相続登記にかかる登録免許税とは?計算方法や免税処置についても解説

相続手続き

更新日 2024.07.29

投稿日 2024.07.29

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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相続登記は、被相続人の財産として家や土地などを受け継ぐ大切な手続きです。しかし、多くの人が不動産の名義変更に伴う手続きに不慣れであり、特に税金の問題に頭を悩ませることが少なくありません。「相続税」に加えて「登録免許税」という、あまり聞き慣れない税金の存在もあります。この登録免許税とは一体何なのか、また相続登記の手続きに必要なこの税金はどのように計算されるのでしょうか?また、支払いを軽減するための免税措置は存在するのか?

この記事では、これらの疑問に対して詳しく解説し、相続登記における登録免許税の計算方法や免税措置についても紹介します。相続登記に必要な登録免許税について、知っておくべき基本情報をわかりやすく解説いたしますので、ぜひこの機会に把握してみてください。

目次

相続した不動産の登記には登録免許税がかかる

そもそも相続登記とは

相続登記とは、被相続人が所有していた不動産(土地や建物など)を相続人に名義変更するための公的な手続きです。この手続きは正式に「相続による所有権登記」と称されており、相続人の所有権を法的に確定させることで、第三者に対してその権利関係を明確に示す役割を果たします。これにより、不動産の売却や抵当権の設定など、さまざまな法律行為が可能となります。

相続登記を行わない場合、不動産の正式な所有者が不明確となり、将来的に売却や資産の管理を行う上で大きな障害となり得ます。これを防ぐため、相続人は不動産を相続したことを知った日から、適切な手続きを取ることが求められます。

2024年4月1日からは、相続登記の義務化が施行されます。新しい法律により、不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を完了させなければならなくなります。これを怠ると、10万円以下の過料が課される可能性があります。この義務化は、不動産の所有権関係をより透明にし、法的トラブルの予防を図ることを目的としています。

登録免許税とは登記申請の際に課税される税金のこと

登録免許税は、不動産やその他の財産の登記を行う際に必要とされる税金です。この税金は、不動産の登記、船舶や航空機の登録、さらには会社の設立や人の資格などに関する登記にも適用されます。つまり、様々な種類の登記や届出が行われる際に、国に対して支払う必要がある費用の一部とされています。

相続登記の登録免許税の税率│遺贈の場合は税率が高くなる

特に相続登記の場合、登録免許税は不動産の価値に基づいて計算されます。具体的には、不動産の固定資産税評価額に基づき、その0.4%の税率が適用されます。これは、相続によって不動産を取得した相続人が負担する税金です。一方、遺言により不動産を獲得する相続人以外の人が登記を行う場合には、税率は2%に上昇します。これにより、不動産の登記に関連する税金の負担はケースによって大きく異なることがあります。

このように、登録免許税は不動産の登記のみならず、多岐にわたる登記の際に課される重要な税金であり、その具体的な税率は登記の種類や状況によって異なるため、登記を行う際には事前にその詳細を理解しておくことが重要です。

相続登記の登録免許税の計算方法

①相続した不動産の固定資産税評価額を調べる

相続登記における登録免許税を正確に計算するためには、まず相続された不動産の固定資産税評価額を把握することが必要です。この評価額は、不動産の市場価値に基づいて各自治体によって定められるため、税金の計算の基礎となります。相続登記の際の登録免許税は、この評価額に0.4%の税率を乗じて求められます。

固定資産税評価額の確認方法は主に以下の二つです。

  • 課税明細書の確認: 課税明細書は、固定資産税の納税通知書に添付されている書類で、毎年4月から5月にかけて送付されます。この明細書には不動産の評価額が記載されており、これをもって税額を算出することができます。
  • 固定資産評価証明書の取得: 故人宛の課税明細書が見つからない場合や、最新の評価額を確認したい場合は、固定資産評価証明書を入手する必要があります。この証明書は、不動産の所在地を管轄する市町村役場や、市税事務所で発行されます。証明書の発行には、故人の戸籍謄本や請求者の戸籍謄本など、関連する戸籍の提出が必要です。通常、証明書一枚につき300円程度の費用がかかります。

これらの書類を用意し、正確な固定資産税評価額を確認することで、相続登記における登録免許税の正確な計算が可能となります。最新の情報を用いることが重要ですので、最新年度の評価証明書の取得を忘れないようにしましょう。

②不動産の固定資産税評価額(課税価格)を確定する

課税価格の確定方法: 課税価格は、固定資産評価証明書に記載された不動産の評価額をもとに決定されます。ここでのポイントは、評価額から1,000円未満を切り捨てることです。たとえば、評価額が5,432,100円の場合、1,000円未満(100円)を切り捨てて、課税価格は5,432,000円となります。

複数不動産の課税価格の計算: もし同一の申請で複数の不動産を登記する場合は、それぞれの不動産の評価額を合計し、合計額から1,000円未満を切り捨てた金額が課税価格となります。例えば、評価額が5,432,100円と1,234,500円の不動産を登記する場合、合計6,666,600円から1,000円未満を切り捨てて、課税価格は6,666,000円と計算されます。

共有不動産の課税価格の決定: 不動産が共有されている場合は、移転される持分に相当する評価額から1,000円未満を切り捨てて課税価格を定めます。例として、5,432,100円の不動産の3/4の持分を移転する場合、評価額は4,074,075円となり、これから1,000円未満を切り捨てた4,074,000円が課税価格です。

最小課税価格: 評価額が1,000円未満の非常に低価格の不動産については、課税価格は1,000円と定められています。これは登録免許税の最低課税基準を示しており、いかなる場合でもこの金額が最低限課される税額の基準となります。

③不動産の固定資産税評価額(課税価格)×0.4%

このようにして得られた課税価格に0.4%の税率を適用し、最終的な登録免許税を算出します。

登録免許税=不動産の固定資産税評価額(課税価格)×税率0.4%

計算された税額から100円未満は切り捨てることが法令により定められていますので、この点も注意が必要です。

相続登記の登録免許税の計算例

ここでは、登録免許税の計算方法を具体例を用いて解説します。

計算例①戸建て(建物と土地)を相続する場合

例えば、建物と土地をそれぞれ相続した場合の計算を行います。建物の課税価格が1,234,500円、土地の課税価格が5,432,100円だとします。これらの価格を合計すると、課税価格の総額は6,666,600円になります。千円未満を切り捨てたの金額に0.4%の税率を適用すると、登録免許税の計算は以下のようになります。

6,666,000円×0.004=26,664円

この場合、100円未満(この例では64円)は切り捨てるため、最終的な登録免許税は26,600円となります。

計算例②共有不動産を相続する場合│評価額に持分割合を掛ける

次に、他の人と共有する不動産を相続するケースを考えます。同じ建物と土地を例にとり、建物の4分の1、土地の4分の3を相続する場合、それぞれの課税価格は次の通り計算されます。

建物の課税価格:1,234,500円×1/4=308,625円

土地の課税価格:5,432,100円×3/4=4,074,075円

これらの合計は4,382,700円です。この合計に対して0.4%の税率を適用すると、登録免許税は:

4,382,700円×0.004=17,530.8円

100円未満を切り捨てるため、最終的な登録免許税は17,500円となります。

計算例③マンションを相続する場合│建物専有部分の評価額と敷地に対する持分の評価額を合算

マンションの所有権は、建物の専有部分と土地の持分割合で構成されます。マンションの専有部分の評価額と、敷地に対する持分の評価額をそれぞれ正確に把握することが重要です。以下にマンションの相続における登録免許税の計算過程を詳細に説明します。

①土地地の評価額の算出

 マンションの敷地全体の評価額は54,321,000円です。敷地権割合が10,000分の543であるため、この割合を用いて個々の敷地の評価額を計算します。

54,321,000円×543/10,000=2,949,630円

この計算により、敷地に関する評価額が2,949,630円となります。

②建物の評価額の加算

建物(マンションの専有部分)の評価額は4,321,000円です。この評価額を土地の評価額と合算します。 

2,949,630円+4,321,000円=7,270,630円

③課税標準額の算出

合計評価額から1,000円未満を切り捨て、課税標準額を算出します。

7,270,630円→7,270,000円

④登録免許税の計算

課税標準額に0.4%の税率を適用し、最終的な登録免許税を求めます。 

7,270,000円×0.004=29,080円

100円未満を切り捨てると、登録免許税は29,000円となります。

相続登記の登録免許税が免除される2つのケース

下記のどちらかに当てはまる場合、相続登記の登録免許税が免税になります。

  1. 相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合
  2. 不動産の評価額が100万円以下の土地の場合  

(相続に係る所有権の移転登記等の免税)
第八十四条の二の三 個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成三十年四月一日から令和七年三月三十一日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法の施行の日から令和七年三月三十一日までの間に、土地について所有権の保存の登記(不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)第二条第十号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限る。)又は相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額が百万円以下であるときは、これらの登記については、登録免許税を課さない。
(引用:租税特別措置法84条の2の3

最近の税制改正により、これらの免税措置の適用期限が令和7年3月31日までに延長されています。この期限内に相続登記を完了させることで、免税の恩恵を受けることが可能です。

なお、登録免許税は土地・建物にかかりますが、免税対象になるのは土地だけである点には注意しましょう。

登録免許税の免税措置について詳しくは、法務局ホームページ「相続登記の登録免許税の免税措置について」を参照してください。以下では、2つのケースについて簡単に解説いたします。

①相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

日本の法律では、個人が相続によって土地の所有権を取得し、その登記を行わないうちに亡くなった場合に対して、特定の免税措置が設けられています。この免税措置は、平成30年4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に限り、適用されます。具体的には、相続により土地を取得した人がその土地の所有権移転登記を行わずに死亡した場合、その後の相続登記において登録免許税が免除されるというものです。

たとえば、被相続人Aから相続人Bへと土地が相続されたが、Bがその登記を行わないまま亡くなった場合、次の相続人がBを登記名義人としてその土地の登記を行う際には、登録免許税が課されません。この免税は、Bがその土地を第三者に売却していた場合でも、初めの相続登記に関する税金は免除されるため、その適用範囲は広いと言えます。

相続登記の登録免許税の免税措置について

(出典:法務局ホームページ「相続登記の登録免許税の免税措置について」)

②不動産の評価額が100万円以下の土地の場合

日本の税法では、特定の小規模な土地の相続に際して登録免許税の免除措置が設けられています。この措置は、不動産の評価額が100万円以下の土地に関して適用され、相続による所有権の移転登記や所有権の保存登記が対象となります。具体的には、平成30年11月15日から令和7年(2025年)3月31日までの間、このような土地に関する登記が免税とされています。

この免税措置は、土地の小規模性を考慮した経済的負担の軽減を目的としており、特に相続人にとっては大きな支援となります。評価額が100万円以下の土地の場合、通常は土地の価額に対して0.4%の税率が適用されるところ、免税措置によりその負担が完全に免除されます。

免税を受けるには申請書への記載が必要│「租税特別措置法第84条の2の3第〇項により非課税」

この免税を適用するためには、相続登記申請書に「租税特別措置法第84条の2の3第〇項により非課税」と明記する必要があります。この記載がない場合は免税措置を受けることができません。したがって、相続登記を行う際には、この条文を正確に申請書に記載し、適切な手続きを行うことが求められます。

登記申請書の書式や記載例は、法務局ホームページ「相続登記の登録免許税の免税措置について」においてケース別に掲載されていますので、そちらを参照してください。

相続登記の登録免許税の納付方法

登録免許税の納税期限は?│2024年4月から相続登記が義務化

相続登記の登録免許税には、厳密な意味での納税期限はありません。しかし、実質的には、固定資産評価証明書が発行された年度内(4月1日~翌年3月31日まで)に納付する必要があります

これは、登録免許税の額が固定資産評価証明書に記載された不動産の評価額に基づいて算定されるためです。固定資産評価証明書の発行年度を過ぎると、評価額が変わってしまう可能性があり、本来支払うべきではない金額を納付することになってしまうためです。

なお、2024年4月1日からは相続登記が義務化されるため、3年以内に相続登記と登録免許税の納税が必要となります。

納付の方法は以下の3種類です。

①金融機関等で現金で納付する

登録免許税の納付方法については、登録免許税法に基づき、主に金融機関を通じて現金での納付が行われます(登録免許税法21条)。

具体的な手順は以下のとおりです。

  • 管轄の法務局で「登録免許税納付書」をもらう。
  • 記載事項を記入し、金融機関等で登録免許税の額を納付する。
  • 納付書に領収印を押してもらう。
  • 領収書を「登録免許税納付書」に貼り付け、相続登記申請書に添付する。
  • 相続登記申請書を法務局に提出する。

②収入印紙で納付する

登録免許税が3万円以下の場合、金融機関での現金納付以外にも、収入印紙を使用して登記申請書に直接納付する方法が選択できます。この方法は登録免許税法に基づいており、収入印紙は郵便局や大きな登記所内にある印紙売場で購入可能です。

申請書に収入印紙を貼り付ける際、申請書自体に余白がない場合は、収入印紙を別の用紙に貼り付けてから、その用紙を申請書に綴じ込むことが求められます。その際、用紙の綴り目には申請人が契印(自分の印鑑を押すこと)をして、申請書との一体性を保証します。

③オンラインで納付する

忙しい方やインターネットを通じた手続きに慣れている方には、登録免許税のオンライン納付がおすすめです。この方法では、インターネットバンキング、モバイルバンキング、またはATMを利用して税金を電子的に納付することができます。ただし、オンラインで納付を行う前に、使用する金融機関が登録免許税の電子納付に対応しているかを確認し、必要な手続きを済ませておく必要があります。

また、登記手続き自体もオンラインで行えるようになってきています。法務省ホームページ「不動産登記の電子申請(オンライン申請)について」では、オンラインでの登記や税金の納付方法についての情報が提供されているので参照ください。

相続登記の登録免許税に関するQ&A

Q1: 相続登記の際に登録免許税が免税される条件は何ですか?

A1: 相続登記で登録免許税が免税されるのは主に次の2つの条件に当てはまる場合です。

  1. 相続人が相続登記をする前に亡くなった場合:例えば、ある人が不動産を相続したが、その相続登記を行う前に亡くなった場合、その人の相続登記にかかる登録免許税は免除されます。次の相続人がその不動産を引き継ぐ際の登記についてのみ登録免許税が発生します。
  2. 相続する土地の価額が100万円以下の場合:この条件下では、土地の価額が100万円以下であれば登録免許税が免除されます。この価額は固定資産税評価額を基に決定され、毎年4月から6月に送付される固定資産税課税明細書に記載されています。

Q2: 登録免許税の免税の適用期間はいつまでですか?

A2: 免税措置の適用期間は令和4年度の税制改正により延長され、令和7年3月31日までとされています。この期間内に相続登記を行う場合、上記の条件に該当すると免税の適用を受けることができます。

Q3: 相続登記に必要な書類の発行手数料はどれくらいかかりますか?

A3: 相続登記に必要な書類発行の手数料は、通常、1万円から2万円程度が目安となります。この費用には戸籍謄本、登記事項証明書、印鑑証明書などの取得費用が含まれています。ただし、複雑なケースや遠方の役所から書類を取り寄せる必要がある場合は、郵送費や通信費も考慮に入れる必要があり、費用はさらに増加する可能性があります。

Q4: 相続登記を行う際の司法書士の報酬はどれくらいですか?

A4: 司法書士の報酬は、その作業の内容や難易度によって異なりますが、一般的には約10万円前後が相場とされています。

しかし、相続物件の数や地域、相続関係者の数や相続関係の複雑さによって報酬は変動するため、特に複雑な相続ケースや多くの物件が関わる場合は、それ以上の報酬がかかることもあります。司法書士には実費と報酬の二つの部分があり、実費は必要書類の取得費用や登録免許税などの実際に発生するコストを指します。

まとめ

相続が発生し、不動産の所有権が移転する際には、相続登記を行い、それに伴い登録免許税を納付する必要があります。この登録免許税の計算方法は、不動産の評価額や相続の状況によって異なり、一概には説明が難しいこともあります。また、免税措置が適用される場合もあるため、どのように税額を算出し、どのように納付するかは非常に重要です。

この記事では、相続登記にかかる登録免許税の基本的な計算方法や、適用される免税措置について解説しましたが、実際の手続きでは多くの変数が関係するため、専門家としてのアドバイスが不可欠です。正確な税額を算出し、適切な手続きを進めるためにも、法律の専門家や税理士といった専門家への相談をおすすめします。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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