死亡後の手続きの優先順位|死亡後~葬儀後の手続きの順番を一覧表で紹介!

相続手続き

更新日 2026.05.25

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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家族や親族が亡くなったら、同居の家族を中心に、さまざまな手続きを進めていかなければなりません。申請期限は法律によって定められていますので、大切な家族や親族が亡くなった後、心に余裕がない中でも、優先順位を決めて計画的に進めていく必要があります。

ですが、どういった手続きに期限があり、何から手をつけていいのか、どの手続きを優先すべきか、迷われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、死亡後の手続きの優先順位についてご紹介いたします。

目次

死亡後の手続きの優先順位

1.死亡後の手続きに優先順位はある?

死亡後は、大きく分けて死亡後から葬儀前に行う手続きと、葬儀後に行う手続きとがあります。法律上、こうした手続きに明確な優先順位がつけられているわけではないため、たとえば本記事でご紹介する優先順位とは異なる順番で手続きを進めても、問題はありません。

重要なのは、期限のある手続きに関してはその期限を必ず守るということです。

そして、期限を守って効率よく必要な手続きを全て完了させるためには、期限が近いものや準備に時間のかかるものから順にこなしていくことが望ましいです。また、ある手続きに着手するためには、前提となる他の手続きを終えている必要があるため、そういった点でも基本的な優先順位というのは存在します。

本記事では、死亡後から葬儀までに行う手続きを、葬儀後に行う手続きのうち、特に優先順位の高いものに主軸を置いて、簡単にご紹介させていただきます。具体的な手続きの詳細は、こちらの関連記事にありますので、本記事とあわせてぜひご一読いただければと思います。

それでは、まずは葬儀までの手続きと葬儀後の手続きの優先順位を一覧表で確認しておきましょう。

2.死亡後、葬儀までの手続き【一覧表】

死亡後、葬儀までの手続きとしては、故人の死亡届に関する手続きと、葬儀に関する手続きがあります。故人の亡くなった状態によって、死亡診断書もしくは死体検案書を医師に交付してもらい、死亡届とともに市区町村役場に提出します。このときに、火葬の許可証も交付申請し、火葬許可証をもとに葬儀を執り行います。

死亡後の手続き 期限
死亡診断書(死体検案書)の受取 死亡後すぐ
死亡届の提出・火葬許可証の受け取り 死亡後7日以内
訃報の連絡 遺体安置後
葬儀の打ち合わせ
葬儀の日程を連絡

葬儀の打ち合わせ後

日本では、死後2~3日の間に通夜・葬儀が行われることが一般的です。そのため、手続きを行う人は故人の死亡日当日から優先順位を意識して、上表の手続きを進めていかなければなりません。

2.葬儀後の手続き【一覧表】

葬儀が終わると、次に市区町村役場での公的手続きや遺産相続に関する手続き、故人が生前に契約していた各種サービスの解約等に関する手続きを進めていく必要があります。このうち、故人が生前に契約していた各種サービスの解約等に関しては明確な期限が定められておらず、各契約内容により必要な手続きも異なるため、本記事では「優先順位は低いがなるべく早めにすべき手続き」として分類してあります。

そのため、優先順位の高い葬儀後の主な手続きを一覧表にしますと、下のとおりとなります。

死亡後の手続き 期限
年金受給停止の手続き 死亡から10日または14日以内
健康保険資格喪失の届出 死亡から5日または14日以内
介護保険資格喪失の届出 死亡後14日以内
住民票の世帯主変更の届出
雇用保険受給資格者証の返却 死亡後1ヶ月以内
相続放棄・限定承認(3ヶ月以内) 相続開始を知ってから3ヶ月以内
所得税の準確定申告・納税(4ヶ月以内) 相続開始を知ってから4ヶ月以内
相続税の申告・納付(10ヶ月以内) 相続開始を知ってから10ヶ月以内
国民年金の死亡一時金請求 2年以内
埋葬料請求
葬祭費請求
高額医療費の還付申請
不動産の相続登記(名義変更) 3年以内
遺族年金の請求 5年以内
故人の未支給年金の請求

それでは、優先順位の高い重要な手続きについて、期限の近いものから簡単にその内容を確認しておきましょう。

優先順位の最も高い葬儀前の手続き

死亡後、死亡日の当日からすぐとりかかるべき優先順位の高い手続きは、主に以下の2つです。

他にも遺体の搬送や葬儀社の選定、訃報の連絡なども必要です。詳しくは、以下の記事も参照してください。

1.死亡診断書・死体検案書の受け取り

故人の死亡後、死亡を医学的に証明する書類である「死亡診断書」もしくは「死体検案書」を受け取ります。死亡診断書は、亡くなった当日に受け取ることが多いです。

医師が自身の患者について、生前に診療していた傷病に関連して死亡した場合に交付する書類が死亡診断書です。一方、病気や老衰以外の原因で亡くなった場合(事故や自然死、死因が不明な場合など)は、死体検案書を受け取ることになります。死亡診断書の発行費用は約3,000〜10,000円、死体検案書は地域差がありますが約30,000〜100,000円が目安です。

受け取った死亡診断書・死体検案書は、市区町村役場に提出する死亡届に添付して提出する必要があります。もっとも、死亡届と1枚セットになっている書式が一般的です。

なお、死亡診断書や死体検案書は、死亡届の提出以外の手続きでも使う可能性があるため、10枚程度のコピーを用意しておくと安心です。

2.死亡届の提出と火葬許可証の受け取り

死亡診断書や死体検案書を受領したら、死亡の事実を知った日から7日以内に、役所に死亡届を提出します。

提出期限

死亡の事実を知った日から7日以内(7日目が土日又は祝日、年末年始の場合は、翌開庁日まで)

提出窓口

以下のいずれかを管轄する役所の窓口
・亡くなった人の本籍地
・届出人の住所地
・死亡した場所

届書を持参する人

届出人※又は届出人から頼まれた方(ただし、記載内容の修正は、届出人のみ可)

必要書類

・死亡届(届出人の署名及び死亡診断書に医師の証明があるもの)
・届出人の認印(届書に押印した場合)など

また、火葬を行うためには火葬許可証が必要となるため、葬儀の前に許可証を取得しておかなければなりません。火葬許可証は、死亡届を提出する際に同時に交付申請し、通常はその場で発行されます。

死亡届の提出や火葬許可証の交付申請は、原則として故人の家族がすることが想定されていますが、届出人以外の者が代理で行うことも可能です。実務上は、葬儀社が遺族に代わって死亡診断書を受け取り、死亡届の提出と火葬許可証の受け取りを代行してくれます。

火葬が終わると、火葬許可証に火葬済みの証印が押され、埋葬許可証として使うことになるため、葬儀が終わっても紛失しないように大切に保管しておきましょう。

優先順位の高い葬儀後の手続き

葬儀後に行う手続きの中でも、特に優先順位の高い手続きについてご紹介いたします。なお、市区町村役場や年金事務所など、一箇所で複数の手続きを同時に行うことができますので、なるべくまとめて一回で済ませられるよう、意識して準備を進めることが望ましいです。

1.すぐに行うべき葬儀後の手続き

1-1.年金の受給停止手続き

厚生年金を故人が受給していた場合は死亡後10日以内に、国民年金を受給していた場合は死亡後14日以内に、年金の受給停止手続きを行いましょう。年金の受給を停止しないと、本来受け取るべきではない年金を受け取ってしまうことになり、不正受給とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

ただし、被相続人がマイナンバーを登録している場合は、死亡届の提出時に自動で年金の受給停止の処理をしてもらえます。

1-2.住民票の世帯主の変更手続き

残された世帯員が2人以上おり、その中に15歳以上の世帯員が複数いる場合は、14日以内に住民票の世帯主の変更手続きが必要です。一方で、世帯員が1人しかいない場合や、残された世帯員が、15歳未満の子どもと親権者1人のみである場合は、次の世帯主になる人が明らかなので、世帯主の変更手続きは必要ありません。

なお、世帯主が死亡し、他に世帯員がいない場合には、死亡届の提出を受けて市区町村長が職権で住民票を消除(抹消)する手続きが取られます。

1-3.健康健康保険の資格喪失手続き

日本ではすべての国民がいずれかの公的医療保険制度に加入しているため、加入者が亡くなった場合には保険の資格を喪失するための手続きが必要となります。そして、加入している保険が国民健康保険か、勤務先の社会保険かによって手続きの期限が異なるため、注意してください。

国民健康保険の場合、手続きは死亡後14日以内に行います。勤務先の社会保険の場合はこれよりも期限が短く、死亡後5日以内とされています。

なお、亡くなった人の家族が健康保険の扶養に入っていた場合は、亡くなった日の翌日から資格を喪失します。そのため、新たに国民健康保険への加入手続きを行うか、他の家族の扶養になる手続きをしましょう。

1-4.介護保険の資格喪失手続き

故人が65歳以上であったり、40歳以上65歳未満で要介護・要支援の認定を受けていた場合、故人の介護保険被保険者証を死亡後14日以内に返却する必要があります。

1-5.限定承認や相続放棄の検討

遺産相続手続きは以下の流れで進めますが、限定承認や相続放棄の検討には「相続開始を知った日から3ヶ月」という期限があるため、前提となる遺言書の確認や検認手続き、相続人と相続財産の調査も、3ヶ月の期限に間に合うように進めなければなりません。

  1. 遺言書の有無の確認と検認手続き
  2. 相続人と相続財産の調査
  3. 限定承認や相続放棄の検討
  4. 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

その後の相続手続きでは、戸籍謄本などで相続人を証明する必要があります。また、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があるため、故人の葬儀後、なるべく早めに戸籍謄本等の収集を始めるようにしましょう。

1-6.所得税の準確定申告

さて、この手続きは忘れられがちなのですが、被相続人が生前に確定申告をすべき所得があった場合は、相続が開始されたことを知った日の翌日から4ヶ月以内に、被相続人の亡くなった年の所得に対する確定申告を相続人が行う必要があります準確定申告)。期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などの追加の税金がかかることがあるので注意が必要です。

被相続人が以下のような場合には準確定申告が必要となりますので、生前に所得があるか、不動産を管理していたかなど、注意しましょう。

  • 事業所得がある場合(事業主やフリーランスなど)
  • 不動産所得がある場合
  • 年収が2,000万円以上の場合
  • 2箇所以上の会社から収入がある場合
  • 公的年金を年間400万円以上受け取っていた場合
  • 給与や退職金以外で年間20万円以上の収入があった場合
  • 生命保険の満期金や一時金を受け取った人

1-7.相続税の申告・納税

相続した遺産の総額が基礎控除額(「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」)を超える場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。もし遺産分割協議がまとまっていない場合は、暫定的に、法定相続分による金額で申告・納税することになります。

10ヶ月という期限は意外に長く感じるかもしれませんが、遺産分割やその後の銀行等での手続きを進めていると、あっという間に期限が経過してしまいます。申告期限を過ぎてしまったり、実際に受け取った相続財産の額より少なく申告したりすると、本来の税金に加えて加算税や延滞税が課されることがあるため、注意しましょう。

2.葬儀後になるべく早くすべき手続き

続いては、比較的期限に余裕があるものの、葬儀後になるべく早くすべき手続きをご紹介いたします。

2-1.葬祭費・埋葬料(埋葬費)の請求

葬祭費と埋葬料(埋葬費)は、葬儀費用の補助制度として国民健康保険協会などから支給されるものです。国民健康保険に加入している場合に支給されるのは「葬祭費」で、会社員が健康保険や協会けんぽに加入している場合は、「埋葬料(埋葬費)」や「家族埋葬料」が支給されます。

葬儀費や埋葬費の請求期限は、「葬儀(埋葬)の日の翌日から2年以内」とされています。一方で、埋葬料の請求期限は「死亡日の翌日から2年以内」となっており、若干の違いがあるため注意が必要です。

2-2.国民年金の一時死亡金請求

国民年金の死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者または任意加入被保険者として保険料を納めた期間が36ヶ月以上ある人が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受給せずに亡くなった場合に、その人と生計を共にしていた遺族に支給される金銭です。

請求期限は死亡日の翌日から2年以内と定められており、該当する場合には「国民年金死亡一時金請求書」を市区町村の役場や年金事務所(年金相談センター)に提出して手続きを行います。

ただし、故人が国民年金の第1号被保険者以外であったり、納付期間が36ヶ月未満であったり、遺族が遺族基礎年金を受け取る場合は、この一時金の受給対象から外れます。

2-3.不動産の名義変更手続き

不動産を取得した相続人は、不動産を取得したことを知ってから3年以内に、不動産の名義変更手続き(相続登記)をしなければなりません。相続登記は2024年4月1日より義務化され、不動産を取得したことを知ってから3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料対象となることがあります。

相続登記の手続きは何かと煩雑なことが多いですので、相続手続きの専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

3.葬儀後落ち着いてからする手続き

続いては、期限があるものの、比較的余裕があるため、落ち着いて行える手続きをご紹介いたします。

3-1.遺族年金の請求

亡くなった人が家族の生計を支えていた場合、遺族は「遺族年金」を受給する権利があります。遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があり、どちらか一方または両方を受け取ることが可能です。

「遺族基礎年金」は、亡くなった人の遺族に18歳未満の子どもがいる場合、または20歳未満で障害のある子どもがいる場合に支給されます(国民年金法第37条)。ただし、子どもがいない配偶者には支給されません。

「遺族厚生年金」は、亡くなった人が厚生年金に加入していた場合に、遺族に支給される年金です。受給対象となる人は遺族基礎年金の場合よりも広く、「① 配偶者・子、② 父母、③ 孫、④ 祖父母」の順番で受給対象になることができます(厚生年金保険法第59条)。

3-2.未支給年金の請求

亡くなった親が国民年金や厚生年金などの公的年金の受給資格者であった場合、遺族は「支給すべき事由が生じた日(死亡日等)から5年/受給権者の年金支払日の翌月の初日からから5年」以内に、未支給年金の請求を行うことができます。公的年金は過去2ヶ月分まとめて支給される仕組みのため、亡くなった直後にはまだ受け取っていない年金が発生している可能性があるのです。

また、故人が年金を受給する資格がありながら受け取っていなかった場合の未受給分も、未支給年金として請求することができます。この請求は、亡くなった年金受給者と生計を共にしていた3親等内の親族が行うことができます。未支給年金は、亡くなった年金受給者と生計を共にしていた3親等内の親族に限られ、「① 配偶者、② 子、③ 父母、④ 孫、⑤ 祖父母、⑥ 兄弟姉妹、⑦ その他親族」の順番で請求権者になることが可能です。

3-3.寡婦年金の請求(5年以内)

寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者として10年以上の保険料納付済期間等を有する夫が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けずに死亡した場合に、10年以上婚姻関係のあった妻に対して、60歳から65歳になるまで支給される年金です。寡婦年金の受給対象となる「10年以上婚姻関係のあった妻」には、内縁関係の妻も含まれます。

手続きの期限は死亡日の翌日から5年以内と余裕がありますが、受給者となる妻の年齢要件として「65歳未満であること」が定められているため、夫の死亡時すでに妻が60歳に達している場合は、なるべく早めに請求をしましょう。

ところで、公的年金制度には「1人1年金の原則」が存在します。一人の受給権者に複数の年金受給権が発生した場合には、原則としていずれか一つの給付を選択し、他方の支給を停止する、という調整が行われるのです。

この原則のとおり、遺族基礎年金と寡婦年金の両方を同時に受け取ることはできませんが、受給時期が異なれば併給することが可能です。

併給が想定されるケースとしては、子どもが18歳未満の間は遺族基礎年金を受け取り、その後子どもが成人し遺族基礎年金の支給が終了してから、妻が60歳から65歳まで寡婦年金を受け取る、といったことが考えられます。

一方で、遺族厚生年金と寡婦年金の場合、同時に併給することも、時期をずらして併給することもできません。そのため、厚生年金加入中や老齢厚生年金を受け取っていた人が亡くなった場合は、遺族厚生年金と寡婦年金のどちらを受け取るかを選択する必要があります。

4.優先順位は低いがなるべく早めにすべき手続き

以下のような公共料金等の名義変更や契約などは、明確な期限がないため全体の優先順位は低いです。ですが、解約手続きが遅れることで、支払わなくていい料金を余分に支払ってしまったりと、不利益を被る可能性がありますので、なるべく早めに着手するようにしましょう。

優先順位は低いがなるべく早めにすべき手続き

  1. クレジットカードの利用停止手続き
  2. 運転免許証の返納
  3. パスポートの失効手続き
  4. 電気、ガス、水道など公共料金の名義変更・解約
  5. 携帯電話やインターネット等通信サービスの解約
  6. サブスクリプション型サービスの名義変更・契約停止
  7. 団体信用生命保険の請求手続き

死亡後の銀行手続きの優先順位は遺産分割の後?

ところで、これまでに見た手続きの中に、銀行での手続きがないことを意外に思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。遺産相続というと故人の預貯金などを相続人間で分配するというイメージが一般的ですから、銀行での手続きが最優先と思われるかもしれません。ですが、銀行での預貯金の解約手続きには法律上明確な期限はありませんので、期限の近い他の手続きから先に進め、ある程度落ち着いたタイミングで銀行での手続きに着手することが一般的です。

そもそも、預貯金は遺産分割の対象となる財産に含まれるため、遺産分割が終了するまでは共同相続人が単独で払戻しすることができないのが原則です(最高裁判所平成28年12月19日決定)。そのため、銀行口座の解約や名義変更といった手続きは、通常は遺産分割の終わった後に行われます。

ただし、葬儀費用等の急を要する出費を被相続人の預貯金でまかなうために、葬儀の実施前や実施後に、遺産分割を待たずに預金を引き出すことができるよう、2019年施行の改正民法により「遺産分割前の払戻し制度」が創設されました。

この制度は、遺産分割協議が成立する前であっても、葬儀費用や生活費などの資金が必要な場合に、相続人が単独で預貯金の一部を払い戻すことができるという制度です。払戻しの方法には、「家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関の窓口で直接請求する方法(民法第909条の2)」と、「家庭裁判所の判断(仮分割の仮処分)を経てから払い戻す方法(家事事件手続法第200条3項)」との2つがあります。

(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
民法第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

家事事件手続法第200条3項 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

家庭裁判所の判断を経ない場合の払戻しの金額は、口座ごとに「相続開始時の預貯金債権の額 × 1/3 × 払戻しを求める相続人の法定相続分」かつ、「同一の金融機関からの払戻しは上限150万円まで」です。一方で、家庭裁判所の判断を経る場合は、必要に応じた金額が決定されます。

そのため、遺産相続が始まったら、期限の差し迫った手続きを先に進め、落ち着いてから銀行手続きに着手することを基本としつつも、葬儀や生活費に充てる資金が必要、といった場合には遺産分割の終了を待たずに、払戻し手続きをすることになるかと思います。

なお、一部の相続人が勝手に預金を引き出すことのないよう、金融機関は預金者の死亡を知ると、ただちにその銀行口座を凍結します。ですので、金融機関に被相続人の死亡の連絡が遅れると、口座が凍結されない「未凍結」の状態になってしまいます。

銀行などの金融機関は、被相続人の親族や関係者からの連絡や、成年後見人による通知、相続人による残高証明書の発行請求、新聞の訃報欄等によって、契約者の死亡を知ることになります。未凍結の期間があると、遺産分割前に預金を引き出されてしまうリスクが高くなってしまいますので、銀行手続きは遺産分割の完了後にするとしても、口座は死亡後なるべく早めに凍結してもらうようにしましょう。

 

死亡後の手続きの優先順位に関するQ&A

Q1.死後の手続きには優先順位が存在するのでしょうか?

A:死後の手続きについて、明確な優先順位が法律で定められているわけではありません。ですが、それぞれ期限が定められておりますので、期限の近いものから優先的に行う必要があります。特に、相続に関する手続きは、遅れることで遺産分割に大きな影響を及ぼす可能性があるため、迅速に対応することが重要です。

葬儀後の手続きが遅れると、たとえば相続放棄ができずにマイナスの財産を相続することになってしまったり、給付金の申請期限を過ぎて受け取れなくなってしまったりするリスクもあります。効率的に手続きを進めるためには、一覧表を活用して一つずつ進めることをおすすめします。

Q2.必ずこの一覧表の順番で進める必要がありますか?

A:必ずしも本記事でご紹介した一覧表の順番どおりに進める必要はありません。実際には、死亡届の提出や葬儀の準備など、亡くなった直後に必要な手続きを先に進めつつ、期限が近いものから優先して対応します。余裕があれば、いくつかの手続きを同時に進めていくと効率的です。特に、相続放棄・限定承認の選択は原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内、相続税の申告・納付は10ヶ月以内、不動産の相続登記は対象不動産の取得を知った日から3年以内に行う必要があります。そのため、一覧表は「手続きを進める順番の目安」として活用していただき、期限内に適切に対応していただければと思います。

Q3.期限のない手続きはいつやっても大丈夫ですか?

A:期限がない手続きであっても、いつまでも放置してよいわけではありません。たとえば、相続人調査や相続財産調査、遺産分割協議が遅れると、預貯金の払い戻しや不動産の名義変更、相続税申告の準備が期限ぎりぎりになってしまいます。また、クレジットカードや携帯電話、公共料金、サブスクリプションサービスなどの解約が遅れると、不要な料金が発生し続ける可能性もあります。期限のない手続きでも、葬儀後できるだけ早めに着手し、優先順位をつけて進めるのが安心です。

まとめ

故人が亡くなってからしばらくは、遺族にとって精神的にもつらい日々が続くかと思います。ですが、期限が定められている手続きも多いため、死亡後なるべく早く着手し、優先順位を意識して進めることが重要です。

この記事では、葬儀前と葬儀後に着手すべき手続きについて、全体の優先順位と、優先順位の高い手続きの概要を解説させていただきました。

手続きをスムーズに進めるためには、専門家に一任するのも有効です。特に、遺産相続は煩雑な手続きも多いため、法律の専門家である弁護士にご相談いただくことをおすすめいたします。

弁護士法人あおい法律事務所では、弁護士による法律相談を初回無料で行っております。お電話によるご相談もお受けしておりますので、ぜひお気軽にご利用いただければと思います。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。