遺族年金の請求手続きの方法は?期限や必要書類、請求書の書き方も紹介!
愛する家族を失った後、遺族年金の手続きは心身共に大変なものです。しかし、適切な手続きを踏むことで、遺族年金を受け取ることができ、経済的な不安を軽減することができます。
この記事では、遺族年金の請求手続きに関する基本的な流れや必要書類、期限について詳しく解説します。また、請求書の書き方も紹介し、初めて手続きを行う方にも分かりやすく説明します。
遺族年金の受給にあたっては、正確な情報をもとに迅速かつ確実に進めることが重要です。これから紹介する情報を参考にして、スムーズに手続きを進めていただければ幸いです。
目次
そもそも遺族年金とは│遺族基礎年金と遺族厚生年金がある
遺族年金とは、国民年金や厚生年金、または共済年金に加入している人が亡くなった際、その人によって生活を支えていた遺族に支給される年金です。これには大きく分けて二つの種類があります。遺族基礎年金と遺族厚生年金です。
まず、遺族基礎年金は、国民年金の加入者が亡くなった場合に、その人によって生計を立てていた遺族に支給されます。特に、子供のいる配偶者や子供が対象となりますが、子供のいない配偶者には支給されません。これは主に、子供の生活を保障するための年金です。
次に、遺族厚生年金について説明します。厚生年金の第2号被保険者である会社員や公務員が亡くなった際に支給される年金で、遺族基礎年金と併せて受給できる場合があります。遺族厚生年金は支給対象が広く、配偶者や子供だけでなく、場合によっては両親や孫にも支給されることがあります。これにより、被保険者の生活を支えていた幅広い家族が経済的な支援を受けることができます。
遺族基礎年金と遺族厚生年金について、詳しい受給要件や金額などについては下記記事を参照してください。
遺族年金の請求手続き期限はいつまで?
遺族年金の請求期限は、生計を維持していた人が亡くなった翌日から5年です。 この期間内に手続きを行わないと、原則として遺族年金を受け取ることができなくなります。ただし、時効が消滅しないようにするために、理由を書面で記載して申立て手続きをすれば、時効期限が延びる場合もあります。
遺族年金は、遺された家族の生計を支えるための重要な制度です。遺族が生活に困ることなく、できるだけ早く手続きを進めることをお勧めします。
遺族年金の請求手続き方法と流れ
ここでは、遺族年金を請求する手続きの方法を流れに沿って解説していきます。
①年金請求書を取得し作成する
「年金請求書」は、亡くなった方と遺族年金を請求する方の情報を記入するための重要な書類です。この書類には、亡くなった方の公的年金制度の加入履歴やその他必要な情報も含まれます。請求手続きをスムーズに進めるために、正確かつ詳細に記入することが求められます。
まず、「年金請求書」は、近くの年金事務所や街角の年金相談センターの窓口で直接受け取ることができます。
また、日本年金機構の公式ホームページからダウンロードすることも可能です。
遺族基礎年金の請求書:「年金請求書(国民年金遺族基礎年金)様式第108号」(日本年金機構HPより)
遺族厚生年金の請求書:「年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)様式第105号」(日本年金機構HPより)
書類を取得したら、次は記入作業です。年金請求書には、亡くなった方の氏名や生年月日、死亡日、そして請求者の氏名や連絡先などの基本情報を記入します。また、亡くなった方の年金加入履歴や受給していた年金の種類など、詳細な情報も必要です。不明な点がある場合は、年金事務所や年金相談センターでアドバイスを受けることをおすすめします。
請求書の書き方については後ほど解説いたします。
②年金請求書に添付する必要書類を準備する
年金請求書には以下のような書類を添付する必要があります。
【すべての人に必要な書類】
必要書類 |
目的 |
注意点 |
---|---|---|
基礎年金番号通知書または年金手帳等 |
基礎年金番号を明らかにする |
提出できない場合は、その理由書が必要 |
戸籍謄本(記載事項証明書)または法定相続情報一覧図の写し |
死亡者との続柄および請求者の氏名・生年月日の確認 |
受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの |
世帯全員の住民票の写し |
死亡者との生計維持関係の確認 |
受給権発生日以降で提出日から6カ月以内に交付されたもの。マイナンバーを記入すれば添付省略可 |
死亡者の住民票の除票 |
死亡の事実の確認 |
世帯全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類 |
生計維持認定のため |
所得証明書、課税(非課税)証明書、源泉徴収票等。マイナンバーを記入すれば添付省略可 |
子の収入が確認できる書類 |
生計維持認定のため |
義務教育終了前は不要。高等学校等在学中の場合は在学証明書または学生証のコピー等 マイナンバーを記入すれば添付省略可 |
死亡診断書(死体検案書等)のコピーまたは死亡届の記載事項証明書 |
死亡の事実および死亡年月日の確認 |
市区町村長に提出したもののコピー |
受取先金融機関の通帳等(本人名義) |
受取先金融機関の確認 |
カナ氏名、金融機関名、支店番号、口座番号が記載された部分を含む預金通帳またはキャッシュカードのコピー等 |
参照:日本年金機構HP「遺族厚生年金を受けられるとき」、「遺族基礎年金を受けられるとき」
③請求書と必要書類を申請先に提出する│郵送も可
遺族年金を請求する際の書類の提出先は以下のとおりです。また、近くに窓口がない場合などは郵送で提出することも可能です。(参考:日本年金機構HP )
- 遺族基礎年金のみを請求する場合
お住まいの市(区)役所または町村役場に提出してください。 - 遺族厚生年金や共済組合等の加入期間がある場合
お近くの年金事務所または街角の年金相談センターに提出してください。これにより、共済組合等に加入していた期間の年金も請求することができます。
④「年金証書・年金決定通知書」を日本年金機構から受け取る
年金請求を行った後、約60日後に日本年金機構から「年金証書」と「年金決定通知書」が送付されます。これらは、年金を受け取るために非常に重要な書類です。
まず、「年金証書」について説明します。この書類は、あなたが年金を受給する権利を持っていることを証明するものです。書類には基礎年金番号が記載されており、将来、年金に関連する手続きを行う際に必要となることがあります。
したがって、この年金証書は大切に保管しておくことが重要です。もしも紛失してしまった場合は、年金事務所に申請をすれば再交付が可能ですので、安心してください。
次に、「年金決定通知書」について説明します。この書類は、あなたに支給される年金の額が決定された際に送付されるものです。書類には、これから受給する年金の具体的な金額が記載されています。さらに、将来的に受給額に変更があった場合も、この年金決定通知書が再度送付されることになります。
⑤「年金振込通知書」「年金支払通知書」を日本年金機構から受け取る
年金を口座振り込みで受給する場合、日本年金機構から「年金振込通知書」が送付されてきます。これは、口座に振り込まれる年金の支払額を支払期ごとに通知する重要なお知らせです。各支払い期における年金の受給金額を正確に把握するために、この通知書は大切に保管してください。
また、「年金支払通知書」も必要に応じて送付されることがあります。この通知書は、過去の年金受給額に遡って変更があった場合に、その変更内容を知らせるものです。具体的には、年金額が改定されたり、源泉所得税や特別徴収される介護保険料などの金額が変わったときに送られます。
ただし、年金支払通知書は毎回の年金支払月に送られるものではなく、変更があったときにのみ送付されることに注意が必要です。
遺族年金の申請から受給までの期間
遺族年金の申請から実際に年金を受け取るまでには、手続きが完了するまでの期間と、その後の初回受け取りまでの期間を考慮すると、通常約4か月弱かかるのが現状です。これは、すべての必要書類が揃い、不備なく手続きが進んだ場合の話です。
まず、遺族年金の申請を行い、必要な書類を提出すると、約60日後に日本年金機構から年金証書が送られてきます。この年金証書には、受給権を取得した月が記載されており、その翌月から受給が始まることになります。年金決定通知書も同時に送られてきて、支給される年金額が確認できます。
しかし、ここで年金をすぐに受け取れるわけではありません。年金証書が届いてから実際に年金が振り込まれるまでにはさらに約50日かかります。したがって、申請から初回受け取りまでの合計期間は約4か月弱となります。
なお、提出書類に不備があった場合や複数の年金を受給する場合などは、調査に時間がかかり、この期間がさらに延びることがありますので、早めに準備し、書類を正確に揃えることが重要です。
初回の年金受け取り額は、受給開始年月から直前の受け取り月の前月分までの金額が支給されます。受取り開始年月は年金証書の「受給権を取得した月」に記載されている月の翌月です。
年金の定期受け取りは、2月、4月、6月、8月、10月、12月の偶数月の15日に行われますが、初回の受け取りや過去分の支給がある場合は、奇数月に受け取ることもあります。定期的な受け取りでは、各支払月の前2か月分の年金がまとめて支給されます。たとえば、2月の受け取り分は前年12月と1月分の年金が支給されます。
遺族年金の年金請求書の書き方
請求書の書き方は、種類によって多少異なりますが、基本的な流れは同じです。
- 請求者の住所、氏名、生年月日などを記入します。
- 被保険者の住所、氏名、生年月日、死亡年月日などを記入します。
- 請求する年金の種類を選択します。
- 請求者の口座の情報などを記入します。
- 必要書類を添付します。
遺族年金請求書の記入例および記入案内動画は、日本年金機構のHPで提供されています。
遺族基礎年金の請求書の記入例:年金請求書(国民年金遺族基礎年金)様式第108号(記入例)
遺族厚生年金の請求書の記入例:年金請求書(国民年金・厚生年金保険遺族給付)様式第105号(記入例)
動画では記入方法のポイントや注意点を交えながら、請求書の記載方法を紹介しています。
遺族年金の請求手続き代行を専門家に依頼できる
遺族年金の手続きを進めるには、数多くの書類を把握し、取得し、記入する必要があります。さらに、これらの書類を取得するためには、平日に年金事務所を訪れる必要があることも多く、働いている方にとっては時間的な制約が大きな障害となるでしょう。
このような状況で、どうしても自分で手続きを進めるのが難しい場合には、専門家に代行を依頼する方法もあります。社会保険労務士に手続きを依頼することで、書類の取得や記入を代行してもらうことが可能です。これにより、忙しい日常の中でも確実に手続きを進めることができます。
代行を依頼する際には、委任状を準備する必要がありますが、自分で全ての書類を集めるのが困難な場合には、この方法は非常に有効です。社会保険労務士は、年金手続きのプロフェッショナルであり、必要な書類の準備や提出をスムーズに行ってくれます。時間や労力を節約し、確実に手続きを進めたい方には、専門家のサポートを受けることを検討してみてはいかがでしょうか。
遺族年金の請求の他に必要な年金手続き
年金受給者死亡届の提出│年金の受給停止手続き
年金受給者が亡くなった場合、受給停止の手続きは速やかに行う必要があります。この手続きは、「年金事務所」または「年金相談センター」で行います。必要な書類として、故人の年金手帳や死亡診断書のコピーなど、死亡を証明する書類を用意し、「年金受給者死亡届」を担当窓口に提出します。
手続きにはそれぞれ期限が設けられており、国民年金については故人の死亡が知らされた日から14日以内に手続きを完了する必要があります。一方、厚生年金の場合は10日以内に手続きを行わなければなりません。これらの期限を守るためにも、早めに必要書類を揃え、手続きを進めることが重要です。
未支給年金の請求手続き
年金の受給者が受給すべき額を受け取らずに亡くなった場合、その未支給分を同じ生計で生活していた家族が請求することができます。この未支給年金の請求手続きは、受給停止手続きと同様に、年金事務所や年金相談センターで行われます。
手続きに際しては、「未支給年金・保険給付請求書」の提出が必要です。さらに、受け取りのための預金通帳、故人の年金手帳、年金証書、戸籍謄本、そして同じ生計で生活していたことを証明する住民票の写しなどを用意する必要があります。
これらの書類を揃えた上で、担当窓口に提出し、未支給年金の受け取りを申請します。必要な書類が揃っていないと手続きがスムーズに進まないこともありますので、事前に準備を整え、疑問点がある場合は年金事務所や年金相談センターに問い合わせると良いでしょう。
遺族年金の請求手続きに関するQ&A
Q.遺族年金の請求手続きにかかる期間はどのくらいですか?
A.遺族年金の請求手続きが完了し、年金証書が送付されるまでには約60日かかります。その後、初回の年金受け取りまでさらに約50日かかるため、合計で約4か月弱かかるのが一般的です。
これは、全ての書類が揃い、不備なく手続きが進行した場合の期間です。書類に不備があったり、複数の年金を受給する場合はさらに時間がかかることもあります。手続きを早めに開始し、必要な書類を正確に揃えることが重要です。
Q.遺族厚生年金の受給期間はどのように決まりますか?
遺族厚生年金の受給期間は、亡くなった方の遺族の年齢や子どもの有無によって異なります。具体的な受給期間は以下の通りです:
- 30歳以上の妻または子どものいる30歳未満の妻:生涯にわたって遺族厚生年金が支給されます。
- 子どもがいない30歳未満の妻:5年間限定で遺族厚生年金が支給されます。
- 夫:55歳から受給対象となり、60歳から遺族厚生年金が支給されます。
さらに、妻の年齢や子どもの有無に加え、亡くなった方が夫なのか妻なのかによっても受給期間が異なります。このため、受給条件を詳細に確認し、適切な手続きを進めることが重要です。
Q.遺族基礎年金の受給期間はどのように決まりますか?
A.遺族基礎年金の受給期間は、亡くなった方が国民年金に加入していたかどうか、そして遺族に子どもがいるかどうかで決まります。遺族年金における「子ども」とは、「18歳になる年度の3月末まで」または「障害等級1級または2級に該当する子が20歳になるまで」を指します。子どもがこの期間を過ぎると、遺族基礎年金の受給は終了します。さらに、子どもが結婚すると、その時点で遺族基礎年金の支給は停止されます。
一方、子どもがいない遺族の場合は、最初から遺族基礎年金を受け取ることはできません。この場合、代わりに寡婦年金または死亡一時金を受け取ることができます。寡婦年金は女性のみが対象であり、一定の条件を満たすことで支給される制度です。
Q.自分で遺族年金の手続きを進めるのが難しい場合はどうすれば良いですか?
A.自分で遺族年金の手続きを進めるのが難しい場合は、社会保険労務士などの専門家に手続きを代行してもらうことができます。社会保険労務士は年金手続きのプロフェッショナルであり、必要な書類の取得や記入、提出を代行してくれます。
代行を依頼する際には、委任状を準備する必要がありますが、自分で全ての書類を集めるのが困難な場合には非常に有効な方法です。専門家に依頼することで、手続きがスムーズに進み、正確に完了することが期待できます。
Q.遺族年金の受給者が未支給分を受け取らずに亡くなった場合、どうすればよいですか?
A.年金受給者が受給すべき額を受け取らずに亡くなった場合、その未支給分を同じ生計で生活していた家族が請求することができます。この手続きは年金事務所や年金相談センターで行います。
手続きに必要な書類には、「未支給年金・保険給付請求書」、受け取りのための預金通帳、故人の年金手帳、年金証書、戸籍謄本、そして同じ生計で生活していたことを証明する住民票の写しなどがあります。
これらの書類を揃え、担当窓口に提出することで未支給年金の受け取りを申請できます。申請後、書類の審査が行われ、問題がなければ未支給分が振り込まれます。
まとめ
遺族年金の請求手続きは、亡くなった方の遺族にとって重要な手続きであり、その進行には多くの書類や手間が必要です。本記事では、遺族年金の基本的な概要から、具体的な請求手続きの方法、期限、必要書類などについて詳しく解説しました。手続きが完了するまでには時間がかかることもありますが、必要な書類を正確に揃え、期限を守ることが大切です。
また、自身で手続きを進めるのが難しい場合は、社会保険労務士などの専門家に依頼することも検討しましょう。これにより、スムーズかつ確実に手続きを進めることができます。何か不明な点があれば、最寄りの年金事務所や年金相談センターに問い合わせることをおすすめします。
遺族年金は、遺族の生活を支える大切な制度です。この記事が皆様の手続きの一助となり、少しでも負担を軽減できることを願っています。
この記事を書いた人
略歴:慶應義塾大学法科大学院修了。司法修習終了。大手法律事務所執行役員弁護士歴任。3,000件を超える家庭の法律問題を解決した実績から、家庭の法律問題に特化した法律事務所である弁護士法人あおい法律事務所を開設。静岡県弁護士会所属。
家庭の法律問題は、なかなか人には相談できずに、気付くと一人で抱え込んでしまうものです。当事務所は、家庭の法律問題に特化した事務所であり、高い専門的知見を活かしながら、皆様のお悩みに寄り添い、お悩みの解決をお手伝いできます。ぜひ、お一人でお悩みになる前に、当事務所へご相談ください。必ずお力になります。