【親が亡くなったらすること】葬儀や役所での相続手続きを解説│一覧表付

相続手続き

更新日 2024.10.02

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

親が亡くなったら、悲しみに打ちひしがれる中でも、行わなければならない手続きが山積しています。葬儀の手配から始まり、さまざまな公的手続き、遺産相続や税金に関する事務処理に至るまで、その量と複雑さには圧倒されるかもしれません。しかも、多くの手続きには期限があり、スムーズに進めることが求められます。

この記事では、親が亡くなったら必要となる手続きを、葬儀、公的な手続き、遺産相続関係、税金関係というカテゴリーに分けて専門家が解説します。また、親が亡くなったら必要な手続きを時系列に沿ってリストにまとめているので、チェックリストとして活用してください。

目次

親が亡くなったら何をすればよい?手続き一覧表

親が亡くなったらするべきことを一覧にしました。

届け出や相続手続きには期限があるものも多くあります。そのため、全体の流れを把握しつつ計画的に手続きを進めるようにしましょう。

【親が亡くなったらするべきことリスト】

期限

手続き内容

死亡してすぐ

死亡診断書の受け取り

訃報の連絡

遺体の搬送、葬儀社の選定

死亡日から5日以内

健康保険証の返却(健康保険)

死亡日から7日以内

死亡届の提出

火葬許可証の取得

通夜・葬儀

死亡日から10日以内

厚生年金の受給停止手続き

死亡日から14日以内

世帯主の変更手続き

国民健康健康保険・介護保険の資格喪失の手続き

後期高齢者医療被保険者資格喪失届の提出

国民年金の受給停止手続き

公共料金などの名義変更、解約手続き

死亡日から1ヵ月以内

雇用保険受給資格者証の返却

1~3ヶ月以内を目安に出来るだけ速やかに

遺言書の有無の確認

遺言書の検認手続き(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)

相続人の調査

相続財産の調査

遺産分割協議・遺産分割協議書の作成

死亡日から2年以内

国民年金の死亡一時金の請求

葬祭費・埋葬費の請求

高額療養費の還付申請

死亡日から3年以内

生命保険金(死亡保険金)の請求

不動産の所有権を相続したことを知った日から3年以内

不動産の相続登記

死亡日の翌日から5年以内

遺族年金の受給申請

最後の年金支払日の翌月初日から5年以内

未支給年金の請求

親の死亡後の手続きに順番がある?

親が亡くなったら、様々な手続きが必要となりますが、それらにはそれぞれ期限が設定されています。そのため、期限が迫っているものから優先的に対応することが重要です。特に、健康保険の資格喪失や年金受給停止などの公的な手続きは、死亡日から14日以内に完了させる必要があるため、迅速に行う必要があります。

手続きをスムーズに進めるためには、親族や相続人と協力し合いながら、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることも有効です。また、お金に関する手続き、例えば死亡保険金の請求やライフラインの名義変更などは、早めに行うことで経済的な不安を軽減できます。

遺産相続に関する手続きは、公的な手続きが終わった後に着手すると良いでしょう。相続税の申告や納税準備、相続財産の名義変更などは、時間をかけて慎重に行う必要があります。

親の死亡後の手続きには明確な順番があるわけではありませんが、期限を意識しながら効率的に進めることが大切です。

ここからは、親が亡くなったらするべき相続手続きについて、「葬儀の手続き」「公的手続き」「遺産相続に関する手続き」の分けて詳しく解説していきます。

なお、それぞれの事情に応じて必要な手続きは異なります。全ての手続きが必要となるわけありませんので、該当する手続きについてのみご確認ください。

親が亡くなったらまずすること│葬儀の前の手続き

親が亡くなったら、その日から手続きを進めていかなければなりません。すぐに進めるべき主な手続きは以下の3つです。

  • 死亡診断書の受け取り
  • 訃報の連絡
  • 遺体の搬送、葬儀社の選定

①死亡診断書の受け取り

親が亡くなったら、まずは死亡診断書を受け取ります。死亡診断書は、役所への死亡届提出や死亡保険金の請求に必要な書類です。

通常、亡くなった方が入院していた病院の医師が死亡診断書を作成します。自宅療養中に亡くなった場合は、かかりつけ医に連絡して自宅に訪問してもらい、死亡診断書を作成してもらう必要があります。

一方、病気や老衰以外の原因で亡くなった場合、例えば事故や自然死など、死因が不明な場合などは、遺体には触れず警察へ連絡します。死因を確定するためには、警察の専門医が遺体の検視を実施します。検視が完了すると、その結果をまとめた「死体検案書」が発行されます。

死亡診断書の発行費用は、保険適用外のため、約3,000〜10,000円程度かかります。また、検案書の発行費用は地域によって異なりますが、一般的には30,000〜100,000円程度が相場とされています。

なお、以下のように死亡届と同じ用紙に死亡診断書(死体検案書)が付いています。役所に死亡届と死亡診断書を一緒に提出するため、手もとは残りません。このあとの相続手続き(死亡保険金の受け取り、銀行口座の名義変更、年金の受給停止手続きなど)で、死亡診断書が必要になるものもありますので、必ず何枚かコピーを取っておきましょう。

②訃報の連絡

家族や親戚などに訃報の連絡をします。その際は、迅速かつ確実に連絡がとれる電話を使いましょう。被相続人と密接な関係にあった方々には、取り急ぎ訃報のみを伝え、その後、葬儀の日時や場所が決まり次第、改めて詳細を連絡するとと良いでしょう。

一方、親族以外の知人などに対しては、訃報と葬儀の詳細などを同時に伝えても良いでしょう。

③遺体の搬送、葬儀社の選定

次に行うべきことは、葬儀社の選定です。場合によっては、病院が提携している葬儀社を紹介してくれることもありますが、すぐに決定するのではなく、担当者の対応や費用などを事前に確認し、納得のいく葬儀社を選ぶようにしましょう。

亡くなった当日に葬儀社を決めるのが難しい場合は、まずは遺体搬送だけを葬儀社に依頼することもできます。遺体を病院で安置してもらえるのは、通常亡くなってから数時間程度です。そのためすみやかに搬送を依頼する必要があるのです。

葬儀では、葬儀の方法や、参列者の整理、香典返しの検討など、決めなければいけないことがたくさんあります。時間に追われる中で葬儀社を選ぶのではなく、できれば事前に比較検討し、親が亡くなる前に決めておくと良いでしょう。

親が亡くなったらする葬儀に関する手続き(7日以内)

親が亡くなったら、7日以内に進めるべき主な手続きは以下の1つです。

  • 死亡届の提出
  • 火葬許可証の取得
  • お通夜、葬儀

①死亡届の提出

死亡の事実を知った日から7日以内に、役所に死亡届を提出します。

死亡届は死亡診断書と同じ1枚の用紙で、左側が死亡届、右側が死亡診断書になっています。

死亡診断書を医師から受け取ったら、届出人(家族や親族)が左側を記入しておきましょう。

なお、死亡届の提出自体は、届出人以外でも代理で行うことができ、通常は葬儀社に死亡診断書を渡すと葬儀社が代行してくれます。

提出期限

死亡の事実を知った日から7日以内(7日目が土日又は祝日、年末年始の場合は、翌開庁日まで)

提出窓口

以下のいずれかを管轄する役所の窓口
・亡くなった人の本籍地
・届出人の住所地
・死亡した場所

届書を持参する人

届出人※又は届出人から頼まれた方(ただし、記載内容の修正は、届出人のみ可)

必要書類

・死亡届(届出人の署名及び死亡診断書に医師の証明があるもの)
・届出人の認印(届書に押印した場合)など

②火災許可証の取得

通常、葬儀の後に火葬が行われます。遺体を火葬するときは火葬許可証が必要となりますので、葬儀の前に火葬許可証を取得しておきます。

火葬許可証は、死亡届を提出するのと同時に、役所で火葬許可の申請を行い発行してもらいます。

申請するとすぐにその場で発行してもらえます。

なお、死亡届の提出と同様に、火葬許可証の取得手続きも葬儀社が代行してくれるケースが多いです。

火葬が完了すると、火葬済みを示す証印が押された火葬許可証が戻ってきます。この証印がある火葬許可証は、後に納骨(埋葬)を行う際に必要となる埋葬許可証となります。そのため、紛失しないように大切に保管しておきましょう。

③通夜・葬儀

通夜は通常亡くなってから2日目に、葬儀は3日目に行われます。

通夜は、家族、親族や生前親しくしていた人など近親者が集まって最後の夜を過ごす儀式のことです。これは通常、葬儀社を通じて行うのが一般的です。

葬儀社に主導で行ってもらう場合は、通夜の準備や祭壇の手配、参列者への案内などは葬儀社が行ってくれます。家族は、喪主を選び、参列者の出迎えや挨拶などを行います。

葬儀とは、一般的に通夜、葬式、告別式、そして火葬を含む一連の儀式のことをいいます。

葬儀の費用に関しては、法律で定められたルールはありませんが、通常は喪主が負担することが一般的です。集まった香典は喪主が管理し、葬儀の費用に充てられることが通常です。

なお、近年では家族葬や火葬のみを行う直葬といった、より小規模な葬儀の形式も選ばれることが増えています。

親が亡くなったらする役所の手続き

親が亡くなったら、進めるべき主な公的手続きは以下の4つです。

  • 世帯主の変更
  • 健康保険の資格喪失手続き
  • 介護保険の資格喪失手続き
  • 高額療養費の還付請求

①世帯主の変更(14日以内)

被相続人が世帯主であった場合、世帯主が変更となるため「世帯主変更届」の提出が必要です。しかし、次の世帯主が明らかな場合や、世帯に誰も残っていない場合は、この手続きは不要です。

提出が遅れると、5万円以下の過料が課せられることがあるので注意が必要です。

手続き先

亡くなった親の居住地の市役所等

届出人

・新しい世帯主
・同じ世帯の人
・代理人
のいずれか。

必要書類

・世帯主変更届(住民異動届)
・本人確認書類(保険証や運転免許証など
・国民健康保険証、子ども医療費受給者証、介護保険証
・印鑑
・委任状など

②健康保険の資格喪失手続き(5日または14日以内)

日本では、すべての国民に公的医療保険への加入が義務付けられているため、誰もがいずれかの保険制度(国民健康保険、社会保険、後期高齢者医療制度)に加入しています。

そのため、加入者が亡くなった場合には、保険の資格を喪失するための手続きと、保険証の返却が必要となります。

<国民健康保険>

手続き期限

亡くなってから14日以内

手続き先

亡くなった親の住所地の市区町村の国民健康保険窓口

必要書類

・国民健康保険異動届(資格喪失)
・国民健康保険証
・高齢受給者証(70歳から75歳までの人の場合)
・戸籍謄本など

<社会保険>

亡くなった親が会社に勤めており、健康保険に加入していた場合は、その会社の事業主は「被保険者資格喪失届」を死亡日から5日以内に日本年金機構に提出する必要があります。この際、健康保険の被保険者証を添付しなければなりません。

勤務先から健康保険証の返却を求められますので、亡くなった方の家族は速やかに保険証を返却しましょう。この際、亡くなった親の被扶養者である家族の健康保険証も忘れずに返却しましょう。

なお、亡くなった親の家族が健康保険の扶養に入っていた場合は、亡くなった日の翌日から資格を喪失します。そのため、新たに国民健康保険への加入手続きを行うか、他の家族の扶養になる手続きをしましょう。

手続き期限

亡くなってから5日以内

手続き先

亡くなった親の勤務先や加入先の保険組合

必要書類

・厚生年金保険被保険者資格喪失届
・健康保険被保険者証
・死亡退職届
・その他会社から求められた書類 

③介護保険の資格喪失の手続き(14日以内)

被相続人が65歳以上であったり、40歳以上65歳未満で要介護・要支援の認定を受けていた場合、その方の介護保険被保険者証は死亡後14日以内に返却する必要があります。

また、被保険者証の返却と同時に、「介護保険資格喪失届」の提出も必要となりますので、忘れずに行いましょう。

手続き先

亡くなった親の住所地の市区町村役場の介護保険窓口

必要書類

・介護保険資格喪失届
・介護費保険者証など

なお、介護保険の資格喪失手続きを行った後、保険料の未納分や払い過ぎがないかが再計算されます。もし未納分がある場合は、相続人がその不足分を納める必要があります。一方、払い過ぎがある場合は、相続人に還付金が支払われます。このように、介護保険の手続きを通じて、保険料の精算が行われます。

④葬祭費・埋葬料の請求(2年以内)

被相続人が加入していた健康保険によっては、遺族が葬祭費や埋葬料を請求できる制度があります。請求期限は2年以内と比較的余裕がありますが、健康保険の資格喪失手続きと同時に行っておきましょう。

葬祭費や埋葬料とは、被相続人の葬儀を行った人に対して、被相続人が加入していた健康保険から支給される給付金のことです。

<葬祭費>亡くなった親が国民健康保険・後期高齢者医療制度に加入していた場合

手続き期限

葬儀から2年以内

手続き先

亡くなった親の住所地の市区町村役場

必要書類

・亡くなった親の健康保険証
・申請者の本人確認書類、印鑑
 ・葬儀費用の領収書など

<埋葬料>亡くなった親が勤務先の健康保険に加入していた場合

手続き期限

死亡日の翌日から2年以内

手続き先

亡くなった親の加入している健康保険組合または協会けんぽ

必要書類

・埋葬料支給申請書(事業主の証明があるもの)
・死亡診断書のコピーまたは埋葬許可証
・埋葬費用の領収書など

⑤高額療養費の還付請求(2年以内)

親が亡くなった後、もし医療費の自己負担額が一定の基準を超えていた場合、高額療養費制度を利用してその超過分を返金してもらうことが可能です。

死亡後でも申請は可能ですが、申請期限は治療を受けた月の翌月から2年以内に設定されています。そのため、返金を受けるためには早めに手続きを行うことが重要です。

手続き期限

診療月の翌月から2年以内

手続き先

・健康保険組合
・協会けんぽ
・市区町村役場

必要書類

・高額療養費支給申請書
・医療費の領収書、明細書
・亡くなった親との続柄がわかる戸籍謄本など

親に亡くなったらする年金手続き

親が亡くなったら、進めるべき主な年金手続きは以下の5つです。

  • 年金の受給停止手続き
  • 国民年金の死亡一時金の請求手続き
  • 寡婦年金の請求手続き
  • 遺族年金の請求手続き
  • 未支給年金の請求手続き

年金の受給停止手続き(10日または15日以内)

被相続人が年金受給者だった場合、年金の受給を停止する手続きが必要です。この手続きを行わないと、本来受け取るべきではない年金を受け取ってしまうことになり、不正受給とみなされる可能性があるので注意が必要です。

厚生年金の場合、この手続きは死亡後10日以内に行う必要があります。国民年金の場合は、死亡後14日以内に行う必要があります。ただし、被相続人がマイナンバーを登録している場合は、この手続きは不要で、死亡届の提出時点で自動的に完了します。

手続き期限

・厚生年金:亡くなってから10日以内
・国民年金:亡くなってから14日以内

手続き先

年金事務所または年金相談センター

必要書類

・年金受給権者死亡届(報告書)
・年金証書
・死亡の事実を証明する書類(死亡診断書のコピー、死亡記載のある戸籍など)

詳しくは、日本年金機構のホームページ「年金を受けている方が亡くなったとき」を参照してください。

国民年金の死亡一時金の請求手続き(2年以内)

死亡一時金は、国民年金第1号被保険者として36カ月以上国民年金保険料を納めた人が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けることなく亡くなった場合に、遺族へ支払われる給付金です。この金額は、加入期間に応じて変動し、12万円から32万円の範囲内で決定されます。ただし、遺族が遺族基礎年金を受け取る場合は、死亡一時金の支給はありません。

死亡一時金を請求することができるのは、故人と同じ生計を営んでいた遺族に限られます。この際、請求することができる遺族には「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹」といった優先順位が設けられており、この順番に基づいて請求権が決定されます。

手続き期限

死亡日の翌日から2年以内

手続き先

・市区町村役場
・年金事務所または年金相談センター

必要書類

・基礎年金番号通知書または年金手帳
・申請者の関係がわかる戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し
・亡くなった親の住民票除票
・世帯全員の住民票
・受取先金融機関の通帳など

詳しくは、日本年金機構のホームページ「死亡一時金を受けるとき」を参照してください。

寡婦年金の請求手続き(5年以内)

寡婦年金は、夫が亡くなった際に、一定の条件を満たす妻が受け取ることができる年金です。具体的には、夫が死亡する前日までに国民年金第1号被保険者として保険料を納めた期間と保険料免除期間が合わせて10年以上ある場合、そしてその夫と10年以上連続して結婚生活を送っていた(実質的な結婚関係も含む)妻が対象となります。

また、夫が亡くなった時点で夫に生計を支えられていたことも条件の一つです。対象となる妻は、60歳から65歳までの間、この寡婦年金を受け取ることができます。

手続き期限

死亡日の翌日から5年以内

手続き先

・市区町村役場
・年金事務所または年金相談センター

必要書類

・基礎年金番号通知書または年金手帳
・申請者の関係がわかる戸籍謄本
・亡くなった親の住民票除票
・世帯全員の住民票
・受取先金融機関の通帳など
・年金証書(公的年金から年金を受けているとき)

詳しくは、日本年金機構のホームページ「寡婦年金を受けるとき」を参照してください。

遺族年金の請求手続き(5年以内)

亡くなった親が家族の生計を支えていた場合、遺族は「遺族年金」を受給する権利があります。この遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、適用条件に応じて、どちらか一方または両方を受け取ることができます。

「遺族基礎年金」は、故人の遺族に18歳未満の子どもがいる場合、または20歳未満で障害のある子どもがいる場合に支給されます。ただし、子どもがいない配偶者には支給されません。

一方、「遺族厚生年金」は、故人が厚生年金に加入していた場合に支給される年金です。この年金は、子どもがいない配偶者や18歳以上の子どもなど、より広い範囲の遺族が受給対象となります。

手続き期限

死亡日の翌日から5年以内

手続き先

・市区町村役場
・年金事務所または年金相談センター

必要書類

・年金申請書
・基礎年金番号通知書または年金手帳
・申請者の関係がわかる戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
・亡くなった親の住民票除票
・世帯全員の住民票
・請求者の収入が確認できる書類
・子の収入が確認できる書類
・死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書
・受取先金融機関の通帳など

詳しくは、日本年金機構のホームページ「遺族年金(受給要件・対象者・年金額)」を参照してください。

また申請書の書き方については「遺族年金請求書と未支給年金請求書の記入方法等のご案内」を参照してください。

未支給年金の請求手続き(5年以内)

亡くなった親が国民年金や厚生年金などの公的年金の受給資格者であった場合、遺族は未支給年金の請求を行う必要があります。この未支給年金は、公的年金が過去2ヶ月分まとめて支給される仕組みのため、亡くなった直後にはまだ受け取っていない年金が発生する可能性があるためです。

また、故人が年金を受給する資格がありながら受け取っていなかった場合、その未受給分も未支給年金として請求することができます。この請求は、亡くなった年金受給者と生計を共にしていた3親等内の親族が行うことができます。請求権者には優先順位があり、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他親族」の順に定められています。

未支給年金の請求期限は、故人の死亡日の翌日から5年以内ですが、手続きは早めに行うことが望ましいです。

手続き期限

死亡日の翌日から5年以内

手続き先

年金事務所または年金相談センター

必要書類

・未支給年金請求書
・死亡の事実を明らかにできる書類
・亡くなった親の年金証書
・申請者の関係がわかる戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
・生計を同じくしていたことがわかる書類
・受取先金融機関の通帳など

詳しくは、日本年金機構のホームページ「年金を受けている方が亡くなったとき」を参照してください。

また申請書の書き方については「遺族年金請求書と未支給年金請求書の記入方法等のご案内」を参照してください。

親が亡くなったらする税務署の手続き

親が亡くなったら、進めるべき主な税金に関する手続きは以下の3つです。

  • 所得税の準確定申告
  • 相続税の申告、納税

所得税の準確定申告(4カ月以内)

もし被相続人が生前に確定申告をすべきだった場合は、相続人が代わりに被相続人の亡くなった年の所得に対する確定申告を行う必要があります。これを「準確定申告」と言います。

準確定申告は、相続が開始されたことを知った日の翌日から4ヵ月以内に完了させる必要があります。期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などの追加の税金がかかることがあるので注意が必要です。

準確定申告が必要なケースは、被相続人が以下のような場合です。

  • 事業所得がある場合(事業主やフリーランスなど)
  • 不動産所得がある場合
  • 年収が2,000万円以上の場合
  • 2箇所以上の会社から収入がある場合
  • 公的年金を年間400万円以上受け取っていた場合
  • 給与や退職金以外で年間20万円以上の収入があった場合
  • 生命保険の満期金や一時金を受け取った人

また、故人が多額の医療費を支払っていた場合、準確定申告を通じて税金の還付を受けることが可能です。

年末に親が亡くなった場合でも、通常の確定申告期限(翌年3月15日)よりも前に死亡から4ヶ月以内に準確定申告を提出すれば問題ありません。

さらに、前年の確定申告が未済の場合は、その年分の確定申告も合わせて行う必要があります。

手続き期限

死亡日の翌日から4か月以内

手続き先

亡くなった親の住所地の税務署

必要書類

・所得税の確定申告書、確定申告書付表
・源泉徴収票など

相続税の申告、納税(10か月以内)

相続した遺産の総額が基礎控除額(「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」)を超える場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。

たとえ遺産分割協議がまとまっていないとしても、期限までの申告・納税が必要です。その場合は暫定的な金額で申告・納税することになります。

申告期限を過ぎてしまったり、実際に受け取った相続財産の額より少なく申告したりすると、本来の税金に加えて加算税や延滞税が課されることがあります。

相続税申告は専門的な知識が必要となり、時間も精神的な負担も大きいため、弁護士や税理士に依頼することをお勧めします。

手続き期限

相続の開始を知った日の翌日から10か月以内

手続き先

亡くなった親の住所地の税務署

必要書類

国税庁ホームページ「相続税の申告の際に提出していただく主な書類」を参照してください。

親が亡くなったらする公的手続き以外の手続き

親が亡くなったら、役所などの公的機関での手続き以外にも、以下のような手続きが必要です。

  • 死亡保険金の請求手続き
  • 公共料金等の名義変更・解約

①死亡保険金の請求手続き(3年以内)

亡くなった親が生命保険(死亡保険)に加入していた場合、保険金は契約上の受取人に支払われます。この死亡保険金の請求は、死亡から3年以内に行う必要があります。しかし、受け取る金額や契約の形態によっては、相続税、贈与税、所得税の課税対象となる場合があるため、早めの請求が推奨されます。

死亡保険金は契約上の受取人に固有の財産として支払われるため、遺産分割の対象にはなりません。しかし、受取人は受け取った保険金に対して相続税、贈与税、所得税が課税される可能性があるため、正確な税務処理を行うことが重要です。

保険会社によって必要書類が異なる場合があるため、契約の保険会社に事前に確認しましょう。

②公共料金、クレジットカードなどの名義変更・解約

公共料金等の名義変更や契約などは、明確な期限はありませんが、出来るだけ速やかに行いましょう。

以下に、主な手続きについてまとめましたので参照のうえ、忘れずに手続きするようにしましょう。

手続き内容

手続き先

必要書類

公共料金(電気、ガス、水道など)の名義変更・解約

電力会社、水道局、ガス会社など

口座振替依頼書など
(詳細は各契約会社に確認)

クレジットカードの名義変更・解約

各カード会社

被相続人の戸籍謄本など
(詳細は各契約会社に確認)

携帯電話・固定電話・ネットなどの名義変更・解約

各契約会社

被相続人の戸籍謄本など
(詳細は各契約会社に確認)

運転免許証の返却

最寄りの警察署

運転免許証、死亡診断書、戸籍謄本、届出人の本人確認書類、認印など

パスポートの返却

都道府県の申請窓口またはパスポートセンター

パスポート、死亡診断書、戸籍謄本など

 親が亡くなったらする遺産相続の手続き

亡くなった親が持っていた遺産に関する手続きを開始します。これは、誰が何をどの程度遺産を受け取るかを決定する手続きです。誰が相続すべきか決まれば、それぞれの遺産の名義変更を行います。

相続放棄は死亡後3ヶ月以内に、相続税の申告は死亡後10ヶ月以内に行う必要があるため、遺産相続に関する手続きは早めに始めましょう。

<遺産の相続に関する手続き>

  • 遺言書の有無の確認と検認手続き
  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 限定承認や相続放棄の検討
  • 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

<名義変更手続き>

  • 不動産の名義変更手続き
  • 銀行の預貯金名義変更手続き

①遺産の相続に関する手続き

遺産相続手続きは以下の流れで進めます。

  • 遺言書の有無の確認と検認手続き
  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 限定承認や相続放棄の検討
  • 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

遺産の内容によって手続きの内容や方法が異なります。相続人を確定する際には、戸籍謄本などでそれを証明する必要があります。

さらに、相続財産の全体像を把握するためには、現金、不動産、株式、車両、生命保険などの評価額を算出することが求められます。これらの手続きには専門的な知識が必要な場合があり、また、一部の手続きでは数ヶ月を要することもあります。

そのため、手続きに不安を感じたり、困難を感じたりした場合には、早めに専門家に相談することをおすすめします。

詳しくは、以下の記事も参照してください。

②不動産の名義変更手続き(3年以内)

被相続人が不動産を所有していた場合は、不動産の名義変更手続き「相続登記」が必要です。

相続登記は2024年4月1日より義務化され、不動産を取得したことを知ってから3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料対象となることがあります。

登記せずに時間が経過すると、二次相続や三次相続が発生した際に権利関係が複雑化し、さらに手続きが複雑になる可能性があります。

そのため、遺言や遺産分割協議によって不動産の権利関係が明らかになった時点で、速やかに相続登記を行うようにしましょう。

手続き期限

不動産の取得を知った日から3年以内

手続き先

不動産の所在地を管轄する法務局

必要書類

・登記申請書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票除票または戸籍附票
・相続人の戸籍謄本
・遺産分割協議書
・印鑑証明書
・遺言など

費用

・収入印紙
・登録免許税(不動産固定資産税評価額の0.4%)

相続登記の手続きは複雑ですので、専門家である弁護士や司法書士に依頼することを検討してください。

③銀行預金の解約・名義変更

被相続人が取引していた銀行や証券会社などの金融機関には、解約(払い戻し)や名義変更の手続きが必要です。明確な期限はありませんが、預金を相続する人が確定したら出来るだけ速やかに手続きを行いましょう。

金融機関によって要求される書類は異なることがありますが、通常は、相続人全員の署名と印鑑が押された「相続手続き依頼書」が求められます。

また、遺言書、遺産分割協議書、家庭裁判所の調停調書・審判書の有無によって、預金の相続手続きに必要となる書類が異なります。以下にそれぞれのケースにおける必要書類をご紹介します。

ただし、金融機関によって必要書類は異なりますので、必ず取引先の銀行にお問い合わせのうえお手続きください。

手続き先

取引先の銀行

遺言書がある場合の必要書類

・遺言書
・検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・預金を相続する人の印鑑証明書など

遺言書がない場合の必要書類

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書

家庭裁判所の調停証書・審判書がある場合

・家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
・預金を相続する人の印鑑証明書

 まとめ

親が亡くなった際には、悲しみとともに、葬儀の手配、遺産の相続、さまざまな公的手続きなど、山のような事務処理が待っています。この記事では、死亡診断書の取得から始まり、遺産分割協議まで、必要な手続きを一覧表として整理し、その流れを解説してきました。

しかし、特に相続に関する手続きは複雑であり、時には専門家の助けが必要となる場合もあります。遺産分割協議においては、相続人同士の合意形成が必要となるため、弁護士や税理士などの専門家に相談することで、スムーズな進行が期待できます。

また、相続税の申告や節税対策にも、専門家の知識が役立ちます。親が亡くなった際の手続きは、多岐にわたりますが、この記事がその道標となり、少しでも皆様の負担を軽減できれば幸いです。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。