ゆうちょ銀行の相続手続きの流れと必要書類│他の銀行とは異なる点も

相続手続き

更新日 2024.07.05

投稿日 2024.07.05

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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ゆうちょ銀行は、日本全国に支店があり、多くの人に親しまれています。ゆうちょ銀行を利用している方々の中には、相続が発生した際に、どのように手続きを進めれば良いのか疑問を抱えている方も少なくありません。実は、ゆうちょ銀行の相続手続きや必要書類は他の銀行とは異なる特徴があります。

ゆうちょ銀行の場合、相続手続きは銀行の窓口ではなく「相続貯金事務センター」で一括して行われます。このため、手続きの流れや必要書類が他の銀行とは少し異なります。この記事では、ゆうちょ銀行の相続手続きの流れや必要書類について詳しく解説していきます。

目次

ゆうちょ銀行の相続手続きの必要書類

相続確認表を提出して必要書類一覧を入手する

ゆうちょ銀行の相続手続きを進めるには、まず「相続確認表」の提出が必要です。この相続確認表は、ゆうちょ銀行または郵便局の貯金窓口、あるいはゆうちょ銀行の公式ホームページから入手可能です。ホームページでは、記入例もダウンロードできるため、記入の際の参考になります。

相続手続きの流れ

(引用:ゆうちょ銀行ホームページ「相続手続きの流れ」)

相続確認表には、被相続人の情報や相続人の情報など、必要事項を正確に記入します。記入後、この表をゆうちょ銀行の貯金窓口に提出します。窓口は、被相続人の口座を開設した店舗である必要はなく、アクセスしやすい店舗で構いません。

相続確認表を提出すると、その後に「必要書類一覧表」が送付されます。この一覧表には、相続手続きに必要な書類が詳細に記載されています。例えば、遺言書や遺産分割協議の有無など、状況に応じて必要となる書類が異なります。一覧表を参考にして、必要な書類を揃え、手続きを進めていくことになります。

相続Web案内サービスでも

ゆうちょ銀行の相続手続きでは、必要書類を知るためのもう一つの方法として、「相続Web案内サービス」が利用できます。このサービスを利用することで、オンライン上で必要書類を確認することが可能です。ただし、被相続人がゆうちょ銀行で投資信託の取引を行っていた場合には、このサービスは利用できない点に注意が必要です。

相続Web案内サービスを利用する際は、手続きの対象となる通帳やキャッシュカードの記号番号が必要になります。

必要書類を準備する

ゆうちょ銀行の相続手続きでは下記の書類が必要となりますので用意しておきましょう。

【ゆうちょ銀行の相続手続き必要な書類】

  • 相続確認表
  • 貯金等相続手続請求書(全相続人が署名押印済のもの)
  • 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議がある場合)
  • 相続人全員の印鑑証明書(発行後6ヶ月以内のもの)
  • 貯金通帳、証書、キャッシュカードなど
  • 相続手続きをする人の本人確認書類(免許証、マイナンバーカード、パスポートなど)
  • 委任状(代理人に書類の提出を依頼する場合)

※法定相続情報一覧図の写しを提出する場合は、戸籍謄本等の提出は不要です。

【遺言書がある場合の必要書類】

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 預金を相続する人の印鑑証明書
  • 遺言執行者の選任審判書謄本(遺言執行者が選任されている場合)

個々の状況に応じて、他にも必要書類を提出する必要があります。ゆうちょ銀行から送付される必要書類一覧に沿って必要書類を準備してください。

ゆうちょ銀行以外で取得する必要書類の取得方法

相続確認表はゆうちょ銀行の窓口またはホームページから取得することができ、また貯金等相続手続請求書は、相続確認表を提出した後、ゆうちょ銀行の「相続貯金事務センター」から送付されてきます。

ここでは、それ以外の自分で取得しなければならない必要書類の入手方法を解説します。

相続手続きに際して、相続人は亡くなった方との関係性を証明するための戸籍謄本や、実印の証明である印鑑登録証明書など、様々な書類を自ら取得しなければなりません。

被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本

相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本を揃える必要があります。これは、相続人が相続できる権利を持っているか、そして相続人の数を正確に把握するためです。戸籍謄本を効率的に取得するには、亡くなった方が最後に本籍地として住所を置いていた役所から順に遡って取得するのがおすすめです。

亡くなった方が生涯にわたって住所変更や婚姻などで本籍地を変更していた場合、すべての戸籍謄本を揃えるには時間がかかることがあります。特に、県を跨いで本籍地が変更されている場合は、複数の役所を訪れる必要があります。そのため、相続手続きをスムーズに進めるためにも、できるだけ早めに戸籍謄本の取得を始めることが重要です。

戸籍謄本の取得には、申請者の本人確認書類が必要となります。また、郵送での取得も可能な場合があるため、遠方にある役所の戸籍謄本を取得する際には郵送での申請を検討すると良いでしょう。

相続人全員の戸籍謄本│有効期限はないが最新のものを提出

相続手続きを行う際には、亡くなった方だけでなく、相続人全員の戸籍謄本が必要となります。

戸籍謄本には有効期限が設定されていないため、古いものでも法的には有効です。しかし、相続が発生した日(故人の死亡日)以降に発行された、日付の新しい戸籍謄本を用意することが望ましいとされています。これは、最新の戸籍謄本であれば、相続人の状況が正確に反映されている可能性が高いためです。

相続人が複数いる場合は、それぞれの相続人の戸籍謄本を集める必要があります。特に、相続人が遠方に住んでいる場合や、連絡が取りにくい場合は、早めに手続きを開始することが重要です。

相続人全員の印鑑登録証明書│期限は発行後6ヶ月以内

相続手続きには、相続人全員の印鑑登録証明書が必要となります。貯金等相続手続請求書に押印する際には、相続人が登録した実印を使用する必要があります。印鑑登録証明書は、有効期限が設けられており、相続が発生した日以降に取得したものであれば、取得から6ヶ月以内のものが有効とされます。

重要な点として、印鑑登録証明書は代理人による取得が認められていないため、相続人自身が各自で取得する必要があります。そのため、相続手続きに必要な書類を揃える際は、相続人各自に時間的な余裕を持って印鑑登録証明書の取得を依頼することが重要です。

遺言書または遺産分割協議書

相続手続きでは、遺言書や遺産分割協議書がある場合は、それらの原本を提出する必要があります。特に自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所による検認が済んでいることを示す書類も一緒に添付する必要があります。

遺産分割協議書は、相続手続きに必ずしも必要な書類ではありません。相続人が一人の場合や、複数いても法定相続分に従って分割する場合は、遺産分割協議書を作成する必要はありません。しかし、相続財産の分割方法について相続人全員が合意していることを文書に残しておくことは、将来のトラブルを防ぐために重要です。

「貯金等相続手続請求書」には、相続人全員の直筆の署名と実印の押印が必要です。遺産分割協議書が提出されなくても、この書類に相続人全員の署名と印鑑があれば、相続手続きは問題なく進行します。

ゆうちょ銀行の相続手続きの流れ│必要書類の記入例も

ゆうちょ銀行の場合、相続手続きは銀行の窓口ではなく「相続貯金事務センター」で一括して行われます。そのため、ゆうちょ銀行の相続手続きは、全国のゆうちょ銀行や郵便局の窓口で行うことができます。これにより、被相続人が地方に住んでいた場合でも、代表相続人が手続きしやすい窓口で申し込むことが可能です。

手続きの流れとしては、まず窓口で「相続確認表」に必要事項を記載し提出します。この確認表が受領されると、ゆうちょ銀行から「必要書類のご案内」が郵送されてきます。案内に従って必要な書類を作成し、再度窓口に提出します。その後、被相続人の貯金口座の解約と相続払戻金の受け取りも窓口で行います。

このため、ゆうちょ銀行の窓口では通常3回、最低でも2回は手続きを行う必要があります。

ゆうちょ銀行の相続手続きは、以下の流れで行います。

①口座の有無や記号番号の確認が必要な場合は「貯金等照会書」を提出する

亡くなった方の名義人の預貯金の有無が不明であったり、記号番号がわからない場合、ゆうちょ銀行の相続手続きにおいて「貯金等照会書」の提出が必要になります。この照会書は、ゆうちょ銀行の窓口に置いてあるほか、ゆうちょ銀行の公式ホームページからダウンロードして印刷することができます。事前にダウンロードして記入しておくと、手続きがスムーズに進みます。

「貯金等照会書」を提出する際には、相続人であることを証明するために戸籍謄本等が必要となります。したがって、手続きを行う前に戸籍謄本を用意しておくことが重要です。相続人が複数いる場合には、全員の戸籍謄本が必要となることもありますので、事前に確認しておきましょう。

貯金等照会書

貯金等照会書2

(引用:ゆうちょ銀行ホームページ「相続手続きの流れ」)

相続確認表を提出する

ゆうちょ銀行の相続手続きでは、被相続人の貯金口座の記号番号が確認できたら、次のステップとして「相続確認表」の記入と提出が必要です。相続確認表は3枚セットで構成されており、書き方の説明も付属しています。この確認表は、ゆうちょ銀行の窓口で入手することができるほか、ゆうちょ銀行の公式ホームページからダウンロードして印刷することも可能です(ゆうちょ銀行ホームページ「相続手続きの流れ」)。

また、インターネット環境があれば、オンラインでの提出も可能です。(「相続Web案内サービス」)

相続確認表には、相続に関する重要な情報を記入します。例えば、相続人の情報や被相続人の貯金口座情報などです。

記入が完了した相続確認表は、ゆうちょ銀行の貯金窓口に提出します。提出する窓口は、被相続人の口座を開設した店舗である必要はありませんが、提出後に送られてくる「必要書類一覧表」に記載された書類は、相続確認表を提出した店舗に提出するのが原則です。したがって、手続きをスムーズに進めるためにも、提出する窓口の選定には注意が必要です。

②「必要書類のご案内」が送付される

相続確認表をゆうちょ銀行の窓口に提出した後、1~2週間前後で貯金事務センターから「必要書類のご案内」が郵送されます。この案内には、相続手続きに必要な書類一式が含まれています。必要な書類は、相続確認表に記載された内容(貯金の種類、遺言書の有無、解約方法など)に基づいて決定されるため、ケースごとに異なります。

同封される書類には、提出書類リスト、第三者に手続きを委任する際に使用する委任状、取引目的などの確認を求める書類などが含まれます。これらの書類をしっかりと確認し、必要に応じて記入や準備を行います。

③「貯金等相続手続請求書」に相続人全員が署名・押印する

「必要書類のご案内」の中に貯金等相続手続請求書が同封されています。

貯金等相続手続き請求書

これはゆうちょ銀行所定の相続届の書類であり、相続人全員の署名と実印の押印が必要となります。相続人が複数いる場合は、全員の同意が必要となるため、事前に協議しておくことが重要です。

④必要書類を準備して窓口に提出する│第三者が手続きする場合は委任状も必要

「貯金等相続手続請求書」の記載が完了したら、その書類と戸籍謄本などの他の必要書類をそろえて、最初に相続確認表を提出したのと同じゆうちょ銀行の窓口に提出します。相続手続きの書類提出は原則として窓口でのみ受け付けられ、郵送による提出はできませんので注意が必要です。

手続きを行うのは原則として代表相続人ですが、ゆうちょ銀行が指定する委任状を使用すれば、代理人が手続きを行うことも可能です。この場合、委任状には代表相続人の署名と実印の押印が必要となります。

委任状

窓口での提出時には、担当者が書類を確認し、不備がないかチェックします。不備がある場合は、書類を訂正したり、追加で書類を提出したりする必要があります。そのため、提出前に書類の内容を再度確認しておくことが重要です。

⑤相続払戻金を受け取る

ゆうちょ銀行の相続手続きで必要書類を提出した後、通常約2~4週間の書類審査期間を経て、相続払戻金が指定のゆうちょ銀行口座へ振込みされます。ゆうちょ銀行では他行口座への振込み指定はできないため、相続人がゆうちょ銀行の口座を持っていない場合は、現金または証書(小切手)での払戻しが必要です。

払戻し金額が10万円未満の場合、提出当日に窓口で受け取れることもありますが、それ以上の金額では後日受け取りとなることが多いです。特に証書払いで100万円以上の場合、現金の用意に時間がかかるため、一度証書を提出してから、現金の準備が整った後に再度来店する必要があります。

相続財産が1000万円以上といった多額の場合、ゆうちょ銀行に口座を持っていなければ証書払いを受け、他行に現金を入金するまで大金を持ち歩くリスクがあります。そのため、可能であれば新規に口座を開設し、振込みで払戻しを受ける方が安全かつ時間の短縮につながります。

ゆうちょ銀行の貯金を相続する3つの方法

ゆうちょ銀行の貯金等を相続する方法は、下記の3つがあります。

1.解約して代表相続人のゆうちょ銀行の口座に払い戻す

この方法では、相続によって解約された貯金等が代表相続人のゆうちょ銀行口座に直接振り込まれます。多くの相続人がこの方法を選ぶ理由は、手続きが比較的簡単で、払い戻しを迅速に受け取ることができるからです。

ただし、払い戻しを受けるためには代表相続人がゆうちょ銀行に口座を持っている必要があります。また、振込先がゆうちょ銀行の口座に限定され、複数の相続人への分割払いもできないため、事前に相続人間での合意が必要です。

2. 解約して払い戻し証書を受け取り現金化する

この方法を選択すると、貯金等の解約後に払い戻し証書(小切手のようなもの)が郵送されます。受け取った証書は、ゆうちょ銀行や郵便局の窓口で現金化できます。

ゆうちょ銀行の口座を持っていない相続人にとっては便利な選択肢ですが、現金化のために窓口を訪れる必要があり、高額な現金を一時的に持ち歩くリスクも伴います。したがって、この方法は慎重に検討する必要があります。

3. 解約せずに名義変更する

相続財産としての貯金等を解約せずに、被相続人から代表相続人への名義変更を行う方法です。特に定期貯金など、途中解約による利息の減少を避けたい場合や、引き続き運用を継続したい場合に適しています。

投資信託の場合は、一度相続人への名義変更が必要になるため、この方法が適用されます。名義変更には、相続人全員の同意が必要となります。

貯金額が少額の場合には代表相続人のみで手続きが可能

ゆうちょ銀行では、亡くなった方が保有していた口座の預金残高の合計が100万円以下である場合、簡易な相続手続きを利用することができます。この制度は、少額の預金については手続きを簡略化し、迅速に対応することを目的としています。

簡易手続きの対象となるかどうかの判定は、通常貯金、定期貯金、総合口座など、故人が保有していたすべてのゆうちょ銀行の口座の残高を合計して行います。

残高が100万円以下であると判断された場合は、代表相続人が1人で手続きを行うことができます。代表相続人は「貯金等相続手続請求書」に必要事項を記入します。この請求書には、相続代表人が1人で記入するだけで済み、相続人全員の実印や印鑑証明書の提出は不要です。

通常の相続手続きでは、相続人全員の実印を押す必要があるため、全員が一同に会するか、書類を郵送するなどの手間がかかります。しかし、ゆうちょ銀行の簡易手続きでは、このような手間が省けるため、相続人にとっては時間と労力を節約することができます。

貯金額が少額の場合の必要書類

ゆうちょ銀行の預金が少額の場合で、簡易手続きを行う際に、必要となる書類は以下のとおりです。

  • 貯金等相続手続請求書
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 被相続人と代表相続人の関係性が分かる戸籍謄本
  • 被相続人の通帳や証書
  • 代表相続人の印鑑証明書
  • 代表相続人の実印
  • 代表相続人の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード、パスポートなど)

ゆうちょ銀行の口座凍結後に葬儀費用等を引き出すには

預貯金の仮払い制度を利用する

2019年7月1日から施行された民法改正により、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)が導入されました。この制度を利用することで、ゆうちょ銀行を含む金融機関の口座が凍結された後でも、限られた範囲で故人の預金を引き出すことが可能になります。特に、相続人間での話し合いが困難な場合や、葬儀費用などのために預金の一部を速やかに引き出したい場合に適しています。

仮払い制度を利用するためには、金融機関の窓口に申請する必要があります。引き出せる金額は、「被相続人の死亡時の預金残高(口座・明細ごと)×1/3×預金を引き出す人の法定相続分」で計算されます。ただし、同一の金融機関から引き出せる上限額は150万円までとなっています。

手続きには、本人確認書類のほか、被相続人と相続人の戸籍謄本、預金を引き出す人の印鑑証明書などが必要です。この制度を利用して引き出した預金は、遺産の一部として先取りしたことになるため、後の遺産分割協議で考慮されます。

なお、仮払い制度に加えて、家庭裁判所に申請して預金を引き出す方法も存在しますが、これは調停や審判が前提となるため、緊急性の高い葬儀費用の支払いには向いていません。そのため、葬儀費用等のために速やかに資金を必要とする場合は、預貯金の仮払い制度の利用が適切です。

ゆうちょ銀行とそれ以外の銀行で相続手続きが異なる点は?

全国のゆうちょ銀行窓口で手続きが可能

一般的に金融機関では、相続が発生した際に、故人が開設した預金口座が存在する場合、その口座を開設した支店でのみ相続手続きを行う必要があることがあります。これは、口座の詳細や顧客情報を管理している支店で手続きを行うことで、正確性を確保するためです。

しかし、ゆうちょ銀行では、相続手続きにおいてこのような制限がありません。被相続人がゆうちょ銀行(郵便局)で開設した口座があっても、代表相続人は全国のゆうちょ銀行の窓口で手続きを行うことが可能です。これにより、被相続人が地方に住んでいた場合でも、代表相続人が自身の住む地域のゆうちょ銀行の窓口で手続きを行うことができ、手続きの利便性が向上します。

払い戻し金は他の銀行へ振り込みできない

相続が発生した際、金融機関の預貯金については、相続人の口座に名義を変更するか、解約して残高を払い戻すかのいずれかの手続きが必要です。特に払い戻しを行う場合は、被相続人名義の口座を解約し、その残高を相続人に振り込む形で行います。

ゆうちょ銀行の場合、この払い戻し時には、ゆうちょ銀行の口座を指定する必要があります。ゆうちょ銀行以外の口座への振り込みはできないため、ゆうちょ銀行の口座を持っていない相続人は、現金での払い戻しを受けることになります。これは、利用者にとっては不便であり、現金での払い戻しは安全面でも注意が必要です。

さらに、被相続人がゆうちょ銀行で国債を保有していた場合は、預貯金と同様にすべて名義変更が必要です。また、投資信託を売却する場合は、まず相続人に名義変更を行い、その後相続人が売却する流れとなります。これらの手続きには、相続人の協力と時間が必要となるため、計画的に進めることが重要です。

窓口に最低2回は行く必要がある

金融機関によっては、必要書類を事前に用意して窓口に行けば、その場で相続手続きを完了できる場合もあります。しかし、ゆうちょ銀行の相続手続きは異なり、いくつかのステップを踏む必要があります。

まず、ゆうちょ銀行の場合、初回訪問時は相続手続きに関する説明を受けるのみで、手続き自体は行われません。たとえ相続に詳しくても、必要書類を完全に揃えていても、この段階では手続きを進めることはできません。

次に、2回目以降の訪問時にも、提出書類に不備や不足があると、手続きを進めることができず、再度窓口に行く必要が生じます。さらに、ゆうちょ銀行の窓口は平日の日中のみの営業であるため、仕事などで忙しい方は、何度も窓口に行くための予定を調整する必要があります。

以上の点から、ゆうちょ銀行での相続手続きには、最低でも1ヶ月程度の時間が必要と考得ておきましょう。

ゆうちょ銀行の相続手続きの流れと必要書類に関するQ&A

Q: ゆうちょ銀行と他の銀行とで相続手続きが異なる点は何ですか?

A: ゆうちょ銀行と他の銀行とで相続手続きが異なる主な点は以下の通りです。

  1. 全国対応:ゆうちょ銀行は口座開設をしていれば、全国どこの支店でも手続きが可能です。他の銀行では、通常は口座を開設した支店での手続きが必要となることが多いです。
  2. 払い戻しの振込先制限:ゆうちょ銀行で相続手続きをする際に口座を解約して払い戻しをする場合、振込先はゆうちょ銀行の口座に限られます。他の銀行では、相続人が指定する口座への振込が一般的です。
  3. 窓口での手続き回数:他の金融機関では、必要書類を事前に揃えて窓口に行けば、その場で相続手続きを完了できる場合があります。しかし、ゆうちょ銀行では、最低でも2回以上窓口に行く必要があり、書類に不備があるとさらに回数が増えます。

Q: ゆうちょ銀行での相続手続きが少額と判断された場合、どのような簡易な手続きが可能ですか?

A: ゆうちょ銀行で亡くなった方の口座残高が100万円以下である場合、その相続手続きは少額と判断され、簡易な手続きが可能となります。この場合、通常必要となる相続人全員の実印の押印や印鑑証明書の提出が不要となります。代わりに、相続代表人が一人で「貯金等相続手続請求書」の全項目に記入し、提出するだけで手続きが完了します。

これにより、相続人が一同に会する必要や書類の郵送などの手間が省かれ、相続手続きを大幅に簡略化することができます。

Q: ゆうちょ銀行で残高証明書を取得するために必要な手続きと書類は何ですか?

A: ゆうちょ銀行で残高証明書を取得するためには、まずゆうちょ銀行の貯金窓口で「貯金残高証明請求書」を入手します。その後、以下の必要書類を添えて手続きを行います。

  • 被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本
  • 相続人であることが確認できる戸籍謄本
  • 相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 相続人の印鑑

相続人が複数いる場合でも、手続きは相続人のうち一人が行うことが可能です。この残高証明書は、遺産分割協議や相続税申告などの際に役立つため、必要に応じて取得しておくと良いでしょう。

まとめ

ゆうちょ銀行の相続手続きは、亡くなった方の戸籍謄本一式、相続人全員の戸籍謄本と印鑑登録証明書に加え、ゆうちょ銀行所定の「相続確認表」「貯金等相続手続請求書」が必要です。他の金融機関と異なり、ゆうちょ銀行は窓口での相続手続きを行っておらず、書類に不備がある場合は郵送でのやり取りが必要となり、手続きに時間がかかることがあります。

被相続人がゆうちょ銀行以外にも口座を持っている場合や、有価証券や不動産など他の財産がある場合は、それぞれ個別に手続きを行う必要があります。相続手続きは時間と手間がかかるため、専門家に依頼することでスムーズに進めることができるでしょう。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。