死亡した人の銀行口座をそのまま放置するとどうなる?使い続けるとダメな理由も

相続手続き

更新日 2026.08.05

投稿日 2024.06.11

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

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「死亡した人の銀行口座をそのまま放置するとどうなるのか?」と疑問に思っている方は多いのではないでしょうか。家族が死亡した際、様々な手続きに追われる中で、銀行口座の管理は後回しにされがちです。特に、口座残高が少額であれば、手続きの優先度も低くなります。

しかし、死亡後の銀行口座をそのまま放置しておくと、思いがけないデメリットを受けるおそれがあります。「罰則はないのか?」「預金はどうなる?」「相続手続きはどのように進めればよいのか?」、故人の銀行口座に関するこのような疑問について、この記事で詳しく解説していきます。

目次

死亡した人の銀行口座をそのまま放置するとどうなる?

そのままにしても罰則はない

死亡した人の銀行口座をそのまま放置したからといって、刑事罰が科されるわけではなりません。しかし、この状況は遺産相続の観点から注意が必要です。遺産相続では、故人(被相続人)が残した資産と負債の両方を相続人が引き継ぎます。故人の銀行口座に残っている預金も遺産の一部であるため、相続の対象です。

故人の銀行口座をそのまま放置しておくと、相続手続きを適切に行えない可能性があるため注意が必要です。

相続が発生した場合には、故人の銀行口座とその残高を特定したうえで、遺産分割協議を進めなければなりません。また、相続は民法上のルールに従い期限内に適切な手続きを完了させる必要があり、ケースによっては納税義務が発生する場合もあります。

そのため、相続手続きでは、故人の銀行口座を含む全財産を正確に把握しなければならないのです。

ただし相続手続きが煩雑になる

死亡した人の銀行口座をそのまま放置しておくと、後に払い戻しを受ける際、手続きが複雑になることがあります。なぜなら放置された預金口座は、一定期間経過後に通常の口座とは異なる取扱いになるためです。

具体的に、最後の取引日(最終異動日)が2009年以降で、10年が経過した預金は、「休眠口座預金」となり、預金保険機構の管理下に移されます。相続手続きを行うには、休眠口座からの払い戻しに必要な手続きを行わなければなりません。そのため、通常の払い戻し手続きよりも手間がかかります。

ただし、預金残高が1万円以上ある口座は、10年間取引がなくてもすぐに休眠預金にはならず、金融機関から登録住所へ「通知書」が発送されます。しかし、転居先不明などで通知書が届かない場合は、休眠口座として扱われます。相続が発生した時点で既に休眠口座である可能性もあるため、注意が必要です。

さらに、りそな銀行や三菱UFJ銀行など一部の銀行では、一定期間(多くは2年間)利用されていない銀行口座に対して、「未利用口座管理手数料」を徴収しています。残高が手数料に満たない場合、残高全額が引落されて自動解約となることがあります。

以上のように、故人の銀行口座をそのまま放置しておくと、相続手続きが複雑になるだけでなく、休眠口座への移行や手数料の発生など、様々な問題が生じる可能性があります。そのため、故人の銀行口座については早めに確認し、必要な手続きを行うことが重要です。詳細については、各銀行のホームページなどでご確認ください。

銀行の預金口座の相続手続きに期限はない│ただし他の手続き期限に注意

銀行側は、相続発生時の払い戻しや名義変更をいつまでに行うべきかという期限を明確に設定していません。そのため、故人の銀行口座をそのままにしておいても、直接的なペナルティは発生しません。しかし、相続全体に関わる手続きには次のような期限が存在するため、注意が必要です。

特に重要な期限として、故人の死亡から3ヶ月以内に行うべき「相続放棄」と、死亡から10ヶ月以内に行うべき「相続税申告」が挙げられます。相続放棄は、相続人が故人の遺産を一切引き継がないようにする手続きです。もし銀行口座から預金を引き出してしまうと、相続放棄ができなくなるおそれもあるため、慎重な行動が必要です。

また、相続税の申告が必要な場合は、故人の銀行口座の残高を含む相続財産の評価額を確定するために、「残高証明書」を取得しなければなりません。相続税の申告を怠ったり、期限を過ぎたりすると、追加の税金が課されるリスクがあります。

このように、銀行での手続き自体に期限はありませんが、相続全体には期限が設けられています。したがって、故人の銀行口座を含む相続財産に関しては、期限内に必要な手続きを完了させることが重要です。

相続手続きの期限については、下記の記事を参照してください。

銀行口座が凍結されるまでの日数は?いつ凍結される?

家族が亡くなった後、故人の銀行口座はいつ凍結されるのでしょうか。実際、口座が凍結されるまでの期間は一律ではなく、ケースによって異なります。死亡の直後に凍結されることもあれば、数ヶ月経過してもなお凍結されない場合もあります。では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

以下では、銀行口座が凍結されるタイミングや、その理由について詳しく解説していきます。

死亡したからといって即時に銀行口座は凍結されない

人が亡くなった場合、遺族や関係者は死亡の事実を知った日から7日以内に死亡届を役所に提出する必要があります。この手続きは、故人の死亡を公的に記録するためのものです。

しかし、個人情報保護の観点から、役所に提出された情報が銀行に直接知らされることはありません。そのため、死亡届を提出したからといって、故人の銀行口座が自動的に凍結されるわけではないのです。

銀行に亡くなったことを伝えると口座は凍結される

銀行が預金口座の名義人が亡くなったことを知るのは、一般的に遺族からの死亡通知を受けた時です。このため、故人の銀行口座が凍結されるタイミングは、遺族が銀行に死亡を報告した際になります。

銀行側も、新聞の訃報欄や葬儀の情報などを通じて、預金口座の名義人の死亡を把握することがあります。この場合、銀行側から親族に確認を取り、口座を凍結することがあります。

しかし、銀行間で預金口座の名義人の死亡情報が共有されることはありません。そのため、ある銀行に死亡の連絡をして口座が凍結されても、連絡をしていない別銀行の口座は凍結されません。したがって、故人が複数の銀行に口座を持っている場合、遺族はそれぞれの銀行に個別に死亡の通知を行い、必要な手続きを進める必要があります。

銀行が口座を凍結する理由

相続財産を確定させるため

銀行が故人の口座を凍結する主な理由は、相続財産を確定するためです。もし名義人が亡くなった後に、故人の口座に自由に入出金できてしまうと、結果として死亡時点における預金残高を確定することが難しくなります。このような事態を防ぎ、故人の死亡時点の相続財産を確定しやすくするために、銀行は口座を凍結するのです。

相続トラブルを防ぐため

銀行が口座を凍結するもう一つの重要な理由は、相続トラブルを防ぐためです。相続が発生した後でも、自由に口座に入出金できてしますと、キャッシュカードを保持している一部の相続人が勝手に預金を引き出すリスクがあります。預金の勝手な引き出しや使い込みは、相続争いの大きな原因となるおそれがあります。

もし名義人の死亡を知っていながらその口座を凍結せず、結果的に預金が引き出されてしまうと、金融機関側の責任が問われかねません。そのため、故人の死亡が確認された時点で金融機関は速やかに口座を凍結し、相続財産を保護するのです。

銀行口座が凍結されたらどうなる?引き出しや公共料金の引き落としができない

銀行口座が凍結されると、次のような取引が停止し、日常生活に様々な支障をきたすことがあります。

現金引き出しの停止: 口座が凍結されると、故人の口座から預金を引き出すことはできなくなります。これにより、葬儀費用や治療費、入院費など、まとまったお金が必要な場合でも、故人の預金口座から支払うことはできません。

公共料金の引き落とし停止: 口座からの自動引き落としができなくなるため、電気、ガス、水道などの公共料金の支払いが滞る可能性があります。これにより、延滞料が発生したり、最悪の場合、ライフラインが停止したりするリスクがあります。

受取金の振り込み停止: 株の配当金や不動産賃料など、振り込みによる収入も受け取ることができなくなります。

これらの影響を避けるためには、相続人が適切な手続きを行い、故人の資産を引き継ぐことが必要です。なお、故人が未払いであった医療費や公共料金などについても、マイナスの財産(債務)として相続人が引き継ぐことになります。これらは相続税の計算においてプラスの財産から差し引くことができる(債務控除)ため、領収書などを保管し、適切に処理することが重要です。

死亡した人の銀行口座をそのまま放置するデメリット

不正に引き出される可能性がある

銀行口座は、銀行が名義人の死亡を知った時点で凍結されます。裏を返せば、銀行が死亡の事実を把握していなければ口座は凍結されず、キャッシュカードと暗証番号を使って入出金が可能な状態が続きます。このような状況では、名義人以外が簡単に故人の預金を引き出せてしまいます。

実際に、「同居していた兄弟が勝手にお金を引き出して使う」「身に覚えのない名前で毎月自動的に引き落としされる」など、不正な引き出しに関するトラブルが後を絶ちません。これらのトラブルは、故人の銀行口座をそのまま放置することによるデメリットです。

銀行口座の凍結というと、不正やペナルティによるものといった「悪いイメージ」を抱いている方もいるかもしれません。しかし、引き出せる状態が続くと、名義人以外の第三者(相続人も含みます)が遺産を減少させる危険性があるということを理解することが重要です。相続の手続きをすぐに進められない状況であっても、まずは銀行に死亡の連絡をして口座を凍結することで、預金を守ることができます。

相続関係が複雑化すると相続手続きが複雑に

故人の銀行口座を放置することは、遺産相続の手続きを適切なタイミングで行わないことを意味します。相続手続きでは、まず相続財産の洗い出しと共同相続人の調査を行い、その後、遺産を分割するための協議を進めることが一般的です。

相続手続きが完了しない間に共同相続人の誰かが亡くなると、相続関係が複雑化するリスクが高まります。この場合、「数次相続」という状態が発生し、相続権が次の世代に移ります。数次相続により相続人の数が増えると相続手続きはさらに複雑になるため、弁護士など専門家の力を借りることも検討してください。

家族が亡くなったときは、できるだけ早く財産の洗い出しを行い、共同相続人同士でスピーディに話し合いを進めることが重要です。適切なタイミングで協議を行うことで、相続関係の複雑化を防ぎ、スムーズな遺産分割を実現することができます。

休眠口座または口座消滅になる可能性がある

故人の銀行口座が放置される原因として、故人名義の口座がどの銀行にあるかを相続人が把握していないことが挙げられます。前述のとおり、故人の銀行口座の取引が10年以上ないと「休眠口座」となり、権利を失ったり毎年の手数料が発生したりする可能性があります。

さらに、放置された口座には「時効消滅」のリスクもあります。預金債権は、預金者が債権者、銀行が債務者となる契約です。凍結された口座を放置し続けた場合、時効期間の経過により権利が消滅してしまう可能性があります。ただし、時効は銀行が援用(時効の利益を受けると主張すること)して初めて成立します。実務上、銀行が預金に対して時効を援用することはほとんどないため、預金が消滅するリスクは極めて低いと言えますが、法的な可能性としては存在します。

亡くなった人の口座を使い続けるとどうなる?

亡くなった人の口座は使い続けてはいけない!名義変更または解約を

近年、ATMやインターネットバンキングの普及により、銀行窓口での取引が減少しています。暗証番号やパスワードさえ知っていれば、本人でなくても預金を引き出すことが可能です。しかし、口座名義人が亡くなった場合、その口座をそのまま使用し続けることは許されていません。

故人の預金は遺産分割の対象となり、分割が完了するまでは相続人全員の共有財産として扱われます。そのため、預金を引き出す場合は、原則として相続人全員の同意(遺産分割協議の成立)が必要です。もし他の相続人が預金を勝手に引き出してしまった場合、相続争いや法的トラブルに発展するリスクがあります。

相続人は故人の口座を自分名義に変更するか、解約して相続財産を分配する手続きを行います。

相続放棄が出来なくなる可能性がある

亡くなった人の銀行口座を使い続けると、予想外の不利益を被る可能性があります。例えば、故人の預金を引き出して消費してしまった場合、「相続を承認した(単純承認)」とみなされるおそれがあります。一度、単純承認が成立すると相続放棄はできなくなります。この場合、相続人は故人の負債も含めてすべての相続財産を引き継ぐことになります。

そのため、相続財産を調査し、相続するかどうかを決めるまでは、故人の預金を使用しない方が賢明です。なお、葬儀費用を遺産から支払う行為については、一般的な規模の葬儀であれば単純承認に当たらないとされた判例があります。ただし、不相当に高額な場合には単純承認とみなされるリスクがあるため、慎重な判断が求められます。

このように、亡くなった人の口座を使い続けることは、相続手続きにおいて重大な影響を及ぼす可能性があるため、避けるべきです。法律に則った方法で故人の財産を管理し、適切な相続手続きを進めていくことが重要です。

死亡した人の銀行口座をそのままにしておくべきケース

相続放棄をする場合

相続放棄を検討している場合は、故人の銀行口座に一切触れないでおくことが賢明です。相続放棄とは、相続人が相続権を放棄する行為を指し、相続の開始を知ったときから3ヶ月以内に意思表示をすることが原則となっています。

相続放棄を考えているにも関わらず、故人の口座から預金を引き出したり、解約の手続きを進めたりすると、「単純承認」が成立する可能性があります。単純承認が成立すると、故人の負債も含めてすべての財産を引き継ぐことになり、相続放棄はできなくなります。

前述の通り、引き出しの目的が葬儀費用の場合は、例外的に単純承認に当たらないとされるケースもあります。とはいえ、許容されるのは故人の社会的地位などに照らして相当と認められる範囲に限られます。相続放棄を検討している場合には、自己判断で口座に手を付ける前に、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

預金残高が少額の場合

故人の銀行口座の預金残高が極端に少ない場合、相続手続きを行うコストが見合わない可能性があります。戸籍謄本や住民票の取得には費用がかかるほか、手続きには時間や労力も必要となります。また、入出金のない口座は10年経過すると休眠口座になり、最終的には民間公益活動に活用されることになります。

そのため、預金残高が少ない場合には、あえて相続手続きを行わず、口座をそのままの状態にしておくという選択も有効です。

「相続すべきかどうか」「相続手続きにかかる手間やコストに見合う預金残高かどうか」は、遺産の総額や分け方、相続人の数などを総合的に判断してください。

銀行口座の名義人が死亡した際の手続き│死後に解約・名義変更するには

口座名義人が亡くなり口座が凍結されると、故人の名義での口座利用は再開できません。この状況で行えるのは、仮払いの申請や相続手続きを通じての名義変更または解約のみです。

仮払い申請については、後で解説します。

ここでは名義変更または解約する方法について詳しく解説します。

 

銀行口座の名義人が死亡した際の手続き

①銀行への連絡

まずは故人の預金通帳やキャッシュカードから取引銀行や支店名を確認します。その後、電話で銀行に連絡し、手続きの要領や必要書類について確認します。銀行によっては相続専用のフリーダイヤルが設置されている場合もあります。金融機関のウェブサイトに案内がある場合は、そちらを参照して必要書類を事前に準備しておくとスムーズです。

名義人の死亡を銀行に伝えると、ほとんどの銀行はその日のうちに口座を凍結します。口座が凍結されると、公共料金などの自動引き落としサービスに影響が出るため、引落先の変更や解約を検討してください。

②必要書類を準備する

金融機関は正当な権利者であることを確認するため、相続手続きの際には様々な書類の提出を求めます。

  • 遺言書がある場合
  • 遺言書がないが遺産分割協議書がある場合
  • 家庭裁判所の調停証書・審判書がある場合

 

なお、必要な書類は銀行によって異なる場合があるため、手続きを行う前には預金のある銀行に確認してください。

遺言書がある場合の必要書類

・遺言書
・検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
・被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・預金を相続する人の印鑑証明書など

遺言書がないが遺産分割協議書がある場合の必要書類

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書など

家庭裁判所の調停証書・審判書がある場合

・家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
・預金を相続する人の印鑑証明書など

必要書類を提出して解約または名義変更する

必要書類を揃えたら、銀行の窓口に提出します。ただし、銀行によっては郵送での書類提出も受け付けている場合があります。いずれか都合の良い方法を選択してください。

書類に不足や不備がない場合、2週間程度で相続手続きが完了します。手続きが完了すると、普通預金の預金残高は解約後に指定した口座に振り込まれます。定期預金の場合は、名義変更して満期まで保有することも可能です。

相続手続きをする前に銀行口座から引き出すには

故人の口座からの引き出しは、相続手続きを開始する前に慎重に検討する必要があります。

生前に引き出す

口座名義人が生存中であれば、入出金は自由です。可能であれば、故人本人の了承を得た上で、生前に必要な金額を出金するのが望ましいです。

本人が引き出しに行けない場合、委任状が必要になります。金融機関で用紙をもらうか、ウェブサイトからダウンロードして利用できます。本人が認知症などで意思能力が低下しており、委任状を作成できない場合は、成年後見制度(後見・保佐・補助)の利用を検討する必要があります。

そして、生前の出金に際しては、他の家族や相続人に出金の事実を伝えておくことも重要です。出金の目的やお金の使い道が不明だと、後に相続を巡る大きなトラブルに発展するリスクがあります。出金したお金を使った際は、必ず領収書を残しておいてください。これは、後の相続手続きや家族間のトラブル回避のために、お金の使途を証明する重要な証拠となります。

仮払い制度を利用する

入院費の精算や葬式費用の支払いなど、急な資金が必要になった場合、相続預金の仮払い制度を利用することができます。この制度は、相続手続きを経る前に、相続した預金の一部を遺産分割前に引き出すことができる制度です。この制度は、他の相続人の同意は不要で、相続人単独で手続きを行うことができます。

ただし、単独で払い戻しを受ける際には、一定の上限額が設けられています。具体的には、1つの金融機関につき150万円が上限となっており、それを超える引き出しはできません。引き出せる額は、相続開始時の預金残高の1/3に共同相続人の法定相続分をかけた額となります。

預金引き出し上限金額=死亡時の預貯金残高×1/3×仮払いを申請する相続人の法定相続分
※ただし、1金融機関あたりの預金引き出し上限金額は150万円

この制度を利用することで、相続手続きが完了する前でも必要な資金を確保することが可能となり、相続人が一時的に立て替える必要がなくなります。ただし、利用にあたっては、金融機関による条件や手続きの詳細を確認することが重要です。

裁判所に仮払い

預貯金の仮払制度では、引き出し可能な金額に上限が設定されています。この上限を超える金額が必要な場合、裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を請求する必要があります。この手続きにより、預貯金の全部または一部を適法に払い戻すことができます。

この手続きを利用するには、前提として家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てている必要があります。その上で、預貯金の払い戻しが必要である理由(生活費や葬儀費用の支払いなど)を説明し、他の相続人の利益を害さないと認められる必要があります。申立てが認められると、裁判所から仮処分の決定が出され、その決定に基づいて金融機関から預貯金を引き出すことができます。

この方法は、預貯金の仮払制度の上限を超える金額が必要な場合や、遺産分割協議が長期化している場合に特に有効です。ただし、裁判所の手続きを経る必要があるため、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

亡くなった人の通帳がなくても銀行の手続きはできる?

亡くなった人の通帳が見つからなくても、銀行の手続きを行うことは可能です。まず、故人の身の回りを注意深く探しましょう。通帳がない場合でも、銀行から送られてくるはがきや電子メール、封筒などが手がかりになることがあります。これらの郵便物やメールには、金融機関の情報が記載されていることが一般的です。

また、現代ではネット銀行の利用が一般的になっており、最初から通帳が発行されないケースもあります。その場合は、故人が使用していたスマートフォンやパソコンのメール履歴を確認することで、口座を開設している金融機関を特定できるかもしれません。

このように、通帳がなくても他の手段で金融機関の情報を確認できれば、銀行に連絡して相続手続きを進めることができます。

どの金融機関に銀行口座があるか特定できた場合

故人が口座を開設していた金融機関が分かった場合、相続手続きは比較的簡単に進めることができます。金融機関は法律に基づき、口座の取引記録を10年間保存しています。そのため、銀行に照会することで、故人の口座情報を知ることが可能です。

一般的に、金融機関は口座の持ち主以外に口座情報を開示することはありませんが、相続の場合は例外です。相続人であれば、故人の口座の残高証明や取引履歴証明書を金融機関に請求することができます。この手続きは、相続人が複数いる場合でも、全員で行う必要はありません。

手続きの流れは次のとおりです。

  1. 金融機関への連絡: まず、故人の口座がある金融機関に連絡し、口座の有無を確認します。
  2. 書類の請求: 口座が確認できたら、「残高証明書」と「取引履歴証明書」の発行を請求します。

この手続きに必要な主な書類は以下の通りです:

  • 相続人の身分を証明する本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
  • 故人の死亡がわかる戸籍謄本
  • 自分が相続人であることを証明する戸籍謄本など

これらの書類を揃え、金融機関に提出することで、故人の口座情報を入手し、相続手続きを進めることができます。

どの金融機関に銀行口座があるか不明な場合

故人の生前に利用していた金融機関の口座に関する情報が見つからない場合でも、銀行の手続きを行うことは可能です。その際には、以下のステップで進めます:

  1. 金融機関への問い合わせ: 故人の口座の有無は、各金融機関に直接問い合わせて確認します。全ての金融機関を一括で照会するシステムはないため、心当たりのある銀行に一つずつ連絡を取る必要があります。口座が存在しない場合でも、その旨を回答してもらえます。
  2. 必要な情報の準備: 問い合わせの際は、故人の氏名と生年月日を伝えるのが基本です。ただし、金融機関によっては登録住所の確認を求められることもあるため、故人の氏名、住所、生年月日は正確に把握しておきましょう。

「死亡した人の銀行口座をそのままにするとどうなる?」に関するQ&A

Q1.死亡した人の銀行口座を放置しておくとどうなりますか?

A:死亡した人の銀行口座を放置し、最後に入出金などの取引が行われた日から10年が経過すると、「休眠口座」として扱われます。2018年に施行された「休眠預金等活用法」により、これらの預金は民間の公益活動に活用されることになります。

ただし、休眠預金だからといって直ちに権利を失うわけではなく、消滅時効を迎えるさらに10年後までは、一定の手続きを行うことで預金を受け取ったり解約することが可能です。

もし口座に数千円未満の少額しか入っていないという場合であれば、手続き的な負担が大きくなるため、口座をそのまま放置するという選択も合理的です。

Q2.なぜ銀行は亡くなった人の預金口座を凍結するのですか?

A:銀行は、口座の名義人が亡くなったことを確認すると、通常その人の預金口座を凍結します。これには主に2つの理由があります。

  1. 相続人の間でトラブルが発生する可能性を減らすため
    故人の預金は遺産分割の対象となるため、勝手に引き出して使うことはできません。引き出すには、必ず他の共同相続人の同意を得る必要があります。また、引き出したお金を葬儀費用など正当な目的に充てた場合は、自分のために使ったのではないことを証明できるよう、必ず領収書を保管しておいてください。
  2. 相続財産を確定させ、後の手続きをスムーズに行うため
    口座を凍結することで、故人の財産がその時点で確定され、後の相続手続きがスムーズに行えるようになります。

ただし、口座が凍結されると、故人の葬儀代や医療費などの支払いが困難になる場合もあります。このような場合は、銀行に相談して特定の費用の支払いのための仮払いの制度を利用してください。

Q3.相続開始後、凍結前に故人の口座から預金を引き出す際に注意すべき点は何ですか?

A:相続開始後、凍結前に故人の口座から預金を引き出す場合、以下の二点に注意する必要があります。

  1. 他の共同相続人とのトラブル: 故人の預金口座は遺産分割協議の対象であるため、勝手に引き出して使うことは許されません。引き出す前には必ず他の共同相続人の同意を得る必要があります。また、引き出したお金を葬儀費用などに充てた場合は、領収書を保管しておき、自分のために使ったものではないことを証明できるようにしておきましょう。
  2. 相続を単純承認したことになるリスク: 引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります。相続放棄を検討していなければ問題ありませんが、後に負債がプラスの財産よりも大きかったことが判明しても、後から相続放棄はできません。そのため、引き出す際には慎重に検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めるようにしてください。

まとめ

死亡した人の銀行口座に関する手続きを放置すると、様々なリスクが生じます。口座が凍結される前であれば、第三者による不正な引き出しや、長期間放置すれば相続関係が複雑化するリスクがあります。一方で、口座が凍結された後は、生活費の引き出しや公共料金の引き落としができなくなるなど、日常生活に支障をきたす可能性があります。さらに、長期間放置された口座は休眠口座となり、最終的に預金の払い戻しを受けられなくなる可能性もあります。

相続手続きを適切に行うためには、まず故人がどの金融機関に口座を持っていたかを確認し、必要な書類を集めて金融機関に相続の申し立てを行うことが重要です。相続預金の仮払い制度を利用すれば、遺産分割前でも一部の預金を引き出せます。

しかし、相続放棄を検討している場合や、相続人間で遺産分割の協議がまだの場合は、故人の口座に手を付けずに慎重に対応することが必要です。

故人の銀行口座に関する手続きは複雑であり、適切な対応が求められます。相続に関する法律や制度を理解し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、ご自身に最適な方法を選択するようにしてください。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。