に提出する登記申請時に、相続関係を証明するために用いられます。

相続登記のために必要な被相続人および相続人に関連する主要な書類とそれぞれの取得費用を表形式で整理しました。

 

必要書類

説明

費用範囲

被相続人に関する書類

戸籍謄本

出生から死亡までの記録。相続人特定や相続関係の証明に使用。

1通 450円

改製原戸籍(原戸籍)

戸籍法の改正により現在の戸籍に記載されていない過去の情報を含む。過去の家族構成や変更履歴の確認に使用。

1通 750円

住民票の除票

被相続人が亡くなったことによる住民登録抹消の証明。被相続人の最終的な住所地を確認するために使用。

1通 300円~400円

相続人に関する書類

戸籍謄本

法的に認められた相続人が誰であるかを証明する書類。

1通 450円

住民票

現在の住所と基本情報が記載されており、相続人の身元情報を証明するために使用。

1通 300円~400円

印鑑証明書

相続人が署名した書類が本人のものであることを証明する書類。

1通 200円~400円

相続登記における必要な書類の取得は、一見すると手数料が低いものの、実際には多くの文書が必要とされるため、全体のコストは意外と高くなります。

特に、戸籍謄本に関しては、被相続人の生涯にわたるすべての記録(除籍謄本や改製原戸籍謄本を含む)が必要です。簡単な家族構成であっても、被相続人と法定相続人の戸籍謄本で5〜10通程度が必要となります。もし被相続人が生前に何度も本籍地を変更していた場合や、兄弟姉妹が相続人となる場合は、その通数はさらに増えます。

また、「代襲相続」や「数次相続」が発生している場合には、相続関係が複雑化し、必要な戸籍の通数が数十通に及ぶこともあります。これは、相続人が既に故人である場合や、一度の相続登記を行わずに次の相続が発生した場合に見られる状況です。

さらに、これらの書類は各本籍地の市区役所でのみ取得可能であり、本籍地が遠方にある場合は交通費や郵送費も考慮に入れる必要があります。一部の市町村ではマイナンバーカードを使用してコンビニでの書類交付が可能ですが、このサービスは自治体によって異なるため、事前に確認が必要です。

相続登記の手続きに必要となる書類について、詳しくは以下の記事を参照してください。

②登録免許税(不動産の固定資産税評価額 × 0.4%)│法務局への申請費用

登録免許税は、不動産の登記を行う際に国に納める必要がある税金で、土地や建物などの不動産を法的に取引や所有権移転するときに発生します。この税金の額は、不動産の「固定資産税評価額」に基づいて計算されます。

固定資産税評価額とは、土地や建物の市場価値に近似した価格で、固定資産税や都市計画税の算出基準として使われる金額です。この評価額は、自治体から毎年送られる固定資産税の納税通知書に記載されています。

特に、相続を原因とする所有権移転登記の場合、登録免許税の税率は「1000分の4」、つまり0.4%と法律で定められています。そのため、相続により所有権が移転される不動産の登録免許税を算出する公式は次のようになります:

登録免許税=不動産の固定資産税評価額×0.4%

たとえば、ある不動産の固定資産税評価額が30,000,000円(3千万円)の場合、その不動産の相続に伴う登録免許税は以下のように計算されます:

登録免許税=30,000,000×0.4%=120,000円

このように計算された登録免許税は、不動産の所有権移転登記を行う際に、法務局で納付する必要があります。

法定相続人以外が不動産を取得する場合は税負担が重くなる

登録免許税の算出において、遺贈による不動産取得の場合、特に注意が必要です。遺贈とは、遺言によって指定された個人に財産を無償で譲渡することを指します。この際、受遺者には法定相続人の制限がなく、友人や慈善団体など、故人が指定した任意の第三者も対象となることができます。

法定相続人以外の人が遺贈によって不動産を取得する場合、登録免許税の税率は通常の相続よりも高く、1000分の20、つまり2%が適用されます。この違いは、財産の譲渡が法定相続の枠組みを超えるため、税率が高く設定されているためです。

たとえば、固定資産税評価額が30,000,000円(3千万円)の土地を遺贈により取得する場合、計算式は次のようになります:

登録免許税=30,000,000×2%=600,000円

このように、遺贈による不動産取得では、税率が大幅に異なるため、登録免許税の負担が大きくなります。遺言で不動産を受け継ぐ予定がある場合、事前にこの高い税率が適用されることを理解し、適切な準備を行うことが重要です。また、遺言による財産の譲渡が考慮される場合は、適切な法的アドバイスを受けることをお勧めします。

登録免許税の免税措置│ただし土地の相続のみで建物は対象外

相続登記を行う際の登録免許税には、特定の条件を満たす場合に限り、免税措置が設けられています。この免税措置は、相続登記をより積極的に進めるために導入されたもので、令和7年3月31日までの期限付きです。以下に、この免税措置が適用される主なケースを説明します。

  1. 相続により土地を取得した人が相続登記をしないで死亡した場合: このケースでは、土地を相続した人がさらなる手続きを進める前に亡くなってしまった場合に、次の相続人が登記を進める際に免税措置が適用されます。
  2. 評価額が100万円以下の土地について相続登記をする場合: 小規模な土地での相続登記には、その評価額が100万円以下であれば、登録免許税が免除されます。
  3. 表題部所有者のみが登記された評価額100万円以下の土地について相続人名義で所有権保存登記をする場合: この場合も、土地の評価額が100万円以下であれば、相続人が所有権保存のための登記を行う際に登録免許税が免除されます。

重要な点として、これらの免税措置は土地の相続にのみ適用されるため、建物については該当しません。もし上記の条件のいずれかに該当する可能性がある場合、より詳しい情報は法務局のホームページ「相続登記の登録免許税の免税措置について」を参照してください。具体的な申請方法や必要な書類など、詳細な手続きの情報を得ることができます。

相続登記を司法書士に依頼した場合の費用・報酬は?

司法書士に相続登記を依頼する際に支払う費用は、主に「実費」と「報酬」の二つのカテゴリに分けられます。

  1. 実費: 実費は、相続登記の手続きに必要となる公的な書類の取得費用や登録免許税など、手続きを進めるために必ず必要となる直接的な費用を指します。これには、戸籍謄本や不動産登記簿謄本の取得費用、固定資産評価証明書の取得費などが含まれます。これらの費用は、司法書士に依頼せずとも自分で手続きを行う場合にも発生するものです。
  2. 報酬: 報酬は、司法書士が提供する専門的なサービスやアドバイス、手続きのサポートに対して支払われる費用です。これには、相続登記申請の作成や遺産分割協議書の作成、登記情報の調査、相続関係説明図の作成など、法的知識と経験を要する業務が含まれます。報酬額は、依頼する業務の複雑さや不動産の数、相続人の人数によって異なります。

司法書士への報酬の相場

相続登記の手続きを司法書士に依頼する際の費用は、依頼する業務の範囲や不動産の数、その評価額、地域によって異なります。以下に、一般的な費用の相場を詳細に解説します。

サービス内容

報酬相場

説明

登記申請の報酬

10万円前後

一般的な相続登記申請の基本料金。不動産の登記情報を更新する作業に対するものです。

遺産分割協議書の作成

2万円~7万円

相続人間で不動産をどのように分割するかの合意を形式化した書類の作成費用。相続登記に先立って必要となることが多いです。

登記情報調査

1物件あたり1,000円~1,500円

不動産の登記情報を調査し、正確な登記状況を把握するための費用。申請書類の正確性を保証するために行います。

戸籍収集および相続関係説明図の作成

2万円~4万円

相続人全員の戸籍謄本を収集し、相続関係を明確に示す説明図を作成する作業の費用。相続の法的根拠を正確に示すために必要です。

相続登記を行う際の司法書士への報酬は、複数の要因によって変動します。具体的には、相続人の数、相続される不動産の数、および相続関係の複雑性が報酬額に影響を与える主な要素です。

たとえば、相続人が複数いる場合、それぞれの意向を調整し、合意形成に至るまでのプロセスが必要です。このような場合、単純な相続よりも手間と時間がかかるため、報酬が増加します。また、相続する不動産が複数ある場合や、これらの物件が地理的に分散している場合にも、それぞれの物件に関する調査や手続きが必要となり、これが報酬の増加につながります。

さらに、特殊な相続関係や遺産分割の問題が複雑であるほど、司法書士が費やす労力は増え、それに伴い報酬も高くなる傾向にあります。このように、相続の状況が複雑であるほど、専門的なサービスが求められ、報酬が増加するのは自然な結果と言えます。

相続登記においては、事前に司法書士と相談し、具体的な報酬の見積もりを取ることが大切です。これにより、手続きの進行中に予期せぬ費用が発生することを防ぎ、スムーズな相続手続きを進めることが可能となります。

相続登記の費用相場の計算例

相続登記の申請にかかる具体的な費用を詳細に計算する例を示します。以下は、親が所有していた固定資産税評価額3,000万円の土地を子供が単独で相続し、その登記手続きを司法書士に依頼した場合の費用の内訳です。

経費項目

金額(円)

説明 

不動産調査費用

1,200

不動産の登記情報を確認するための基本的な調査費用。

必要書類の取得費用

5,000〜10,000

戸籍謄本や固定資産税評価証明書など、相続登記に必要な書類の取得費用。

登録免許税

120,000

固定資産税評価額に基づいた税額。不動産の名義変更に必要な国への納税額。

司法書士への報酬

約100,000

相続登記手続きの専門的なサポートとサービスに対する報酬。

基本合計費用

約220,000

上記の基本費用合計。

また、その他以下のような費用も考慮しておきましょう。

追加費用

説明

消費税

司法書士への報酬にかかる消費税。

送料

必要書類の郵送費。

交通費

司法書士や申請者が役所等への移動に必要な費用。

相続登記をスムーズに進めるためには、これらの費用を予め把握しておくことが大切であり、不明な点は事前に司法書士と相談し、正確な見積もりを取得することが推奨されます。

相続登記の費用は誰が支払う?

相続登記に関する費用の負担者は法律で特に定められていないため、基本的には相続人同士での話し合いにより決定されます。一般的には、該当不動産を取得する相続人が登記の費用を負担するケースが多いですが、不動産の分割方法によって、負担者が異なる場合があります。

  1. 現物分割の場合
    現物分割は、具体的な不動産を個別の相続人が相続する方法です。例えば、「土地Aは長男が、土地Bは次男が相続」と決定された場合、土地Aの登記費用は長男が、土地Bの登記費用は次男がそれぞれ負担します。
  2. 代償分割の場合
    代償分割は、不動産を一人が相続し、他の相続人に対してその価値を現金等で補償する方法です。この場合、不動産を取得する相続人(例えば、被相続人の自宅を継承する相続人A)が相続登記の費用を全額負担しますが、他の相続人に支払う代償金の金額にも影響を与える可能性があるため、事前の話し合いが重要です。
  3. 換価分割の場合
    換価分割は、不動産を売却し、その売却益を相続人間で分割する方法です。この場合、相続登記の費用は相続人全員で負担し、それぞれの取得割合に応じて分担します。
  4. 共有分割の場合
    共有分割では、不動産を相続人全員の共有名義として登記します。ここでは、登記費用は共有者全員で持分に応じて分担されます。

相続登記の費用負担については、各相続人の経済的状況や相続する財産の価値などを考慮し、公平な方法で分担することが望ましいです。このため、相続が発生した際には、早期に全相続人が集まり、具体的な分割方法と費用の負担について話し合うことが重要となります。

相続登記にかかる費用を安くするには

自分で登記手続きをする

相続登記の手続きを自分だけですると、専門家に依頼するよりも費用を大幅に削減できる可能性があります。自分がする場合、専門家への報酬が不要になるため、主な費用は必要な公的書類の取得費用や登録免許税に限られます。

しかし、この方法は相続登記に必要な多くの書類を集める手間や、申請手続きの複雑さを自己管理しなければならないため、大きな労力を要します。特に、遺産分割協議書の作成や法律的な正確さが求められる書類の準備では、適切な知識がないと手続きの間違いが発生しやすく、最悪の場合、申請が却下されるリスクもあります。

加えて、遺産相続は通常、多くの手続きと迅速な決定が求められるため、全てを自分で行うと時間がかかり、精神的な負担も大きくなります。これらの理由から、多くの人は「多少の費用がかかっても専門家に依頼して確実に手続きを進めたい」と考えます。司法書士などの専門家に依頼すれば、手続きの流れや必要な書類の準備から申請までをサポートしてもらえるため、スムーズかつ確実に相続登記を完了させることが可能です。

自分で行う場合と専門家に依頼する場合、それぞれのメリットとデメリットを慎重に比較し、自身の状況に最適な選択をすることが重要です。

複数の司法書士事務所に見積もりをとる

相続登記の費用を削減する効果的な方法の一つに、複数の司法書士に見積もりを依頼する手法があります。司法書士による報酬額には幅があるため、同じ相続登記の案件でも、事務所によって提示される費用が異なることがよくあります。このため、複数の事務所から見積もりを取ることで、最もコストパフォーマンスの良い選択をすることが可能です。

具体的には、まず相続登記を必要とする案件の詳細を明確にし、その情報をもとに複数の司法書士事務所に同じ要件で見積もりを依頼します。見積もりを比較する際には、単に報酬の金額だけでなく、提供されるサービスの範囲、対応の速さ、事務所の評判や過去の実績も考慮に入れることが重要です。

また、安い見積もりだけに注目するのではなく、手続きの質や、追加費用が発生しないかどうかといった点も確認する必要があります。適切なサービスを提供してくれる司法書士を選ぶことで、結果的にスムーズに相続登記を進めることができ、無駄なトラブルや時間のロスを避けることができます。

費用がかかっても専門家に手続き代行を依頼すべきケース

相続登記をスムーズに行うためには専門家のサポートが必要となるケースがいくつかあります。以下に、専門家に依頼することが特に推奨される状況を具体的に解説します。

  1. 相続人が複数いる場合
    相続人が多いと、必要となる戸籍謄本などの公的書類を全員分集める作業が非常に煩雑になります。さらに、相続人全員の同意が必要な場合もあり、中には協力的でない人もいるかもしれません。このような状況では、専門家が中立的な立場から各相続人とコミュニケーションを取り、必要な書類の収集や調整を行うことで手続きがスムーズに進む可能性が高まります。
  2. 相続人が遠方にいる場合
    相続人が国内外の遠方に住んでいる場合、書類の郵送が必要になり、通信のタイムラグや郵送の遅延が発生することがあります。このような場合、専門家が一元的に書類を管理し、確認や不備の修正を迅速に行うことができます。
  3. 不動産が多い場合
    複数の不動産を相続する場合、それぞれの不動産について登記情報を確認し、必要な調査や書類を整える必要があります。各不動産の権利関係を明確にするためには専門的な知識が求められ、司法書士などの専門家に依頼することで、法的な問題を回避しつつ効率的に手続きを進めることができます。
  4. 遺産分割協議がスムーズにいかない場合
    相続には不動産だけでなく、現金や株式などの遺産も含まれることが多く、相続人同士での分割協議がスムーズに行かないことがあります。専門家が介入することで、遺産分割協議書の正確な作成や、公平な分割案の提案を行うことができ、相続人間のトラブルを未然に防ぐことが可能です。
  5. 急いで相続登記を進める必要がある場合
    不動産の売却やその他の理由で相続登記を急ぐ必要がある場合、司法書士に依頼することで迅速かつ正確に手続きを進めることができます。多くの事務所では追加料金で優先的な対応をしてもらえるオプションも用意されています。

相続登記の費用に関するQ&A

Q: 自分で相続登記をする場合、費用はどれくらいかかりますか?

A: 自分で相続登記を行う場合、専門家に依頼すると発生する報酬を節約できますが、それでもいくつかの必要経費が発生します。例えば、相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬は通常5万円から15万円の範囲ですが、自分で手続きを行う場合はこの報酬分を節約できます。具体的には、戸籍謄本などの必要書類の取得費用と登録免許税のみが必要です。

ただし、費用を節約できるとはいえ、自分で相続登記を行うにはかなりの労力と時間が必要です。手続きの複雑さや時間的な負担を考えると、手間をかけずに確実に相続登記を完了させたい場合は、専門家への依頼が推奨されます。

Q: 自分で相続登記を行う場合のメリットとデメリットは何ですか?

A: 自分で相続登記を行う場合、最も明確なメリットは専門家への報酬を支払わなくて良い点です。相続人が限られており、遺産分割協議も比較的容易な場合、手続きをスムーズに進めることが可能です。

しかし、デメリットも多いです。まず、戸籍の取得や法務局への申請など、手続きには多くの時間と労力が必要です。申請と完了時に最低でも法務局に2回訪れる必要があり、さらに不足書類や間違いが発生した場合には、その都度役所や法務局との対応が必要となります。

また、相続人関係が複雑な場合や特殊な法的問題が発生した場合には、専門的な知識や経験が求められるため、適切に対処するのが難しくなります。そのため、手続きの簡易さや費用削減を重視する場合には自分で行う選択肢も考えられますが、手続きの複雑性や時間的な制約、法的なリスクを考慮すると専門家に依頼することがしばしば賢明とされます。

相続登記の手続きを自分でする場合は下記記事を参照してください。

Q: 相続登記で発生する費用は誰が支払うべきですか?

A: 相続登記にかかる費用の負担者は、法律で特に定められていません。したがって、誰が費用を支払うかは相続人同士で協議して決定することになります。相続人が一人だけの場合はその人が全費用を負担しますが、複数の相続人がいる場合の取り決めはさまざまです。

通常、特定の不動産を一人が相続する場合、その不動産を取得する人が登記の費用を支払うことが一般的です。これは、取得する財産に関連する直接的な費用として理解されるためです。しかし、相続した不動産が経済的な負担となる場合、たとえば高額な固定資産税が課せられるなどの理由で、その不動産を相続しなかった他の相続人にも一部の費用を負担してもらうことがあります。

また、複数の相続人が不動産を共同で相続して後に売却する場合は、売却代金を分配する際に相続登記の費用も分け合うことがあります。最終的には、これらの費用については遺産分割協議の際に相続人同士で話し合い、各自の状況に応じた公平な解決を図ることが重要です。

Q: 相続登記を司法書士に依頼する際、どのように選べばよいですか?

A: 相続登記を行う司法書士を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。まず、事務所がホームページで相続登記の費用を明示しているかを確認しましょう。費用が公開されている事務所は、料金体系が透明であるため、適正な価格でサービスを提供している可能性が高いです。また、相続登記だけでなく、相続に関連する他の法的手続きにも精通している事務所を選ぶことが望ましいです。これにより、相続登記だけでなく、遺産分割や税務に関する包括的なアドバイスが受けられます。

さらに、相続した不動産の売却を考えている場合など、不動産の取り扱いによって税負担が異なる場合があります。そのため、相続業務に詳しい司法書士を選ぶことで、将来的な税金の負担を軽減する戦略的なアドバイスを受けることが可能です。選択する際には、これらのサービスを総合的に提供できる司法書士を選ぶことが、相続手続きスムーズかつ効率的に進めるための鍵となります。

まとめ

相続登記に関する費用と手続きは、2024年4月からの義務化に伴い、多くの方にとって重要なテーマとなります。本記事では、相続登記にかかる一般的な費用相場、必要な手続き、そして専門家に依頼するメリットなどを詳しく解説しました。相続登記を自身で行うことは可能ですが、その複雑さから日常生活を送りながら全てを自分で管理することは困難であるため、専門家への依頼が推奨されます。

特に、弁護士法人あおい法律事務所では、相続に関するさまざまな問題だけでなく、相続登記の手続きについても幅広くサポートを提供しています。戸籍収集や銀行手続きなど、登記に必要な諸手続きを代行し、スムーズな相続登記の実現をサポートします。相続登記にお困りの方、効率的で確実な手続きをお求めの方は、ぜひ弁護士法人あおい法律事務所にご相談ください。確かな専門知識と豊富な経験を持つ専門家が、皆様の相続登記を適切にサポートいたします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。