相続手続きの流れは?手続き一覧を紹介!手順や期限、必要書類を解説

相続手続き

更新日 2024.06.10

投稿日 2024.05.09

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

誰しもいつかは、家族の死と直面します。いざ相続が始まると、相続手続きがいろいろあるけど何から始めたらよいのか、わからなくなってしまう人も多いでしょう。

この記事では相続手続きの流れを、相続が開始してからやるべき順序に沿って解説いたします。

相続手続きには期限があるものもあります。期限を過ぎてしまうと様々なトラブルが生じるリスクがありますので、期限に注意して計画的に相談手続きを進めましょう。

目次

相続手続きの流れ│相続が開始したらするべきこと

 

相続手続きの流れ│相続が開始したらするべきこと

 

相続開始日は、被相続人が死亡した日となります。この日から相続手続きを開始します。手続きには期限が設けられているものがありますので、期限に注意しながら相続手続きを進めましょう。

相続手続きのやること一覧と期限

相続が開始したらするべきことを一覧にしました。全ての手続きが必要となるわけありませんので、該当する手続きについてのみご確認ください。

相続手続きには期限があるものも多くあります。そのため、全体の流れを把握しつつ計画的に手続きを進めるようにしましょう。

以下では、相続手続きと期限を一覧にしていますので、参考にしてください。

期限

相続手続き内容

死亡を知ったときから7日以内

死亡診断書の受け取りと死亡届の提出

火葬許可証・埋葬許可証の取得

死亡日から10日以内

厚生年金の受給停止手続き

死亡日から14日以内

健康保険・介護保険の資格喪失の手続き

公共料金などの名義変更、解約手続き

国民年金の受給停止手続き

世帯主の変更手続き(被相続人が世帯主かつ残された世帯員が2名以上の場合)

1~3ヶ月以内を目安に出来るだけ速やかに

遺言書の有無の確認

遺言書の検認手続き(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)

相続人の調査

相続財産の調査

遺産分割協議の着手

相続開始を知ったときから3カ月以内

相続放棄の申述

限定承認の申述

死亡日の翌日から4カ月以内

所得税の準確定申告

死亡日の翌日から10カ月以内

相続税の申告・納税

10か月以内を目安に出来るだけ速やかに

遺産分割協議書の作成

相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知ったときから1年以内(または相続開始から10年以内)

遺留分侵害額請求

不動産の所有権を相続したことを知った日から3年以内

不動産の名義変更(相続登記)

死亡日の翌日から5年以内

遺族年金の受給申請

最後の年金支払日の翌月初日から5年以内

未支給年金の請求

遺産相続の期限について、詳しくは、下記記事で解説していますので、こちらをご覧ください。
[遺産相続手続きの期限は?期限を過ぎた場合の対処法も解説]

亡くなってから7日以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから7日以内に行う相続手続きは主に以下の2つです。

  • 死亡診断書の受け取りと死亡届の提出
  • 埋火葬許可申請書の提出と許可証の取得

以下ではそれぞれの相続手続きの内容と手続き先、必要書類等について解説していきます。

死亡診断書の受け取りと死亡届の提出

死亡診断書は、医師が死亡の事実を確認し、記入・発行する書類です。この書類は、死亡届を提出する際に必要となります。受け取る人は、看取った家族が一般的で、お亡くなりになった病院で受け取ることができます。料金は約3,000円から10,000円程度が目安です。

死亡届は、死亡診断書とセットで病院から渡されます。

手続き先

  • 被相続人の本籍地または死亡した場所
  • 届人の本籍地の市区町村役場

必要書類

  • 医師による死亡診断書
  • 届人の印鑑

埋火葬許可申請書の提出と許可証の取得

火葬許可証は、亡くなった方を火葬するために必要な書類です。

通常、死亡届を市区町村役場に提出する際に、窓口担当者から「火葬証明願」という書類を受け取ります。この書類をその場で記入し、提出すると、市区町村役場の窓口で火葬許可証が交付されます。

実際には、多くの場合、葬儀会社が死亡届の提出を代行してくれることが多く、その際には火葬証明願の記入から火葬許可証の取得までを代行してくれます。このため、葬儀の手配を行う際に、火葬許可証の取得についても葬儀会社に相談すると良いでしょう。

亡くなってから10日または14日以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから10日または14日以内に行う相続手続きは主に以下の6つです。

  • 年金の受給手続き│年金受給者死亡届けの提出
  • 健康保険の喪失手続きと保険証の返却
  • 介護保険の喪失手続きと被保険者証の返却
  • 世帯主変更届の提出
  • 公共料金等の名義変更・解約
  • 銀行へ口座凍結の連絡

以下ではそれぞれの相続手続きの内容と手続き先、必要書類等について解説していきます。

年金の受給手続き│年金受給者死亡届けの提出

被相続人が年金受給者だった場合、年金の受給を停止する手続きが必要です。この手続きを行わないと、本来受け取るべきではない年金を受け取ってしまうことになり、不正受給とみなされる可能性があるので注意が必要です。

厚生年金の場合、この手続きは死亡後10日以内に行う必要があります。国民年金の場合は、死亡後14日以内に行う必要があります。ただし、被相続人がマイナンバーを登録している場合は、この手続きは不要で、死亡届の提出時点で自動的に完了します。

手続き先

年金事務所または年金相談センター

必要書類

・年金受給権者死亡届(報告書)

・年金証書

・死亡の事実を証明する書類(死亡診断書のコピー、死亡記載のある戸籍など)

必要書類を揃えて、指定された期間内に手続きを行いましょう。

詳しくは、日本年金機構のホームページ「年金を受けている方が亡くなったとき」を参照してください。

未支給年金と遺族年金の請求も同時に行いましょう

年金受給停止手続きを行う際には、未支給年金と遺族年金の請求も同時に行うことをおすすめします。

未支給年金とは、被相続人が生前に受け取る予定だったがまだ受け取っていない年金、または被相続人が亡くなった月分までの年金を指します。この未支給年金は、被相続人と生計を同一としていた遺族が受け取ることができます。未支給年金の受け取り手続きは年金事務所で行うことができるため、年金受給停止手続きと同時に行うと効率的です。

さらに、被相続人の遺族が遺族年金の給付対象となる場合は、遺族年金の手続きも同時に行いましょう。

健康保険の喪失手続きと保険証の返却

日本では、すべての国民に公的医療保険への加入が義務付けられているため、誰もがいずれかの保険制度(国民健康保険、社会保険、後期高齢者医療制度)に加入しています。そのため、加入者が亡くなった場合には、保険の資格を喪失するための手続きと、保険証の返却が必要となります。

<国民健康保険>

手続き先

被相続人の住所地の市区町村の国民健康保険窓口

必要書類

  • 国民健康保険異動届(資格喪失)
  • 国民健康保険証
  • 高齢受給者証(70歳から75歳までの人の場合)
  • 戸籍謄本など

<社会保険>

手続き先

加入先の保険組合

必要書類

  • 厚生年金保険被保険者資格喪失届
  • 健康保険被保険者証
  • 死亡退職届
  • その他会社から求められた書類 

なお、被相続人の家族が健康保険の扶養に入っていた場合は、亡くなった日の翌日から資格を喪失します。そのため、家族の健康保険証も返却しましょう。そして、新たに国民健康保険への加入手続きを行うか、他の家族の扶養になる手続きをしましょう。

葬祭費の申請も同時に行いましょう

被相続人が加入していた健康保険によっては、遺族が葬祭費や埋葬料を請求できる制度があります。請求期限は2年以内と比較的余裕がありますが、健康保険の資格喪失手続きと同時に行うことで、手続きをスムーズに進めることができます。

介護保険の喪失手続きと被保険者証の返却

被相続人が65歳以上であったり、40歳以上65歳未満で要介護・要支援の認定を受けていた場合、その方の介護保険被保険者証は死亡後14日以内に返却する必要があります。また、被保険者証の返却と同時に、「介護保険資格喪失届」の提出も必要となりますので、忘れずに行いましょう。

手続き先

被相続人の住所地の市区町村役場の介護保険窓口

必要書類

  • 介護保険資格喪失届
  • 介護費保険者証

なお、介護保険の資格喪失手続きを行った後、保険料の未納分や払い過ぎがないかが再計算されます。もし未納分がある場合は、相続人がその不足分を納める必要があります。一方、払い過ぎがある場合は、相続人に還付金が支払われます。このように、介護保険の手続きを通じて、保険料の精算が行われます。

世帯主変更届の提出

被相続人が世帯主であった場合、世帯主が変更となるため「世帯主変更届」の提出が必要です。しかし、次の世帯主が明らかな場合や、世帯に誰も残っていない場合は、この手続きは不要です。

提出が遅れると、5万円以下の過料が課せられることがあるので注意が必要です。

手続き先

被相続人の居住地の市区町村役場

必要書類

  • 世帯主変更届(住民異動届)
  • 本人確認書類(保険証や運転免許証など)
  • 印鑑
  • 委任状など

公共料金等の名義変更・解約

公共料金等の名義変更や契約などは、明確な期限はありませんが、14日以内を目安に出来るだけ速やかに行いましょう。

以下に、主な手続きについてまとめましたので参照のうえ、忘れずに手続きするようにしましょう。

手続き内容

手続き先

必要書類 

公共料金(電気、ガス、水道など)の名義変更・解約

電力会社、水道局、ガス会社など

口座振替依頼書など

(詳細は各契約会社に確認)

クレジットカードの名義変更・解約

各カード会社

被相続人の戸籍謄本など

(詳細は各契約会社に確認)

携帯電話・固定電話・ネットなどの名義変更・解約

各契約会社

被相続人の戸籍謄本など

(詳細は各契約会社に確認)

運転免許証の返却

最寄りの警察署

運転免許証、死亡診断書、戸籍謄本、届出人の本人確認書類、認印など

パスポートの返却

都道府県の申請窓口またはパスポートセンター

パスポート、死亡診断書、戸籍謄本など

銀行へ口座凍結の連絡│14日~1ヶ月以内を目安に出来るだけ速やかに

被相続人の金融機関の口座を凍結する手続きが必要です。口座は遺族からの連絡がない限り自動的に凍結されることはありません。口座を凍結する主な目的は、特定の相続人による預金の不正使用などのトラブルを防ぐためです。

ただし、口座を亡くなった直後に凍結してしまうと、葬式費用や入院費用などの支払いに困る可能性があるため、葬祭費用や入院費用の支払いが終わる見込みが立ったら、死亡日からおよそ1ヶ月程度までに手続きを行うようにしましょう。

手続きを行う際は、法定相続人が取引のあった銀行に連絡をします。手続き方法は各金融機関によって異なる場合がありますので、事前に金融機関に問い合わせて確認すると良いでしょう。

亡くなってから3ヶ月以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから3ヶ月以内に行う相続手続きは主に以下の5つです。

  • 遺言書の有無の確認と検認手続き
  • 相続人調査
  • 相続財産の調査
  • 限定承認や相続放棄の検討
  • 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

以下ではそれぞれの相続手続きの内容と手続き先、必要書類等について解説していきます。

遺言書の有無の確認と検認手続き│公証役場、家庭裁判所で実施

遺産相続を開始する際は、まずはじめに遺言書の有無を確認します。なぜなら遺言書の有無によって手続きの進め方が変わってくるからです。

遺言書がある場合は、遺言に従って相続人を決定し、遺産を分割します。遺言書がない場合は、まず相続人を調査して法定相続人を確定するところから始め、遺産分割協議も必要となります。

遺言書には以下の3種類があります。

 

遺言の特徴

確認方法

公正証書遺言

遺言者が公証役場で遺言内容を口述し、公証人が作成した遺言です。

公証役場で保管されており、公証役場で内容を確認できる。

秘密証書遺言

遺言内容を秘密にしたまま、遺言の存在のみを公証役場で公証人に証明してもらった遺言です。

公証役場で遺言書の存在の有無を確認することができます。実際の内容は公証役場では確認できないので、自宅や貸金庫などを探しましょう。

自筆証書遺言

遺言者が自筆で作成した遺言です。

2020年7月以降、法務局で保管できるようになりました。まず法務局で遺言書の有無を確認します。

なかった場合は、自宅や貸金庫などを探しましょう。

公正証書遺言以外の遺言書が見つかった場合は、偽造や変造を防ぐために家庭裁判所で「検認」と呼ばれる手続きが必要です。遺言書を検認せずに開封したり、遺産相続手続きを進めたりすると、5万円以下の過料が課されることがありますので注意しましょう。

遺言書の検認の手続き先と必要書類は以下のとおりです。手続きは、遺言書の保管者または遺言書を見つけた相続人が行います。

手続き先

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所

必要書類

  • 遺言書の検認申立書
  • 遺言書
  • 戸籍謄本など

費用

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(金額、内訳は管轄の家庭裁判所に確認)

相続人調査│市役所で戸籍を取得

遺言書がない場合や、遺言書で遺産の分割方法が定められていない財産がある場合、法定相続人が協議を通じて遺産分割の方法を決定する必要があります。全ての法定相続人が揃っていない状態での協議は無効となるため、遺産分割協議を進める前に相続人を確定させることが最優先となります。

法定相続人については、下記記事を参照してください。
法定相続人とは?範囲と順位・相続割合について詳しく解説

思いがけず意外な人物が相続人として現れる可能性もあるため、連絡を取り合っている親族だけでなく、広範囲に調査を行うことが必要です。

なお、収集した被相続人の戸籍や相続人の戸籍は、預金の払い戻し手続きや不動産登記などで必要となります。

相続人調査の進め方

①被相続人の死亡から出生までのすべての戸籍謄本を取得する
相続人を調査するには、まず被相続人の死亡から出生に至るまでのすべての戸籍謄本を取得します。この戸籍謄本の情報をもとに、被相続人の子供、両親、兄弟など、相続人の候補となる人物を特定します。

もし本来相続人となるべき人が既に亡くなっている場合は、その人の相続人をさらに特定することで、相続人の範囲を確定していきます。

手続き先

被相続人の本籍地の市役所

費用

  • 戸籍謄本 450円
  • 除籍謄本、改製原戸籍 750円

②法定相続人を確定させる
被相続人の配偶者は、常に相続人となります。

次いで、民法で定められた相続順位の高い人が法定相続人として遺産を受け取る権利を持ちます。具体的な順位は以下のとおりです。

第1順位 子ども(子が死亡している場合は孫)
第2順位 両親(両親が死亡している場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪)

相続人調査は一見単純に見えますが、結婚や離婚、養子縁組などで転籍を繰り返している場合は、複数の役所から戸籍謄本を取得する必要があります。さらに、相続人が既に亡くなっている場合は、その人の相続人の戸籍も確認する必要があり、取得する戸籍の範囲が広がります。

戸籍謄本は、本籍地の役所でのみ取得できるため、他の市や県に行く必要がある場合は、取り寄せることになります。

もし時間的な余裕がない場合や、自分での書類収集に不安がある場合は、弁護士に依頼すると良いでしょう。弁護士は依頼者に代わって必要な書類を集めてくれます。

相続財産の調査│銀行や法務局で調査

次に、被相続人が残した財産の内容も明らかにする必要があります。

相続財産は多岐にわたり、土地や建物といった不動産、預金や生命保険の積立金などの金銭債権、株式や投資信託といった有価証券、貴金属など、さまざまな資産があります。

さらに、相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金や住宅ローンといったマイナスの財産も考慮する必要があります。

相続財産の調査の進め方

主な調査項目と調査方法は以下のとおりです。

①現金・預貯金の調査

現金は財布の仲や自宅の金庫、銀行の貸金庫に保管されている全てのお金を調査します。

また、預貯金の取引履歴を調べます。そうすると、保険契約など他の財産も明らかになることがあります。調査を行うには、被相続人が使用していた通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物、インターネット口座などを確認して、預けている金融機関を特定します。

金融機関に相続開始時点の取引歴明細書や残高証明書の発行を依頼しましょう。

<預金の調査で確認すべきこと>

預金調査で通帳や取引明細書を取得できたら、以下のような取引がないか確認しましょう。

  • 生命保険料・年金保険料の引き落とし(生命保険や年金契約の有無)
  • 株式等の配当金の振り込み(株式等保有の有無)
  • 貸金庫使用料の引き落とし(貸金庫への預け入れの有無)
  • 固定資産税等の引き落とし(不動産の所有の有無)

②有価証券の調査

被相続人名義の株式、投資信託、ゴルフの会員権などの有価証券を所有しているかどうかを調査します。預貯金と同様に、郵便物やネット口座などを確認して金融機関を特定します。

③不動産の調査

被相続人が所有していた不動産は、固定資産税の納税先である役所が発行する名寄帳で確認することができます。

また、被相続人の自宅に保管されている売買契約書や権利証などの書類からも、所有している不動産を確認できる場合があります。

④負債の調査

被相続人が生前に第三者から借り入れていた借金も、相続財産の一部として考慮されます。たとえば、住宅ローンや消費者ローンなどは、貸し手である銀行や貸金業者に詳細な明細書を発行してもらうことで、どれほどの負債があるかを調査します。

また、相続人の調査と同じく、相続財産の調査も弁護士に依頼することができます。時間的な余裕がない場合や、自分だけでの確認に不安がある場合は、弁護士に依頼することを検討してみてください。

手続き先

  • 銀行や証券会社
  • 役所や法務局

費用

  • 残高証明書、取引履歴明細書 金融機関に確認
  • 名寄帳 300円
  • 登記簿謄本 500円~600円程度

限定承認と相続放棄の検討

相続財産が確定できたら、相続には相続するかどうかを選択することができます。

選択肢は主に「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つです。限定承認と相続放棄は3ヶ月以内に手続きをする必要があるので注意してください。

①単純承認

被相続人の財産(プラス・マイナスの両方)をそのまま引き継ぐ方法です。

特別な手続きは不要で、3ヶ月以内に相続放棄や限定承認を行わなければ、自動的に単純承認したとみなされます。

また、熟慮期間中に相続財産を処分したり使用したりすると、単純承認したとみなされます。

②限定承認

プラス財産の範囲内でマイナス財産を引き継ぐ方法です。

共同相続人全員の同意が必要で、実際にはあまり利用されていません。

③相続放棄

相続人の権利を放棄し、プラス財産もマイナス財産も一切引き継がない選択です。家庭裁判所に相続放棄の手続きを行うことで、相続人から除外されます。

どの方法を選択するかは、被相続人の財産状況や相続人の意向により異なります。判断が難しい場合は、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

遺産分割協議と遺産分割協議書の作成

遺言書が存在しない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人と相続財産が確定した後に、「遺産分割協議」を行う必要があります。遺産分割協議では、相続人全員が集まって、遺産をどのように分けるかを話し合います。

遺産分割協議には厳密な期限は設けられていませんが、相続税申告は被相続人の死亡から10ヵ月以内に行う必要があるため、遺産分割協議はできるだけ早く開始することが望ましいです。

相続人全員が協議内容に合意できたら、「遺産分割協議書」に協議の結果を記録し、署名と実印を押して正式に文書化しておきます。遺産分割協議書は法的には必ず必要ではありませんが、口頭の約束だけでは後にトラブルの原因となることがあるため、必ず作成するようにしましょう。

遺産分割協議の進め方や書き方についてが、下記記事を参照してください。
遺産分割協議書とは?作成方法や書き方について解説!
遺産分割とは?遺産の分け方と手続きの流れ│相続との違いも

亡くなってから4ヶ月以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから4ヶ月以内に行う相続手続きは主に以下の1つです。

  • 所得税の準確定申告

所得税の準確定申告│税務署に確定申告書と必要書類を提出

もし被相続人が生前に確定申告をすべきだった場合は、相続人が代わりに被相続人の亡くなった年の所得に対する確定申告を行う必要があります。これを「準確定申告」と言います。

準確定申告は、相続が開始されたことを知った日の翌日から4ヵ月以内に完了させる必要があります。期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などの追加の税金がかかることがあるので注意が必要です。

準確定申告が必要なケースは、被相続人が以下のような場合です。

  • 事業所得がある場合(事業主やフリーランスなど)
  • 不動産所得がある場合
  • 年収が2,000万円以上の場合
  • 2箇所以上の会社から収入がある場合
  • 公的年金を年間400万円以上受け取っていた場合
  • 給与や退職金以外で年間20万円以上の収入があった場合
  • 生命保険の満期金や一時金を受け取った人

準確定申告の手続きでは、通常の確定申告書と同じ様式の書類を使用します。作成した確定申告書を、必要書類とともに税務署に提出して手続きを進めます。

手続き先

税務署

必要書類

  • 確定申告書、付表
  • 源泉徴収票など

準確定申告の具体的な手続き方法について国税庁ホームページ「納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」を参照してください。

亡くなってから10ヶ月以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に行う相続手続きは主に以下の3つです。

  • 相続税の申告・納税
  • 相続登記(2024年4月1日から期限が3年以内に)
  • 預金や有価証券等の名義変更

相続税の申告・納税

相続した遺産の総額が基礎控除額を超える場合、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。

たとえ遺産分割協議がまとまっていないとしても、期限までの申告・納税が必要です。その場合は暫定的な金額で申告・納税することになります。

申告期限を過ぎてしまったり、実際に受け取った相続財産の額より少なく申告したりすると、本来の税金に加えて加算税や延滞税が課されることがあります。

相続税申告は専門的な知識が必要となり、時間も精神的な負担も大きいため、弁護士や税理士に依頼することをお勧めします。

不動産の名義変更手続き(相続登記)│法務局に申請書を提出

被相続人が不動産を所有していた場合は、不動産の名義変更手続き「相続登記」が必要です。

相続登記は2024年4月1日より義務化され、不動産を取得したことを知ってから3年以内に手続きをしないと、10万円以下の過料対象となることがあります。

登記せずに時間が経過すると、二次相続や三次相続が発生した際に権利関係が複雑化し、さらに手続きが複雑になる可能性があります。

そのため、遺言や遺産分割協議によって不動産の権利関係が明らかになった時点で、速やかに相続登記を行うようにしましょう。

手続き先

不動産の所在地を管轄する法務局

必要書類

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、住民票除票または戸籍附票
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 遺言など

費用

登録免許税 不動産固定資産税評価額の0.4%

相続登記の手続きは複雑ですので、専門家である弁護士や司法書士に依頼することを検討してください。

預金の名義変更手続き│銀行に必要書類を提出

被相続人が取引していた銀行や証券会社などの金融機関には、解約(払い戻し)や名義変更の手続きが必要です。明確な期限はありませんが、預金を相続する人が確定したら出来るだけ速やかに手続きを行いましょう。

金融機関によって要求される書類は異なることがありますが、通常は、相続人全員の署名と印鑑が押された「相続手続き依頼書」が求められます。

また、遺言書、遺産分割協議書、家庭裁判所の調停調書・審判書の有無によって、預金の相続手続きに必要となる書類が異なります。以下にそれぞれのケースにおける必要書類をご紹介します。

ただし、金融機関によって必要書類は異なりますので、必ず取引先の銀行にお問い合わせのうえお手続きください。

遺言書がある場合の必要書類

  • 遺言書
  • 検認調書または検認済証明書(公正証書遺言以外の場合)
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍謄本
  • 預金を相続する人の印鑑証明書など

遺言書がない場合の必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書

家庭裁判所の調停証書・審判書がある場合

  • 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本
  • 預金を相続する人の印鑑証明書

亡くなってから1年以内に行う相続手続き

被相続人が亡くなってから1年以内に行う相続手続きは主に以下の1つです。

  • 遺留分侵害額請求

遺留分侵害額請求の手続き│裁判所に申立てを

遺留分侵害額請求とは、遺留分を侵害する相続や生前贈与があった場合、遺産を多く受け取った人に対して、遺留分相当額の金銭を請求する手続きです。

法定相続人である配偶者、子供、親には、最低限受け取れる遺産の権利、すなわち遺留分が保証されています。

ただし、遺留分の請求ができるのは以下の期間内に限られます。

  • 相続開始と遺留分侵害を知った日から1年以内
  • 相続開始から10年以内

遺言の内容で遺留分が侵害されていると感じた場合は、遺留分侵害額請求を行うことを検討しましょう。

遺留分侵害額請求の手続きは、相手方の住所地の家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に遺留分侵害額請求の申立てを行います。

手続き方法について詳しくは、下記記事を参照してください。
遺留分侵害額請求とは?調停・訴訟の手続きなど請求の流れを解説

まとめ│弁護士法人あおいは相続手続き代行サービスを実施

相続手続きでは、被相続人の相続人・財産の特定、相続税の申告、預金・不動産の名義変更など、多岐にわたる手続きが必要です。

これらの手続きの多くには期限が設定されており、期限を過ぎると追徴課税や権利の喪失といったペナルティが発生する可能性があるため、注意が必要です。

相続手続きは、やるべきことが多岐にわたり、すべての手続きをやりきるまでに1年以上かかることもあります。さらに法律の知識が必要になるため、相当な労力と時間が必要となります。

当事務所では「相続手続き代行サービス」を行っております。面倒な手続きはすべて専門家におまかせください。

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代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。1,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。