相続登記はいつまでにする?2024年4月1日からの義務化で期限が設定された!

相続手続き

更新日 2024.10.02

投稿日 2024.07.29

監修者:弁護士法人あおい法律事務所

代表弁護士 雫田雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

弁護士法人あおい事務所の相続専門サイトをご覧いただき、ありがとうございます。当サイトでは、相続に関する法的な知識を分かりやすくお届けしております。皆様のお悩みの解消に少しでもお役立ちできましたら幸甚です。

2024年4月1日から相続登記が法的に義務化され、相続発生後3年以内の登記が必須となりました。これまで、相続登記の期限は特に定められておらず、多くの場合が所有者の裁量に委ねられていましたが、新たな法律により適切な期限内に手続きを完了しなければ罰則が適用されるようになります。

この記事では、登記を行うための具体的な期限、新しい義務化の詳細、手続きの流れなどについて詳しく解説しています。また、相続登記を怠ることのリスクや、不動産の売却上の問題点も説明します。相続登記の期限を守り、早期に対応することで将来的なトラブルを防ぎましょう。

目次

相続登記の期限はいつまで?3年以内にしなければ罰則も!

法改正前(2024年3月1日まで)は期限はなかった

2024年4月1日以前は、相続登記に特定の期限が設けられておらず、不動産を相続した人々は自由に、好きなタイミングで登記を行うことができました。この柔軟性により、多くの相続人が手続きを先延ばしにしており、特に急を要する理由がなければ、罰則を受けることもありませんでした。

法改正後(2024年4月1日から)は期限が3年以内に設定された!│相続登記の義務化

2024年4月1日から、相続登記に関する法律が新たに施行され、相続人は不動産を相続した事実を知った日から3年以内に相続登記を完了させなければなりません。また、遺産分割協議によって不動産を取得した場合も、協議が成立した日から3年以内に登記を行う必要があります。

  • 不動産を相続した事実を知った日から3年以内 
    または
  • 遺産分割協議が成立した日から3年以内

この3年という期限を過ぎても相続登記を行っていない場合、正当な理由がない限り、10万円以下の過料が科される罰則が適用されます。この新しい制度は、不動産の権利関係を明確にし、所有者不明の土地の問題を減少させることを目的としています。

改正前(2024年3月以前)の過去の相続も対象!

この法改正により、2024年4月1日以前に発生した相続であっても、相続登記が必要となり、義務化の対象となります。具体的な期限は以下の通りです。

  • 相続で所有権を取得した人は、不動産取得を知った日から3年以内。
  • 遺産分割協議で不動産を取得した人は、遺産分割協議の成立日から3年以内。
  • これらの日付よりも、法律施行日から3年後(2027年3月31日)の日付の方が遅い場合は、その日が期限。

例えば、2023年5月1日に亡くなった被相続人の遺産分割協議が2023年7月1日に終了した場合、その3年後は2026年7月5日ですが、施行日から3年後の方が遅いので、期限は2027年3月31日となります。

また、施行日以後に遺産の存在を知った場合は、その知った日から3年が期限です。

2027年3月31日までに放置されている不動産がある場合、この期限までに必ず登記を完了させるようにしましょう。

相続登記の期限に関する重要なポイント

正当な理由なく手続きを怠ると10万円以下の過料も

相続登記の義務化は、2024年4月1日から始まりますが、これには罰則が設けられています。具体的には、相続人が不動産を相続したことを知ってから3年以内に登記を行わない場合、正当な理由がなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。

ただし、正当な理由がある場合はこの義務から免除されることがあります。法務省の通達(令和5年9月12日法務省民二第927号)によると、正当な理由として考慮される具体的な状況は以下の通りです。

  1. 相続人が多数で、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に時間がかかる場合 
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
  3. 相続登記等の申請義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  4. 相続登記の義務者がDV被害者などであり、生命や心身への危害が恐れられる場合 
  5. 経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

これらの条件に該当しない場合でも、登記官は個々の事情を総合的に評価し、正当な理由の有無を判断します。

一方で、「遺産分割協議がまとまらない」や「相続人の行方が不明である」などの事情では、基本的には過料が適用される可能性があると考えるのが賢明です。

過去に相続した不動産も対象

相続登記の義務化に関する法改正において、特に注意すべき点は、法改正以前に発生した相続についてもこの新法が適用されるということです。具体的には、「民法等の一部を改正する法律 附則」に記載されており、この点について簡潔に説明します。

民法等の一部を改正する法律 附則
第5条
6 第二号新不動産登記法第七十六条の二の規定は、第二号施行期日前に所有権の登記名義人について相続の開始があった場合についても、適用する。この場合において、同条第一項中「所有権の登記名義人」とあるのは「民法等の一部を改正する法律(令和三年法律第  号)附則第一条第二号に掲げる規定の施行の日(以下この条において「第二号施行日」という。)前に所有権の登記名義人」と、知った日」とあるのは「知った日又は第二号施行日のいずれか遅い日」と、同条第二項中「分割の日」とあるのは「分割の日又は第二号施行日のいずれか遅い日」とする。
引用:法務省「民法等の一部を改正する法律」

法改正前に相続が発生し、その不動産の所有権の取得や遺産分割協議が完了していた場合でも、施行日である2024年4月1日から3年以内、つまり2027年3月31日までが登記の期限となります。これは、法改正が施行される日が相続登記の期限の起点となるためです。

一方で、法改正前に相続は発生していたものの、その不動産の取得をまだ知らなかった場合、不動産取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。このケースでは、不動産を取得したことを知った日が登記の期限の起点となります。

このように、相続登記の義務化に伴う法改正では、すでに起きている相続に対しても遡及的に期限が設定されているため、過去の相続についても登記の必要性を改めて確認し、適切な手続きを進めることが重要です。

期限までにするべき相続登記の手続き

今後、不動産を相続や遺贈により取得した場合、相続登記を期限内に行うことが法的に義務化されます。相続登記、正式には「相続を原因とする所有権移転登記」と呼ばれます。ここでは、相続登記の手続き方法の流れをわかりやすく解説していきます。

戸籍謄本など相続登記に必要な書類を収集する

相続登記を完了させるためには、さまざまな書類の準備が必要です。まずは、被相続人に関連する書類から収集を開始しましょう。これには、被相続人の死亡を証明する除籍謄本、改製原戸籍、または住民票の除票が含まれます。これらの文書は、被相続人が法的に亡くなったことを証明するために不可欠です。

次に、相続人の身分を証明する書類が必要です。これには戸籍謄本や住民票が含まれ、これらは相続人が被相続人とどのような法的関係にあるかを明らかにします。これは、相続権があるかどうかを確認する上で重要です。

さらに、相続登記には固定資産税評価証明書や遺産分割協議書、印鑑証明書も必要となります。これらの書類は、不動産の評価や相続人間の合意、そして権利関係の確認に不可欠です。

必要書類が揃ったら、法務局の公式サイトから適切な登記申請書の様式をダウンロードしてください。相続の状況によって(例えば遺言による相続か遺産分割協議による相続か)申請書の様式が異なるため、状況に合ったフォームを選ぶことが重要です。

【相続登記の必要書類】

 必要書類

書類の取得先

登記申請書

法務局

法務局ホームページからもダウンロード可

不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)

法務局

被相続人の出生から死亡までの⼾籍謄本及び除籍謄本 

被相続⼈の本籍地の市区町村役場など

被相続⼈の住⺠票の除票または戸籍の附票

被相続⼈の最後の住所地の市区町村役場(⼾籍の附票は被相続⼈の本籍地の市区町村役場)

相続人全員の⼾籍謄本または抄本

各相続⼈の本籍地の市区町村役場

不動産を相続する人の住民票

相続人の居住地の市町村役場

固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書 

土地や建物の所在地の市町村役場

 遺産分割協議書

 相続人全員で押印・署名のうえ作成

 相続人全員の印鑑証明書

 相続人の居住地の市町村役場

遺言書(自筆証書遺言の場合は検認済証明書)

※遺言により取得した場合

登記申請書と必要書類、費用を法務局に提出する

必要書類を揃えて、登記申請書を作成し、登記申請書に登録免許税の支払いのための印紙を添付します。それらを法務局窓口に提出し申請手続きを行います。

登録免許税は不動産の固定資産税評価額に基づいて計算され、この税額は固定資産税納税通知書で確認できます。計算方法は固定資産評価額の千円未満を切り捨てた後に0.4%を乗じ、その結果の百円未満を切り捨てます。

税の印紙は法務局で購入することが可能ですので、申請書を提出する際には現金を持参しましょう。最後に、これらの書類を不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。

相続登記にかかる必要について詳しくは、下記記事を参照してください。

登記完了証を受け取る

法務局への申請後、登記手続きが進行し、一般的には1週間から10日程度で完了します。この手続きは、申請内容が適切であるか、提出された書類に不備がないかなどが検討された後に進められます。

登記が無事に完了すると、法務局から「登記完了証」や「登記識別情報通知書」などの重要な書類が送付されます。これらの書類は、相続登記が正式に完了したことを証明するものであり、不動産の法的な所有権が相続人に移転されたことを公的に示します。

受け取った登記完了証や登記識別情報通知書は、将来的な不動産の取引や法的な問題が生じた際に必要となるため、大切に保管する必要があります。これらの書類の到着をもって、相続登記の手続きは完了となります。

登記が完了した後は、これらの書類を基に不動産の管理や売却などを進めていくことができます。

3年を過ぎる場合は「相続人申告登記」を

遺産分割がスムーズに進む場合は、相続登記を3年以内に行うことで法的な要求を満たし問題ありません。しかし、遺産分割協議が難航している状況では、相続登記を行うことが困難になります。

特に、相続人間の意見の不一致、連絡が取れない相続人がいる場合、または遺産の内容に関する不明瞭な点がある場合などが挙げられます。これらの問題は、登記を行う上で大きな障害となり得ます。

このような状況では、弁護士や司法書士の助けを借りることが望ましいです。専門家は遺産分割協議を円滑に進めるサポートを提供し、必要な書類の準備や手続きの進行を助けます。

また、相続登記を行う際には、遺産分割協議が未定でも「相続人申告登記」を利用することで一時的に義務を免れることができます。

つまり「相続人申告登記」を行うことで、法定の3年間の期限内に相続登記を完了させる必要が一時的に免れます。この措置は、特に遺産分割協議が長引く場合や、すぐに相続登記を行うことが難しい状況にある相続人にとって有益です。

ただし、相続人申告登記はあくまで一時的な措置であり、正式な所有権移転のための相続登記とは異なります。そのため、遺産分割協議が終了した後は、その協議日から数えて3年以内に正式な相続登記を行う必要があります。この最終的な登記を怠ると、最初に得た一時的な義務免除の効果が失われ、10万円以下の過料が科される罰則の対象になる可能性があります。

不動産を相続するか迷う場合は「相続土地国庫帰属制度」を

相続によって手に入れた土地をどうするか悩む場合、特に利用計画がなく、誰もその土地を引き継ぎたくない状況であれば、「相続土地国庫帰属制度」を利用する選択肢があります。この制度は2023年4月27日にスタートした比較的新しいもので、使わない土地を国に引き渡すことができます。

この制度を利用すれば、望まない土地を国に引き取ってもらうことにより、所有者としての負担を解消することが可能です。所有者が負担する固定資産税や、土地のメンテナンス費用などの経済的な負担を軽減することができます。ただし、この制度を利用するためには、一定の負担金を支払う必要があります。

また、この制度を利用するにはいくつかの条件があります。まず、土地の評価額に基づいて、将来10年間の管理費用を国に支払う必要があります。また、すべての土地がこの制度の対象になるわけではありません。建物が建っている土地、土壌汚染が確認された土地、担保権が設定されている土地、通行権が存在する土地、権利争いがある土地は、国庫帰属の対象外です。

売却が難しく、管理も煩わしいと感じる「要らない土地」がある場合には、相続土地国庫帰属制度の利用を検討することをお勧めします。

相続登記の期限に関するQ&A

Q: 期限までに相続登記をしなければどのようなデメリットがありますか?

A: 相続登記を行わないと、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  1. 不動産の売却が困難に: 相続登記がされていないと、不動産の所有者が誰か明確でないため、売買契約を結ぶことができません。これにより、相続不動産を売却したい場合でも手続きを済ませる必要があります。
  2. 抵当権の設定が不可能に: 相続登記がされていない場合、金融機関はその不動産を担保として受け入れることができません。これにより、不動産を担保にした融資を受けることが困難になります。
  3. 相続手続きが複雑化: 相続登記をしないまま次の相続が発生すると、関係者の数が増え、権利関係が複雑になります。これは、手続きの遅延や追加の費用発生につながることがあります。

Q: 相続登記にかかる費用はどれくらいですか?

A: 相続登記にかかる費用は主に次の3つです。

  1. 登録免許税: この税は不動産の固定資産評価額に基づいて計算され、税率は0.4%です。例えば、固定資産評価額が5,000万円の不動産であれば、登録免許税は20万円が必要となります。
  2. 司法書士報酬: 相続登記を司法書士に依頼する場合、その報酬として一般的には約10万円が目安です。
  3. その他の手数料: 必要書類の取得にかかる費用として、数千円程度が必要になります。これには戸籍謄本の取得費用や印紙代などが含まれます。

Q: 相続登記の義務化後、不動産を相続した場合の登記申請の期限はいつですか?

A: 相続登記の義務化後、不動産を相続した場合の登記申請の期限は、具体的な日付によって異なります。

  1. 2024年3月31日までに不動産を相続した人: これらのケースでは、2027年3月31日までに相続登記の申請を行う必要があります。この期間内に登記を完了させないと、法的な罰則が適用される可能性があります。
  2. 2024年4月1日以降に不動産を相続した人: この場合、不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。期限内に登記を行うことで、不動産の法的な所有権を確実に移転させることが可能です。

また、遺産分割協議がまとまらないなどの理由で期限内に相続登記を行えない場合は、「相続人申告登記」を利用することが推奨されます。この手続きによって、一時的に罰則を免れることができます。

まとめ

記事を通じて、相続登記の新たな義務とその期限について詳しく解説しました。

2024年4月1日に施行された法改正により、相続登記が法的に義務化されました。この改正法では、相続発生後3年以内に登記を完了させなければ、最大10万円の過料が課される可能性があります。また、この義務化は法改正前に発生した相続にも適用されるため、以前から未登記の不動産を保有している場合でも、期限内に登記を行う必要があります。

相続登記を自力で行うには戸籍謄本や住民票などの書類が必要ですが、手続きの複雑さや時間的制約から専門家に依頼することも一つの選択肢です。特に、登記申請書の書き方や税金の計算が難しい場合、弁護士や司法書士の支援を受けることで、手続きの正確さと迅速性を確保することができます。

この法改正は、不動産の所有権の明確化を目的としており、適切な手続きを通じて将来的なトラブルを防ぐためにも、期限内に相続登記を行うことが非常に重要です。相続が発生したら、適切な対応を心掛けましょう。

この記事を書いた人

弁護士法人あおい法律事務所
代表弁護士

雫田 雄太

略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。

家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。