夫死亡で70歳以上の高齢者は遺族年金をもらえる?いくらもらえる?

相続手続き

更新日 2024.10.01

投稿日 2024.07.29

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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夫死亡後、70歳以上の方が遺族年金を受け取れるかどうか、またその金額について不安を感じている方も多いのではないでしょうか。遺族年金は一定の条件を満たすことで、70歳以上でも受け取ることが可能です。

しかし、その受給額は個々の状況によって異なり、計算方法も複雑なため、しっかりと確認することが重要です。この記事では、夫死亡により70歳以上の方が受け取ることができる遺族年金の概要について説明し、「遺族基礎年金」や「遺族厚生年金」の具体的な計算方法についても触れます。

夫死亡により受け取れる遺族年金についての疑問や不安を解消するために、ぜひ最後までお読みください。

目次

遺族年金は夫死亡時に70歳以上でも受け取ることができる

遺族年金は、夫死亡時に70歳以上でも一定の要件を満たすことで受給可能です。夫婦共に70歳以上の場合や、夫婦のうち亡くなった方だけが70歳以上の場合、または遺族となった方が70歳以上の場合でも、要件さえクリアすれば遺族年金を受け取ることができます。遺族年金の受給要件は、69歳であっても70歳以上であっても変わることはありません。

遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の二種類があります。遺族基礎年金は、亡くなった人やその配偶者の年齢に関係なく、子供が18歳になる年度末の3月31日までの要件を満たせば受給できます。一方、遺族厚生年金は、受給資格期間が25年以上あることなどの要件を満たせば受け取ることができます。

70歳以上でも遺族年金を受給できる条件や仕組みについて、さらに具体的に解説します。

また遺族年金とはについては、以下の記事でも詳しく解説しています。

遺族年金を受給するための要件│70歳以上、80歳以上、何歳でも要件は同じ

70歳以上でも遺族年金を受給するための要件は同じであり、以下のような要件を満たすことで受給が可能となります。遺族基礎年金と遺族厚生年金にわけて、受給要件を解説します。

遺族基礎年金を受給する場合│亡くなった人が国民年金の被保険者のケース

遺族基礎年金は、国民年金に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。遺族基礎年金を受け取るには、亡くなった人と遺族の両方が以下のような要件を満たさなければなりません。

亡くなった人の要件

遺族基礎年金を受け取るには、亡くなった方が以下のいずれかの要件を満たしている必要があります。

1.国民年金の被保険者である間に死亡した場合
2.国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方が日本国内に住所を有している間に死亡した場合
3.老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡した場合
4.老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡した場合
(参照:日本年金機構HP「遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)」

1と2については、亡くなった日の前日時点で保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上でなければなりません。この保険料納付済期間には、保険料免除期間も含まれます。ただし、令和8年3月末日までに亡くなった65歳未満の方に関しては、亡くなった日の前日から数えて前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければ問題ありません。

3と4については、保険料納付済期間、保険料免除期間、合算対象期間の期間の合計が25年以上必要です。

遺族の要件

子どもがいる配偶者または子ども自身が受給対象です。ただし、同時に両方が受給することはできず、配偶者が受給する場合は子どもは受給できません。ここでいう「子ども」とは、18歳に達する年度の3月31日までの子どもを指します。ただし、障害等級1級または2級に認定され、独身である場合は、20歳まで受給が可能です。

  1. 子のある配偶者
  2. 子(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)

受給対象者は、故人によって生計を維持されていたことが必要です。この「生計を維持されていた」とは、故人と生計を同一にしていたことを指し、具体的には以下の条件を満たす必要があります。

  • 生計を同じくしていること:同居していることまたは、別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  • 収入要件:前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

同居している必要はなく、単身赴任や子どもの下宿などで別居している場合でも対象となります。また、内縁関係にある場合でも、事実上の婚姻関係があり、生計が維持されていることが確認できれば受給可能です。

遺族基礎年金について詳しくは下記記事を参照してください。

遺族厚生年金を受給する場合│亡くなった人が厚生年金の被保険者のケース

遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。遺族厚生年金を受け取るには、亡くなった人と遺族の両方が以下のような要件を満たさなければなりません。

亡くなった人の要件

遺族厚生年金を受けるためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき
引用:日本年金機構HP「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

ただし、1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

遺族の要件

遺族厚生年金は、死亡した人によって生計を維持されていた家族が受給することができます。

「生計を維持されていた」とは、故人と生計を同一にしていたことを指し、具体的には以下の条件を満たす必要があります。

  • 生計を同じくしていること:同居していることまたは、別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  • 収入要件:前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

また、受給できる人によって要件がことなります。具体的には以下の通りです。

受給対象者

要件

年齢要件なし。ただし、30歳未満で子どもがいない場合は支給期間は5年間のみ。

子ども

18歳になる年度の末日まで。障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満。

55歳以上である場合。支給開始は60歳から。

父母

55歳以上である場合。支給開始は60歳から。

18歳になる年度の末日まで。障害等級1級または2級に該当する場合は20歳未満。

祖父母

55歳以上である場合。支給開始は60歳から。

遺族厚生年金について詳しくは下記記事を参照してください。

70歳以上の人は遺族年金を平均いくらもらえる?金額の計算方法

遺族年金を受給するための要件を満たせば、亡くなった人が70歳以上、80歳以上であっても、受給者が70歳以上であっても、遺族年金を受給できます。

そして、受給できる遺族年金の金額の計算方法は、70歳以上であっても70歳未満であっても何歳でも変わりません。

それでは、遺族年金の計算方法はどのようになっているのでしょうか。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給金額の計算方法は異なりますので、それぞれ詳しく解説します。

遺族基礎年金の受給金額の計算方法

遺族基礎年金は、子どもがいる配偶者が受け取る場合、次のように設定されています。

昭和31年4月2日以後生まれの方

年額816,000円 + 子の加算額

昭和31年4月1日以前生まれの方

年額813,700円 + 子の加算額

子どもの加算額は以下の通りです。

1人目および2人目の子ども

各234,800円

3人目以降の子ども

各78,300円

たとえば、昭和31年4月2日以後生まれの配偶者が2人の子どもと共に遺族基礎年金を受給する場合、816,000円の基本額に加えて、2人の子どもの加算額(234,800円×2)が加わり、総額1,285,600円となります。

【子のある配偶者の支給金額】

子どもの数

基本額

子ども加算額

合計

1人

816,000円

234,800円

1,050,800円

2人

816,000円

469,600円

1,285,600円

3人

816,000円

548,900円

1,363,900円

4人

816,000円

627,200円

1,443,200円

 

【子だけの支給金額】

子どもの数

基本額

子ども加算額

合計

1人

816,000円

816,000円

2人

816,000円

234,800円

1,050,800円

3人

816,000円

234,800円 + 78,300円

1,129,100円

子どもが1人の場合、基本額の816,000円が支給されます。2人の場合には、基本額816,000円に加え、2人目の子ども分として234,800円が加算され、合計で1,050,800円となります。3人目の場合は、さらに78,300円が加算され、合計で1,129,100円となります。3人目以降の子どもについても1人につき78,300円が加算されます。

子どもが複数いる場合、上記の合計額を年金を受ける子どもの人数で割った金額が、それぞれの子どもに支給される1人あたりの額となります。

支給額は毎年度、物価や賃金の変動により改定されるため、最新の情報を確認することが重要です。 ​

遺族厚生年金の受給金額の計算方法

基本的な計算方法

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間と報酬額に基づいて計算されます。具体的には、亡くなった方が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が遺族厚生年金として支給されます。計算方法は以下の通りです。

遺族厚生年金の年金額=亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4= (+)×3/4

A: 平成15年3月以前の加入期間

平均標準報酬月額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬月額×(7.125÷1,000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数

※平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の各月の標準報酬月額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

B: 平成15年4月以降の加入期間

こちらは平均標準報酬額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬額×(5.481÷1,000)×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の各月の標準報酬月額と標準賞与額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

​65歳以上の場合の特別な計算方法

65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある方が配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取る場合、以下の2つの額を比較し、高い方が支給されます。

  1. 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
    (詳細な計算方法は上記解説のとおり)
  2. ①の額の2/3 と ご本人の老齢厚生年金の額の1/2 の合計

 このように、70歳以上の遺族厚生年金の受給金額は、亡くなった方の年金額を基準にしつつ、ご本人の年金額も考慮して計算されます。具体的な計算方法や詳細については、年金事務所などの専門機関に相談することをお勧めします。

80歳以上の人の年金受給額はいくら?

80歳以上の遺族年金の受給額は、70歳以上の場合と基本的に変わりません。

ただし、80歳以上の方が亡くなった場合、生計を維持されていた未成年の子どもがいないことが多いため、その場合は遺族基礎年金を受け取ることができません。この場合、遺族が受給できるのは遺族厚生年金のみとなります。

遺族年金はいつまでもらえるの?

遺族基礎年金がもらえるのはいつまで?子どもが18歳に達する年度末まで

遺族基礎年金は、子どもが18歳に達する年度末まで支給されます。これにより、高校3年生の3月31日まで受給することができます。

子どもが障害等級2級以上に認定されている場合は、特例として20歳に達するまで受給することができます。

遺族厚生年金がもらえるのはいつまで?受給者の年齢や子どもの有無などによって異なる

遺族厚生年金の支給開始時期は、「年金加入者が死亡した日の翌月から」です。受給期間は、受給者の年齢や子どもの有無などの条件によって異なります。以下の表を使って、第1順位の配偶者と子のケースについて簡単に解説します。

受給者

支給開始時期

受給期間 

夫が亡くなった日の翌月から

・子どもがいる場合、または30歳以上の場合: 一生涯
・子どもがいない30歳未満の場合: 5年間

妻が亡くなった日の翌月から

・55歳以上の場合: 60歳から一生涯
(子どもがいる場合、55歳以上であれば60歳未満でも受給可)

親が亡くなった日の翌月から

・18歳に到達する年度末(3月31日)まで
(障害等級1級・2級の場合は20歳まで)

その他のケースについてなど、詳しくは下記記事を参照してください。

70歳以上ですでに老齢年金を受給している。遺族年金も受給できる?

60歳から64歳の間に遺族年金と老齢年金の両方の受給権が生じた場合、基本的に1人につき1つの年金しか受け取ることができません。そのため、どちらか一方を選択する必要があります。しかし、65歳以降は遺族年金と自身の年金を同時に受け取ることが可能になります。

ただし、この同時受給には一定の条件があり、これまでの働き方が影響します。

専業主婦や主夫、自営業者の場合

専業主婦や主夫、あるいは個人事業主として働いてきた場合、配偶者が会社員や公務員であったときには遺族厚生年金を受け取ることができます。また、遺族基礎年金と自分の老齢基礎年金のどちらかを選ぶことが可能です。

しかし、遺族基礎年金は子どもがいない妻には支給されません。65歳になる頃には子どもが成人しているため、この場合、自分の老齢基礎年金を選択することになります。結果として、65歳以降は「遺族厚生年金+老齢基礎年金」の組み合わせで年金を受け取ることができます。

共働きで会社員や公務員として働いた経験がある場合

会社員や公務員として少なくとも1ヶ月以上働いた経験がある場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取ることができます。さらに、亡くなった配偶者も会社員や公務員であった場合、年齢やその他の条件を満たせば遺族厚生年金も受け取ることができます。

この場合、65歳以降は「遺族厚生年金+老齢基礎年金+老齢厚生年金」の組み合わせで支給されます。

亡くなった配偶者が会社員や公務員ではない場合

亡くなった配偶者が自営業や個人事業主であり、会社員や公務員として働いた経験がない場合は、国民年金に加入していることになります。そのため、遺族厚生年金は受給できません。この場合、遺族厚生年金を前提とした上記のパターンには当てはまらず、両方の年金を同時に受給することはできません。

したがって、65歳以降でも「老齢基礎年金+自分の老齢厚生年金」のみを受け取ることになります。

受給金額など詳しくは、下記記事を参照してください。

遺族年金の請求手続き│70歳以上、80歳以上、何歳でも方法は同じ

遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取るためには、年金の請求手続きが必要です。以下にその手続き方法を説明します。年齢に関わらず、同じ方法で進めることができます。

①請求書を提出する

遺族年金を請求する際の書類の提出先は以下のとおりです。

  • 遺族基礎年金のみを請求する場合
    お住まいの市(区)役所または町村役場に提出してください。
  • 遺族厚生年金や共済組合等の加入期間がある場合
    お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出してください。これにより、共済組合等に加入していた期間の年金も請求することができます。

遺族年金の請求に必要な書類については、日本年金機構HP「遺族基礎年金を受けられるとき」または「遺族厚生年金を受けられるとき」に掲載されていますのでそちらを参照ください。

②年金証書を受け取る

遺族年金の請求書を提出すると、1か月程度で日本年金機構から「年金証書」「年金決定通知書」「年金を受給される皆様へ(パンフレット)」がご自宅に届きます。ただし、加入状況の確認が必要な場合は2か月程度かかることがあります。

また、共済組合等から年金を受け取る権利がある場合は、さらに時間がかかる場合もあります。

③振り込みが開始する│いつからもらえる?

年金証書がご自宅に届いてから約1~2か月後に、年金の振り込みが始まります。振り込みは、年金請求時に指定した口座へ偶数月に2か月分ずつ行われます。

このように、遺族年金の請求手続きは70歳以上、80歳以上といった年齢に関わらず同じ方法で行います。手続きの詳細については、適宜日本年金機構のホームページや年金事務所に確認してください。

遺族年金を受給している70歳以上の人も扶養に入ることができる

税制上の扶養

税制上の扶養に入るメリットは、子どもや孫といった扶養者の所得税や住民税を軽減できる点です。以下の要件を満たすことで、税制上の扶養に入ることができます。

  • 子どもや孫と生計を同一にしていること。
  • 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与収入の場合、年間103万円以下)。

これらの要件を満たせば、以下の控除額が適用されます。

税金

同居している場合

同居していない場合 

所得税

58万円

48万円

住民税

45万円

38万円

社会保険上の扶養

70歳以上の方が子どもや孫の社会保険上の扶養に入ることで、国民健康保険料を支払わずに済むメリットがあります。社会保険上の扶養に入るための要件は以下の通りです。

  • 遺族年金を含めた年収が180万円未満であること。
  • 同居している場合、子どもや孫の収入の2分の1未満であること(別居している場合は仕送り金額未満であること)。

70歳以上の高齢者の遺族年金に関するQ&A

Q: 70歳以上でも遺族年金は受け取れる?

A: はい、70歳以上でも遺族年金を受け取ることができます。遺族基礎年金や遺族厚生年金は、一定の要件を満たしていれば受給可能です。

遺族基礎年金: 遺族基礎年金は主に18歳未満の子どもがいる配偶者が対象です。ただし、子どもが成人している場合などは受給できません。

遺族厚生年金: 遺族厚生年金は、亡くなった方が会社員や公務員であり、厚生年金に加入していた場合に支給されます。70歳以上でも受給条件を満たせば、配偶者は受給可能です。具体的には、妻が夫の遺族厚生年金を受け取る場合、年齢制限はなく一生涯受給できます。一方、夫が妻の遺族厚生年金を受け取る場合、55歳以上であることが必要です。

Q: 遺族基礎年金を受給する場合、老齢年金と同時に受給することはできますか?

A: いいえ、遺族基礎年金を受給する場合は、老齢年金と一緒に受給することはできません。どちらか一方を選択する必要があります。自営業者の場合、通常は老齢基礎年金を受給しますが、この場合、遺族基礎年金の額が老齢基礎年金の額より大きくなることが多いため、遺族基礎年金を選択する方が有利です。一方、会社員や公務員だった方は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金も受給するため、多くのケースで老齢基礎年金と老齢厚生年金の合計額の方が大きくなり、老齢年金を選択する方が有利です。

Q: 遺族厚生年金を受給する場合、老齢年金と同時に受給することはできますか?

A: 遺族厚生年金と老齢年金を同時に受給できる場合とできない場合があります。遺族厚生年金と老齢基礎年金は同時に受給できますが、遺族厚生年金と特別支給の老齢厚生年金(60歳から64歳までの老齢厚生年金)は同時に受給できません。65歳以降に受給する老齢厚生年金は遺族厚生年金と一緒にもらうことができますが、自身の老齢厚生年金が優先され、差額分のみが遺族厚生年金として支給されます。具体的には、以下のいずれか大きい方の金額が遺族厚生年金の額となります。

  1. 亡くなった方の老齢厚生年金額の4分の3
  2. 亡くなった方の老齢厚生年金額の2分の1と自身の老齢厚生年金額の2分の1の合計

Q: 遺族年金がもらえない場合に利用できる他の制度はありますか?

A: はい、遺族年金がもらえない場合でも利用できる他の制度があります。具体的には、寡婦年金と死亡一時金の2つの制度が利用できる可能性があります。

寡婦年金: 寡婦年金は、亡くなった方の妻が遺族基礎年金を受給できない場合に支給される年金です。亡くなった日の前日時点で、亡くなった方が10年以上保険料を納めている場合に受給できます。対象は亡くなった方の妻のみであり、60〜65歳の間に支給されるため、70歳以上では受給できない点に注意が必要です。

死亡一時金: 死亡一時金は、遺族基礎年金を受給できない場合に受け取れる一時金です。亡くなった日の前日時点で、保険料を36月以上納めている場合に受給できます。寡婦年金とは異なり、亡くなった方と生計を共にしていた遺族であれば、子どもや孫、父母や兄弟姉妹なども対象となります。

まとめ

遺族年金は70歳以上でも一定の要件を満たせば受給可能です。遺族基礎年金と遺族厚生年金のどちらを受け取るか、または両方を受け取るかは、受給者の状況や生計の維持関係によります。具体的な受給額は、亡くなった方の年金加入期間や報酬額、受給者自身の年金受給状況によって異なります。

特に、専業主婦や個人事業主であった方と、会社員や公務員として働いた経験がある方では、受給額や受給条件に違いがあります。専業主婦の場合、遺族厚生年金と自身の老齢基礎年金の組み合わせが一般的ですが、会社員や公務員として働いた経験がある場合は、遺族厚生年金に加え、自身の老齢基礎年金と老齢厚生年金を受け取ることが可能です。

また、遺族年金の請求手続きには、市区町村役場や年金事務所での申請が必要であり、必要な書類も事前に確認して準備することが重要です。具体的な手続きや必要書類については、日本年金機構のホームページを参照するか、直接年金事務所で相談すると良いでしょう。

70歳以上の高齢者が遺族年金をいくら受け取れるかを正確に把握し、不安を解消するためには、早めに情報を収集し、必要な手続きを進めることが大切です。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。