遺族厚生年金とは?受給条件や支給金額がいくらか、手続きの概要を解説

相続手続き

更新日 2024.07.05

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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遺族厚生年金は、一家の大黒柱が亡くなった場合に残された家族の生活を支えるための制度です。遺族厚生年金を受給するには、亡くなった方の年金加入期間や報酬額などの要件を満たす必要があります。また、受給者となる遺族には、配偶者や子どもなどの一定の範囲が定められており、それぞれに支給条件が異なります。

支給額は、亡くなった方の年金加入期間や報酬額に基づいて計算され、生活の安定を図る重要な支えとなります。ただし、申請が遅れると受給権が消滅することもあるため、速やかに手続きを進めることが大切です。

この記事では、遺族厚生年金の基本的な概要、受給要件、支給額の計算方法、および申請手続きについて詳しく解説します。遺族厚生年金の手続き方法などに不安を感じている方にとって、役立つ情報をお伝えします。

目次

遺族厚生年金とは

一家の大黒柱が亡くなると、家族は深い悲しみに包まれますが、同時に経済的な不安も押し寄せてきます。そんな時、頼りになる制度の一つが「遺族厚生年金」です。遺族厚生年金は、会社員や公務員として厚生年金保険に加入していた方が亡くなった場合、その遺族に対して給付される公的年金です。

対象となる遺族は、厚生年金保険に加入していた被保険者の配偶者や子どもなどです。給付額は、被保険者の収入や加入期間に基づいて計算され、遺族の生活を経済的に支援します。たとえば、被保険者が高い収入を得ていた場合、その分、遺族に対する年金給付額も多くなります。

遺族厚生年金を受けるためには、いくつかの要件を満たす必要がありますが、その条件は決して厳しいものではありません。主な条件として、厚生年金の加入期間が一定期間以上であることや、受給者が被保険者によって生計を維持していたことが挙げられます。このため、多くの場合、厚生年金に加入していた方の遺族は支給対象となります。

総じて、遺族厚生年金は遺族の生活を支える重要な制度です。家族が安心して生活を続けられるようにするためにも、制度の概要や受給条件をしっかりと理解し、必要な手続きを迅速に行うことが大切です。

そもそも遺族年金とは

遺族年金は、厚生年金や国民年金に加入していた方が亡くなった場合、その方に生計を依存していた遺族が受け取れる年金制度です。この制度は、遺族が亡くなった方の収入を失っても生活を続けられるように支援する目的で設けられています。

ただし、遺族であれば誰でも受け取れるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。

「生計を維持されている」とは、原則次の要件をいずれも満たす場合をいいます。
1.生計を同じくしていること。(同居していること。別居していても、仕送りをしている、健康保険の扶養親族である等の事項があれば認められます。)
2.収入要件を満たしていること。(前年の収入が850万円未満であること。または所得が655万5千円未満であること。)
引用:日本年金機構HP「生計維持

まず、受給対象者は、亡くなった方によって生計を維持されていた配偶者や子どもなどです。具体的には、同居しているか、別居していても仕送りを受けている、健康保険の扶養親族である場合などが該当します。

また、収入要件もあります。前年の収入が850万円未満であるか、所得が655万5千円未満であることが必要です。これらの要件を満たすことで、遺族年金を受け取ることができます。

さらに、遺族年金は非課税であり、所得税、住民税、相続税などの税金がかかりません。このため、確定申告も不要となります。

 遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類がある

遺族年金は、亡くなった方の遺族が受け取ることができる年金ですが、大きく「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。これらの年金は、受給対象者や支給条件が異なるため、理解しておくことが大切です。

遺族基礎年金は、国民年金に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。

受給対象者は、以下のとおりです。

  • 子のいる配偶者

※子とは以下のような場合をいいます。
・18歳到達年度末(3月31日)までの子
・20歳未満で障害等級1級または2級の子

子どもがいない配偶者は、この年金を受け取ることはできません。これは、子どもが家庭の将来を担うための経済的支援を目的としているためです。

遺族基礎年金について、詳しくは下記記事を参照してください。

「遺族基礎年金とは?いくらもらえる?金額や受給要件をわかりやすく解説」

遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた方が亡くなった場合に支給されます。受給対象者は、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母と幅広く、子どもの有無にかかわらず支給されることが特徴です。これは、遺族全体の生活の安定を目的としているためです。

特に、18歳到達年度末までの子どもや、20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子どもがいる場合、遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方を受給することが可能です。ただし、子どもが18歳の年度末を過ぎたり、障害1級または2級の子どもが20歳に達したりすると、遺族基礎年金の受給資格は失効し、遺族厚生年金のみの受給となります。

遺族厚生年金の受給要件は?

遺族厚生年金を受けるためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき
  2. 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき
  3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき
  4. 老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき
  5. 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

引用:日本年金機構HP「遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

ただし、1および2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要です。ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した方が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

4および5の要件については、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある方に限ります。

保険料の納付要件について

遺族基礎年金および遺族厚生年金を受給するためには、被保険者が一定の保険料納付要件を満たしていることが必要です。具体的には、死亡日の前日までに、死亡日が含まれる月の前々月までの期間において、保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間や共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が、その期間の3分の2以上であることが求められます。

例えば、被保険者期間が20歳から死亡日のある月の前々月までの240カ月あった場合、そのうち保険料納付済期間と保険料免除期間の合計が160カ月以上であれば、納付要件を満たしていることになります。

さらに、特例として、死亡日が令和8年3月末日までの場合、以下の2つの条件を満たせば、納付要件を満たすものとされています。

  1. 死亡日において被保険者が65歳未満であること
  2. 死亡日の前日までの直近1年間に保険料の未納期間がないこと 

遺族厚生年金をもらえる人の条件

遺族厚生年金は、亡くなった方の生計を支えていた遺族が受け取ることができる年金です。この年金の受給対象者は、「死亡した方によって生計を維持されていた人々」と定められています。

受給対象者が「生計を維持されていた」とみなされるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。具体的には、以下の基準が適用されます。

  • 生計を同じくしていること:同居していることまたは、別居しているが仕送りを受けている、健康保険の扶養親族であるなどの事情があること
  • 収入要件:前年の収入が850万円未満、または所得が655万5,000円未満であること

具体的には、以下の遺族のうち、最も優先順位の高い方が受給することになります。

  • 第一順位
     ・配偶者(夫は妻の死亡時に55歳以上、妻は年齢制限なし)
     ・子ども(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)
    第一順位の中でも、さらに以下の優先順位があります。
      1.子どものいる妻、または子どものいる55歳以上の夫
      2.子ども
      3.子どものいない妻、または子どものいない55歳以上の夫
  • 第二順位
    亡くなった人の父母(死亡時に55歳以上)
  • 第三順位
    亡くなった人の孫(18歳未満、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ場合)
  • 第四順位
    亡くなった人の祖父母(死亡時に55歳以上)

配偶者は第一順位の受給資格者│ 子のない30歳未満の妻は5年間のみ受給

遺族厚生年金の受給資格者の中で、最も優先されるのは配偶者または子どもです。

妻は年齢に関係なく遺族厚生年金を受給することができます。ただし、夫の死亡時に30歳未満であり、かつ子どもがいない場合は、5年間の有期給付となります。

一方、夫が遺族厚生年金を受給するためには、妻の死亡時に55歳以上である必要があります。さらに、55歳以上であってもすぐに受給開始されるわけではなく、原則として60歳から支給が始まります。ただし、例外として、妻の死亡時に55歳以上の夫が遺族基礎年金もあわせて受給できる場合には、60歳未満でも受給が可能です。

子どもは第一順位│ただし、配偶者よりも優先順位は低い

次に、子どもの条件についてです。遺族厚生年金を受給できる子どもは、18歳に到達する年度の末日(3月31日)までの子ども、または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子どもが対象となります。

遺族基礎年金も同時に受給することができますが、配偶者が受給している間は子どもには支給されません。子どもは配偶者と同様に第一順位の受給資格者ですが、優先順位が低いため、子どものいる妻や子どものいる55歳以上の夫が優先して受給します。

父母や祖父母も受給資格者│ただし、支給開始時期に注意

遺族厚生年金は、遺族基礎年金とは異なり、父母や祖父母も支給対象に含まれます。このため、被保険者が亡くなった際に、55歳以上の父母や祖父母も遺族厚生年金を受給することができます。

ただし、支給開始時期に注意が必要です。被保険者の死亡時に父母や祖父母が55歳以上60歳未満の場合、年金の支給は60歳から始まります。つまり、55歳で受給資格を得た場合でも、実際に年金を受け取るのは60歳からとなります。

受け取れる遺族厚生年金の金額はいくら?

 遺族厚生年金の計算方法

遺族厚生年金の年金額は、亡くなった方の厚生年金加入期間と報酬額に基づいて計算されます。具体的には、亡くなった方が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が遺族厚生年金として支給されます。計算方法は以下の通りです。

まず、老齢厚生年金の報酬比例部分を計算します。この部分は、平成15年3月以前の加入期間(A)と平成15年4月以降の加入期間(B)に分かれます。

具体的には、AとBを足して、3/4を掛けた金額が遺族厚生年金の年金額となります。

遺族厚生年金の年金額=亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4= (+)×3/4

A: 平成15年3月以前の加入期間

平均標準報酬月額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬月額×(7.125÷1,000)×平成15年3月までの被保険者期間の月数

※平均標準報酬月額とは、平成15年3月以前の各月の標準報酬月額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

B: 平成15年4月以降の加入期間

こちらは平均標準報酬額に基づき計算されます。計算式は以下の通りです。

平均標準報酬額×(5.481÷1,000)×平成15年4月以降の被保険者期間の月数

平均標準報酬額とは、平成15年4月以降の各月の標準報酬月額と標準賞与額を再評価率で現在価値に再評価し、その総額を加入期間の月数で割ったものです。

​65歳以上の場合の計算方法│2つの金額を比較して高い方が支給される

65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取る場合、老齢厚生年金と遺族厚生年金の両方を同時に受給することができます。

だだし、年金額の計算方法には特別な規定があり、老齢厚生年金が優先的に支給されます。以下の2つの額を比較し、高い方が遺族厚生年金として支給されます。

  1. 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
    (詳細な計算方法は上記解説のとおり)
  2. ①の額の2/3 と ご本人の老齢厚生年金の額の1/2 の合計

例えば、亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が60万円、ご本人の老齢厚生年金の額が50万円の場合

①は60万円です。

②は、(60万円 × 2/3) + (50万円 × 1/2) = 40万円 + 25万円 = 65万円です。

この場合、①よりも②の方が高いため、65万円が遺族厚生年金として支給されます。ただし、決定された遺族厚生年金額に対して、ご本人の老齢厚生年金相当額は支給停止となります。

また、平成19年4月1日以前に遺族厚生年金の受給資格があり、かつその時点で65歳以上(昭和17年4月1日以前生まれ)の方については、遺族厚生年金の額は常に①の額になります。

このような規定により、遺族がより有利な額を受給できるよう配慮されていますが、併給調整のため一部の年金が支給停止となる点に注意が必要です。

受給権者が妻である場合は2つの加算制度がある

遺族厚生年金には、夫を亡くした妻に対して特別な加算給付の制度が設けられています。これには「中高齢寡婦加算」と「経過的寡婦加算」の2つがあります。それぞれの制度について詳しく見ていきましょう。

中高齢寡婦加算

中高齢寡婦加算は、特定の条件を満たす妻に対して、40歳から65歳になるまでの間、年額612,000円が遺族厚生年金に加算される制度です。この加算は、以下のいずれかに該当する場合に適用されます。

  1. 夫が亡くなった時点で妻が40歳以上65歳未満であり、生計を同じくしている18歳未満の子ども(または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子ども)がいない場合
  2. 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻(40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている)が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなった場合

この制度は、老齢厚生年金の受給権者または受給資格期間を満たしている夫が亡くなった場合に適用されますが、夫の厚生年金保険の被保険者期間が20年以上であることが必要です。また、特例により20年未満でも共済組合などの加入期間を除いた老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている場合も含まれます。

経過的寡婦加算

経過的寡婦加算は、特定の条件を満たす妻に対して遺族厚生年金に加算される制度です。この加算は、以下のいずれかの条件を満たす場合に適用されます。

  1. 昭和31年4月1日以前に生まれた妻が65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した場合
  2. 中高齢寡婦加算を受けていた昭和31年4月1日以前生まれの妻が65歳に達した場合

65歳になると中高齢寡婦加算が終了しますが、経過的寡婦加算が代わりに支給されるため、年金額の急激な減額を防ぐことができます。

経過的寡婦加算の額は、昭和61年4月1日から60歳に達するまで国民年金に加入した場合の老齢基礎年金の額と合わせて、中高齢寡婦加算と同額程度になるように設定されています。これにより、65歳以降も安定した年金受給が続けられるようになっています。

寡婦加算について、詳しくは日本年金機構HP「遺族厚生年金〈受給要件・対象者・年金額〉|日本年金機構)」を参照してください。

遺族厚生年金の請求手続き

請求手続きの期限は5年

遺族厚生年金を受け取るためには、遺族自身が手続きを行う必要があります。この手続きには期限があり、「生計を維持していた人が亡くなった翌日から5年以内」に行わなければなりません。この5年間の期限を過ぎると、年金を受け取る権利である「基本権」が時効を迎えてしまいます。

手続きを5年以内に行えば、過去に受け取っていなかった未支給分もさかのぼって受給することができます。また、期限内に手続きを行うのが難しい場合には、その理由を書面で記載して申立て手続きをすることで、時効を停止させ手続き期限を延ばすことができる場合もあります。

遺族厚生年金は遺された家族の生活を支えるための重要な資金です。遺族が生活に困ることや不安を抱えることがないように、できるだけ早く手続きを進めることが望ましいです。手続きを早めに行い、安定した生活を確保するための準備をしましょう。

遺族厚生年金の受給要件を満たしている場合、以下の流れで申請手続きを行います。

手続きの流れ

  1. 死亡届の提出
    まず、亡くなった方の死亡届を市町村役場に提出します。
  2. 資格喪失届または年金受給権者死亡届の提出
    次に、亡くなった方の資格喪失届または年金受給権者死亡届を提出します。亡くなった方が在職中であった場合は、その勤め先に資格喪失届を提出します。年金受給者であった場合は、年金事務所に年金受給権者死亡届を提出します。
  3. 必要書類の提出
    最後に、必要書類を年金事務所または年金相談センターへ提出します。必要書類は以下の通りです。

必要書類

遺族厚生年金を請求する際は、年金請求書に以下の必要書類を添付して年金事務所または年金相談センターへ提出します。年金請求書は、年金事務所および街角の年金相談センターの窓口で取得することができます。

また、下記日本年金機構のホームページよりダウンロード可能です。記入例も掲載されていますので参照してください。

遺族厚生年金の請求書:「年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)様式第105号

【すべての人に必要な書類】

必要書類

目的

注意点 

基礎年金番号通知書または年金手帳等

基礎年金番号を明らかにする

提出できない場合は、その理由書が必要

戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し

死亡者との続柄および請求者の氏名・生年月日の確認

受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの

世帯全員の住民票の写し

死亡者との生計維持関係の確認

受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの。マイナンバーを記入すれば添付省略可

死亡者の住民票の除票

死亡の事実の確認

世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要

請求者の収入が確認できる書類

生計維持認定のため

所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票等。マイナンバーを記入すれば添付省略可

子の収入が確認できる書類

生計維持認定のため

義務教育終了前は不要。高等学校等在学中の場合は在学証明書または学生証のコピー等

死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書

死亡の事実および死亡年月日の確認

市区町村長に提出したもののコピー

受取先金融機関の通帳等(本人名義)

受取先金融機関の確認

カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカードのコピー等

【死亡の原因が第三者行為の場合に必要な書類】

必要書類

確認事項

注意点 

第三者行為事故状況届

事故の詳細状況を記載

所定の様式あり

交通事故証明または事故が確認できる書類

事故の証明

事故証明がとれない場合は、事故内容がわかる新聞のコピーなど

確認書

事故の確認

所定の様式あり

被害者に被扶養者がいる場合、扶養していたことがわかる書類

被扶養者の確認

源泉徴収票、健康保険証のコピー(保険者番号および記号・番号等はマスキング)、学生証のコピーなど

損害賠償金の算定書

賠償金の確認

すでに決定済の場合。示談書等受領額がわかるもの

【その他状況によって必要な書類】

必要書類

確認事項

年金証書

他の公的年金から年金を受けているとき

合算対象期間が確認できる書類

合算対象期間の確認

参照:日本年金機構HP「遺族厚生年金を受けられるとき

遺族厚生年金の支給停止はなぜ起こる?失権と支給停止について

遺族厚生年金には、「失権」や「支給停止」という制度があります。これらは、一定の条件に該当すると遺族厚生年金を受け取れなくなる制度です。それぞれの制度について理解し、注意を払うことが重要です。

失権とは、遺族厚生年金の受給資格を完全に失うことを意味します。失権となると、残念ながらその資格を復活させることはできません。一度失権してしまうと、遺族厚生年金を再び受け取ることはできなくなります。具体的な例として、受給者が再婚した場合などが該当します。

一方で、支給停止とは、遺族厚生年金の支給が一時的に停止されることを指します。失権とは異なり、状況が変われば支給停止が解除され、再び遺族厚生年金を受け取ることが可能です。例えば、一定の収入を超えた場合や公的扶助を受けた場合などが該当しますが、これらの状況が変われば再び支給が再開されます。

失権する場合

遺族厚生年金の受給権が失権する理由は複数あり、これらの条件に該当すると遺族厚生年金を受け取る権利が完全に失われます。具体的には以下のような場合です。

  1. 受給者が死亡したとき
  2. 受給者が婚姻したとき
  3. 受給者が養子になったとき(受給者が直系血族及び直系姻族以外の養子になった場合)
  4. 受給者が離縁によって親族関係を終了した場合
  5. 子どもや孫が18歳の誕生日を迎えた年度末(3月31日)を過ぎたとき(ただし、障害等級1級または2級の場合は20歳まで)
  6. 子どものいない30歳未満の妻が、遺族厚生年金の受給権を取得してから5年経過したとき
  7. 子どものいる30歳未満の妻が、遺族基礎年金の受給権を失ってからさらに5年経過したとき

失権の条件は非常に複雑で、受給者の状況によって異なります。たとえば、婚姻によって受給権を失った場合、その後離婚しても再度遺族厚生年金を受給することはできません。このように、一度失権すると受給権は復活しません。

受給権の失権に関する疑問や不安がある場合は、年金事務所に直接問い合わせて相談することをお勧めします。

支給停止する場合

遺族厚生年金は、一定の条件を満たすと支給が一時的に停止されることがあります。具体的な理由と条件について確認しておきましょう。

  1. 労働基準法で定められた遺族補償が行われるとき
    労働基準法に基づく遺族補償が行われる場合、遺族厚生年金は死亡日から6年間支給停止となります。この期間中は、遺族補償が優先されるためです。
  2. 受給権を持つ夫、父母または祖父母が60歳未満のとき
    夫、父母、祖父母が受給権を持っていても、60歳未満の場合は支給が停止されます。60歳に達すると支給停止が解除され、年金の受給が開始されます。
  3. 受給権者の所在が1年以上明らかでないとき
    受給権者の所在が1年以上確認できない場合も支給が停止されます。所在が明らかになった時点で支給が再開されます。

また、遺族厚生年金の受給者は基本的に「1名のみ」であるというルールもあります。例えば、夫が亡くなり妻が受給権を有している間は、子ども自身への遺族厚生年金の支給は停止されます。しかし、妻が婚姻や死亡により受給権を失権した場合、子どもの支給停止は解除され、年金の支払いが始まります。

遺族年金の制度には「大黒柱を失った妻や子どもが生活に困らないように」という考えが根強く残っています。そのため、夫や父母が受給権者となる場合のルールは厳格です。夫や父母は60歳未満では遺族年金を受け取ることができず、60歳に達して初めて支給停止が解除される仕組みになっています。

このように、遺族厚生年金には支給停止となる条件がいくつかあり、それぞれの状況に応じて適切に対応することが重要です。疑問や不安がある場合は、年金事務所に相談して正確な情報を得ることをおすすめします。

遺族厚生年金の注意点

非課税のため確定申告は不要

遺族厚生年金は、所得税も相続税も課税されません。具体的には、国民年金法、厚生年金保険法、恩給法、旧船員保険法、国家公務員共済組合法、地方公務員等共済組合法、私立学校教職員共済法、旧農林漁業団体職員共済組合法に基づいて支払われる遺族年金や遺族恩給が非課税の対象となります。

ただし、注意が必要なのは、老齢遺族年金や老齢厚生年金は課税対象となることです。これらの年金は収入としてみなされるため、所得税の対象となります。

遺族厚生年金は収入とはみなされないため、基本的に確定申告の必要はありません。ただし、遺族年金以外に所得がある場合は、その所得については申告が必要です。確定申告の際には、遺族年金分は非課税なので、申告書に遺族年金を含める必要はありません。

年金は「1人1年金」が原則

公的年金には、「遺族年金」のほかに「障害年金」や「老齢年金」があります。公的年金制度には「1人1年金の原則」があり、異なる種類の年金を同時に受給することは基本的にはできません。つまり、2つ以上の年金の受給権が発生した場合は、どちらか一方の年金を選択することになります。選択するためには、年金事務所に「年金受給選択申出書」を提出します。これにより、選択した年金が支給され、他の年金は支給停止となります。

公的年金制度は「2階建て」の構造になっており、同じ種類の年金であれば基礎年金と厚生年金を組み合わせて受け取ることができます。例えば、老齢基礎年金と老齢厚生年金、障害基礎年金と障害厚生年金、遺族基礎年金と遺族厚生年金を同時に受給することが可能です。これにより、受給者は同じ種類の年金を組み合わせて、より充実した年金額を受け取ることができます。

ただし、特例として異なる種類の年金を同時に受給できる場合もあります。例えば、65歳以上で老齢基礎年金を受給している方が新たに遺族厚生年金の受給権を得た場合、これらをあわせて受け取ることができます。このような特例は一部の条件に限られるため、詳細は年金事務所で確認することが重要です。

遺族厚生年金に関するQ&A

Q: 遺族厚生年金の受給対象者とその優先順位はどのようになっていますか?

A: 遺族厚生年金を受給できるのは、被保険者によって生計を維持されていた配偶者、子、父母、孫、祖父母です。遺族が複数名いる場合には、最も優先順位が高い遺族が遺族年金を受給することになります。優先順位は以下の通りです。

  • 第1順位
    ・配偶者:夫の場合は妻の死亡時に55歳以上、妻の場合は年齢制限なし
    ・子
    ※第1順位内での順位
    子のいる妻、または子のいる55歳以上の夫>子>子のいない妻、または子のいない55歳以上の夫
  • 第2順位
    被保険者の父母(死亡時に55歳以上であること)
  • 第3順位
    被保険者の孫
  • 第4順位
    被保険者の祖父母(死亡時に55歳以上であること)

このように、最も優先順位が高い遺族が遺族厚生年金を受給することになります。

Q: 遺族厚生年金の支給額はいくら?

A: 遺族厚生年金の支給額は、亡くなった方の厚生年金の加入期間や報酬額に基づいて計算されます。具体的には、亡くなった方が受け取るはずだった老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4の金額が支給されます。

支給額の計算方法は次の通りです。

  1. 平成15年3月以前の加入期間
    平均標準報酬月額 × 7.125/1,000 × 加入期間の月数
  2. 平成15年4月以降の加入期間
    平均標準報酬額 × 5.481/1,000 × 加入期間の月数

これらの合計額の3/4が遺族厚生年金として支給されます。

また、特定の条件を満たす場合、例えば、40歳以上で子どもがいない妻には「中高齢寡婦加算」が適用され、65歳まで年額612,000円が加算されます。さらに、遺族基礎年金と併せて受給する場合や、他の特例が適用されるケースもありますので、詳しい支給額については年金事務所に確認することをおすすめします。

Q: 65歳以上の場合、遺族厚生年金の支給額はどのように計算されますか?

A: 65歳以上で老齢厚生年金(退職共済年金)を受け取る資格がある方が、配偶者の死亡により遺族厚生年金を受け取る場合、年金額の計算方法には特別な規定があります。具体的には、以下の2つの額を比較し、高い方が遺族厚生年金として支給されます。

  1. 亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4
  2. ①の額の2/3とご本人の老齢厚生年金の額の1/2の合計

また、平成19年4月1日以前に遺族厚生年金の受給資格があり、かつその時点で65歳以上(昭和17年4月1日以前生まれ)の方については、遺族厚生年金の額は常に①の額となります。

まとめ

遺族厚生年金は、高齢者が受け取る老齢年金とは異なり、会社員や公務員として厚生年金保険に加入している被保険者が死亡した際に、その遺族に支給される年金です。遺族基礎年金の支給対象であれば、遺族厚生年金と併せて受給することができます。この年金は、主に配偶者や子どもなど、被保険者の収入で生計を維持していた遺族にとって大きな支えとなります。

遺族厚生年金の受給額は、亡くなった方の生前の収入や厚生年金の加入期間によって異なり、計算方法は非常に複雑です。具体的には、亡くなった方の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4が支給されます。65歳以上の場合は、亡くなった方の老齢厚生年金の3/4と、①の額の2/3とご本人の老齢厚生年金の額の1/2の合計額を比較し、高い方が支給されます。

また、遺族厚生年金の受給には、被保険者の死亡日までの一定期間、保険料納付済期間が3分の2以上であることなどの要件があります。死亡の原因が第三者行為である場合には、追加の書類が必要となることもあります。

手続きは、市町村役場や年金事務所、年金相談センターで行うことができ、書類の取得や申請が難しい場合は、社会保険労務士に手続きを代行してもらうことも可能です。支給額や手続きについて不明な点があれば、近くの年金事務所や年金相談センターに問い合わせることをお勧めします。

遺族厚生年金は、残された家族の生活を支える重要な制度です。正しい情報をもとに、早めに手続きを進めることで、遺族の経済的な不安を軽減することができます。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。